学校改革の賞味期限

昨日は私立高等学校の校長先生とお話しをしました。いわゆる底辺と言われる公立高校を校長として立て直した方です。

話の中で、公立校は学校改革をしても校長が3代目になるとダメになるという言葉が出てきました。3代目になる頃には、当時を知る教員もいなくなり、いろいろなものが形骸化していくということです。当時考えた企画の結論だけが残り、何故そうなったか、どのように変遷したのかといった過程が学校の中に残らない。改革の精神を残すような人事的な策もない。原因はこんなところでしょうか。よい伝統というものは教員を通じてはなかなか残らないのでしょうか。

私が研究発表をお手伝いした中学校の校長が、新たな伝統をつくりたいとおっしゃったことを思い出しました。単に授業を変えるのではなく、授業について考える、改善し続けるということを伝統にしたいということです。

また、ある中学校では授業をよくするということを子どもたちに考えさせ、授業に臨む姿勢や学び方を子どもたちが次代に伝えていくという試みをしています。子どもたちが伝統の担い手になることで、確実によい形で継続しているようです。

学校改革は、実は改革することよりもそれを継続・発展させることの方が難しいのかもしれません。その時うまくいったことでも、時代が変わり、教員・子どもが変わっていけば必ずうまくいかないことが出てきます。
あらためて、改革の精神を持ち続け、時代の変化に耐えるための仕組みをどう学校につくるかという課題を考えさせられました。

子どもが話を聞いていないと感じたとき

子どもたちに対して、静かにはしているが話をちゃんと聞いていないと感じるときがあります。集中力が落ちていると言い換えてもいいでしょう。話を聞かせようとするあまり、教師の声がどんどん大きくなり、それに反してますます子どもは聞く気をなくしていく。そんな場面もよく目にします。このようなとき、どのような対応をしたらよいのでしょう。

もともと子どもの集中力は受け身の状態では長くは持たないものです。一方的に教師が話し続けていることに原因があることが多いように思います。
話の内容について子どもたちに問いかける。ちょっとした活動を入れる。こうすることで集中力は戻ってきます。

「・・・になるんだけど、納得した。納得した人手を挙げて。○○さん説明してくれる」

「・・・ということが起こったんだけど、君たちならどうする。周りの人と少し話してごらん」

このように、ちょっとした問いかけや活動を入れると、受け身の状態から解放されてまた話を聞けるようになります。

話をしていて子どもたちの集中力が切れたなと感じた時は、一方的に話していないか振り返ってみてください。受け身の状態を続けさせていた場合は、一旦その状態から解放してあげてください。そうすることで、子どもたちの集中力は戻ってくるものなのです。

子どもの発表に対する教師の動き

指名した子どもが発表する時の教師の視線や表情、立ち位置などを見ているとおもしろいことに気づきます。子どもの発表に対する教師の動きについて考えてみたいと思います。

多いのは、発表者をしっかり見て発言を聞いている教師です。子どもの言葉をしっかり聞こうという気持ちがあらわれています。この時、教師の表情が変わらないと、自分の考えが間違っているのではないかと不安に思う子もいます。逆に、笑顔でうなずきながら聞いてもらったり、「なるほど」とあいづちをうってもらったりすると安心して話しやすくなります。教師の表情が柔らかいと学級全体の雰囲気も柔らかくなる傾向があります。

これに対して、発表者と正対せずに学級全体を見ようとしている教師もいます。子どもと視線が合うと発表者を見るように促します。子どもたちに発表者の方を向いてしっかり聞いてもらいたいからです。この時、直接発表者を見ていないので、相手を意識していることを伝えるための工夫をしています。手のひらを上に向けて、発表者に向けてさしだしたり、ちゃんと話を聞いているよとうなずいたりしています。膝を折って頭の位置を下げ、子どもたちの視線に入らないようにすることで、発表者に視線が集中するようにしている方もいます。
子どもたちの聞く様子を注意して見ることで、理解度を確認したり、次にだれを指名するかを決めたりできます。

発表者と教師が二人だけの世界にはいってしまうというのは論外にしても、どちらかでなければいけないということはないと思います。大切なのは、発表者と発表を聞く子、どちらも意識して、発表者や学級の状況に応じて工夫をすることです。子どもが発言することに不安を持っているときは、目を合わせる時間を多くして笑顔で励まし、発表後すぐに全体を見回すようにする。子どもたちが発表することに慣れてくれば、聞く姿勢を意識した動きをする。このようなことが大切になると思います。

有田和正先生から学ぶ

教師力アップセミナーで有田和正先生のお話しを聞かせていただきました。

昨年はまだ体調が戻られていませんでしたが、今年は元気な姿を見せていただくことができました。セミナー後はアスナル金山行って日本初のビル風を利用した風力発電の写真を撮ると楽しそうに話されていました。
有田先生は子どもを「追究の鬼」に育てることで有名です。感心するのは資料で徹底して調べた後、必ず自分の足で現地に出かけられることです。自分の目で見る、自分の耳で聞くことを大切にされています。写真もできる限りご自分で撮ったものを資料として使われています。だからこそ、子どもたちが疑問を感じ追究し、感動してくれるのだと思います。

今回のセミナーは模擬授業を中心におこなわれました。有田先生の授業は、その知識や資料、発問の素晴らしさに目を奪われますが、先生ご自身の授業スキルの裏付けがあって初めて成り立っているのだとあらためて感じました。有田先生の授業のネタを使えば、子どもたちに興味を持たせること、話を聞かせることはそれほど難しくないかもしれません。先生すごいと言わせることも簡単でしょう。しかし、子どもたちの積極的な発言を引き出し、考えを深めさせるのはそれだけでは足りません。子どもの言葉を受容し、ポジティブに評価する。子どもの発言に対してそれを深める、広げるような質問をする。異なった意見をそれぞれ評価し、どちらが正しいのか子どもたち自身が考えるように誘導する。このようなスキルが不可欠です。

有田先生の模擬授業を見ることで、「よい授業とは何か」についてじっくりと考えることができました。

子育てに関する講演

児童センターで