子どもの活動から考える

教材研究を始める第一歩は、目の前にある教材は子どもにどんな力をつけるためにあるのか、このことをきちんと考えることです。そこをはっきりさせずに、どんな発問をするのか、説明をするのか、活動をさせるのかといった各論に入っても迷路に迷い込んでしまいます。その上で、その力がついたということは、子どもがどんな場面で何ができればよいかを明確にします。問題を解ける。発問に対して、答えられる。あることがらを説明できる。できるだけ具体的にします。

つぎに、子どもたちがそうなるためにどのような活動をする必要があるかを考えます。どんな説明をするかという教師の活動ではなく、子どもの活動です。教師が説明することも必要です。その場合、その説明に続いてどんな活動をさせるか考えてみます。説明した事を使って問題を解かせる。説明を理解するために友だち同士で説明させる。・・・

そこで、その活動に子どもたちがうまく取り組めるようにするために、教師はどのような働きかけをするとよいのかを考えます。教師の説明はついては、ここでもう一度見直します。友だち同士説明させるなら、発問を工夫して子どもが自身で気づけるようにできないか。問題を解かせるなら、問題を解く過程で気づかせることはできないかと考えます。

例えば、国語の物語の教材を考えてみます。天気が主人公の気持ちを表していることから、読み取りをする場面を考えてみましょう。
教師が、天気が変化していることから、これは主人公の気持ちを表していると説明する。そこで、ではそれぞれどんな気持か考えてみようと発問する。
この流れに対して、子どもが天気から主人公の気持ちを考えるのであれば、子どもがそこに気づくような発問や流れはないかと考えます。「天気」がキーなので、「天気」に注目させることはできないか。そこで、「この段落と前の段落で何が違う」といった発問を考えます。
子どもから「天気」も「主人公の気持ち」も出てきたら最高ですが、「天気」しか出ないことも考えます。「天気」は一旦置いておいて、2つの段落での「主人公の気持ち」を考えさせる。「主人公の気持ちはどう」と問いかける。というように発問を考えていきます。
この流れが正解ということではありません。最終的に、この流れより最初の方がよいという判断をすることもあると思います。教材を使って学ぶのは子どもです。子どもは活動することで、学んでいきます。大切なのは、教材を使う子どもの活動をどうすればよりよいものにできるかという視点で考えることです。教師の活動の合間に子どもの活動があるのではなく、子どもの活動の合間に、教師が何をするかという発想を持ってほしいと思います。

「教材研究」を追加しました

新しく「教材研究」というカテゴリーを設けました。教材研究はいろいろな側面があって簡単には伝えられないのですが、悩んでいる方も多いと思いますので、私なりの考えを書いていきたいと思います。

教材研究の前に

若い先生から、教材研究をどうやればいいのかわからないということをよく聞かれます。どのレベルから話をすればよいか迷うこともよくあります。一つひとつの教材についてどのようにして授業の流れをつくるのか、そのための資料や参考になるものの見つけ方なのか、そもそも授業の作り方なのか。
実は具体的に教材研究について話す前に、次のようなことを先生に問いかけたりお願いしたりします。

例えば国語であれば、「物語は子どもにどんな力つける教材、説明文は、詩は、文法は」といったように、教材のカテゴリーごとの大きなねらいを明確にすることです。ときには、「国語ってどんな力をつけるの、社会は」と教科の意義を聞くこともあります。この教材観・教科観というものがしっかりしていないと、一つひとつの教材に対して何を大切すればよいのか、教材のどこに注目すればよいのかはっきりしないからです。

また、多くの教科で学年ごとに同じカテゴリーの内容を学習します。子どもの成長にともない何が新たに加わっていくのか、何が必要なくなっていくのか、何が変わらないのか。このことをしっかり意識するようにお願いします。
新たに加わるということは、その内容に取り組めるベースがその時点でできているはずだということです。そのベースはいつどのようにして身についているのか考える必要があります。
変わらないものはその教科の根幹をなすものです。つねにそのことが身についているか問い続ける必要があります。
こういったことを意識することで、大切にすること、こだわりすぎないことが明確になります。
小学校であれば6年生までの教科書を一度は目を通しておくこと、特に高学年であれば、中学校の内容も、中学校であれば、小学校高学年の内容と高校の内容も把握しておく必要があります。

とはいえ、すぐにしっかりした教材観・教科観をもったり、広い視点での教科内容の把握ができるようになるわけではありません。日々の教材研究に取り組む中で、個々の教材が子どもにどのような力をつけることをねらっているのか、それが過去の学習内容や、これからの学習内容とどうかかわっているのかを常に問いかけることで身につけていってほしいと思います。

研修の打ち合わせ

中学校で今年度の研修の打ち合わせを行いました。

子どもたちのかかわり合いを大切にし、相談したりグループで活動したりすることを積極的に取り入れている学校です。昨年度研究発表をおこないましたが、その後も続けて授業改善に取り組んでいます。

話題になったことの一つが新たにこの学校に赴任してきた方への対応です。すべての学校や先生が実際にペアやグループでの活動を積極的に取り入れているわけではありません。また話に聞くだけではどのようにしていけばよいかわかりません。ベテランほど自分のやり方が確立しているので、今までの自分の方向性と異なるとどうしていいかわからなくなってしまいます。公立の学校では人事の移動に伴い多かれ少なかれ起こる問題です。結論としては、早い時期に彼らに他の先生方の授業を見ていただき、この学校での取り組みがどのようなものか理解してもらうことになりました。具体的には、私と一緒に校内をまわりながら、授業中の子どもたちの様子を観察し、意見を交換するというものです。子どもたちの活動と教師の働きかけ、その意味を考えてもらうことでこの学校の取り組みを理解してもらおうというわけです。

また、若い先生のことも話題になりました。この学校の若手はずいぶん伸びてきました。しかし、研究発表も終わり、自分たちはこれでいいと思ってしまうと成長は止まります。彼らに、よりよい授業を目指し続けてもらうには、今できていること、まだできていないことを自覚してもらうことが大切です。次回訪問時、今の彼らの課題をしっかり見つけたいと思っています。

早い時期に研修担当者と学校の現状と課題について話し合う機会を持てたことは大変有意義でした。この1年もこの学校の先生方と一緒にたくさんのことを学べそうな予感がしています。

よいスタートを切った学校

連休の谷間に、中学校の授業研究に参加しました。

新学年のスタートはどうのようであるか気になっていましたが、特に新3年生が集中して授業に参加していました。2年生のときと比べて、ずいぶんよい状態です。4月は子どもたちも気持ちを切り替えるときです。そこを先生方がうまくつかんでよいスタートを切ったのだと思います。学年内の横のつながりがよいのでしょう。学級による差が少なかったのも印象に残りました。
1年生もうまく人間関係をつくることができたようです。学級の一体感が育ちつつあるようでした。友だちの発言をしっかり聞こうという雰囲気を感じました。
新2年生は、まだ子どもたちがまとまっていないようでした。1年生のとき、学級によって雰囲気がかなり異なっていました。子どもたちが昨年度の学級の状況を引きずっているため、学級としてまとまりなく感じるのかもしれません。ここからが各担任の頑張りどころです。担任個人の問題ではなく学年の問題として協力しあってくれることを期待しています。

授業研究は、生徒に焦点をあてて検討会を開きました。ともすれば、教師の指導面に目が向きやすくなるのですが、司会者の上手な進行で、子どもたちの活動を中心にしっかりと意見交換ができました。新しく赴任された先生も、グループでの協議にすぐに溶け込み、とてもよい雰囲気で進みました。昨年から始めたグループ討議も1年間でしっかり定着したようです。

3月の時点で心配な面もいくつかあったのですが、全体としてとてもよいスタートを切れているようでした。先生も子どもも4月は気持ちを切り替えるときです。うまく波をつかめたようです。また前年度にやってきたこと、学んだことを一からトライできるときでもあります。うまくスタートを切れたのは、昨年度に先生方が地道に努力し学び続けたことがその根底にあると思います。

学校がよい方向に向かう手ごたえをしっかり感じた1日でした。次回の訪問がとても楽しみです。

家庭訪問

家庭訪問は保護者も教師も気を使うものです。学校によっては廃止するところもあるようですが、子どもたちが普段生活している環境を知ることはとても意味のあることです。せっかく時間を使って実施するのですから、形式的なもので終わらず学級経営に役立つものにしましょう。

家庭訪問は、子どもの生活環境を知ることが大きな目的の一つです。
家だけでなく、そのまわりの環境もしっかり観察することが大切です。遊び場が近くにある。コンビニが近くにある。そういったことも子どもの生活に影響を与えます。また、最近は玄関先で話をすますことも多いと思いますが、花が飾ってある、靴が揃えられているといったちょっとしたことからでも家庭の雰囲気をつかむことができます。きょろきょろしてはいけませんが、しっかりと観察することが大切です。
許されるのであれば、子どもが勉強している場所を見せていただくことはとても有益な情報を得られます。もし見せていただくのであれば、事前にその旨を保護者に伝えておくことが必要です。その場で突然お願いしても困ってしまわれます。ときにはなぜ部屋を見せたと親子でトラブルになることもあります。家庭訪問でお願いすることがあれば、必ず事前に伝えておくようにします。

保護者との話ですが、基本は聞き手にまわることです。保護者と担任の信頼関係を互いに築くチャンスです。今度の担任は話をしっかり聞いてくれると思ってもらえることが大切です。笑顔でしっかりとうなずき、受容的な態度で接することを心がけます。
また、相手のホームグランドですので、学校で話すのとはまた違ったことを聞くことができます。子どもの家庭での様子を中心に聞きましょう。家へ帰ったら最初に何をしているか、どこで遊んでいるか、どこで勉強しているか、など項目は事前に整理しておきます。保護者同士で何を聞かれたか情報交換されたりもしますので、共通のものを決めておくとよいでしょう。
こちらから話すのは学校での子どもの様子です。ポイントを押さえてよいところを中心に伝えるようにします。これも事前に整理しておくとスムーズに進みます。
最後に要望等を聞くことになると思いますが、その場では答えづらい質問や要望が出てくることがあります。そのような質問にはその場で答えることはせずに、持ち帰って検討すると伝えましょう。その際回答の方法を確認しておきます。電話でよいのか、文書がよいのか、後日訪問がよいのかをきちんとしておかないと対応が悪いとトラブルになることもあります。そして、学校に戻ったらすぐに上司に報告し、翌日にはいつまでに回答するかだけでも伝えましょう。ここでの対応をしっかりすることが信頼につながります。
また、時には質問や要望というより学校や同僚への批判を聞かされることもあります。言いたいだけであって何か対応を期待しているのではありません。「なるほど、そのように感じられているのですね」としっかり受容だけはして、こちらの意見等は差し控えておきましょう。同調するのも、逆にそんなことはないと説得するのも意味のある行動ではありません。このようなことで保護者と仲良くなったり、議論して関係を悪くしたりしてもしょうがありません。

家庭訪問には地域の事情が色濃く反映されます。お茶やお菓子はいただいた方がいいのか手をつけない方がいいのか。座敷に上がった方がいいのか、玄関先で済ますのか。その学校固有の暗黙のルールがあることもあります。わからないことや気になることは先輩や同僚にきちんと確認しておくことが大切です。
訪問時間は長くはとれません。個人の情報をメモするカルテ作り、聞くこと話すことなど事前に整理して臨んでください。このカルテは家庭訪問以外にも面接や生活指導時にも活用できます。

家庭訪問は感度を高くして、子どもたちの家庭生活に関する情報をできるだけたくさん集めることと、保護者との関係づくりのためによい聞き手になることを意識して臨んでください。
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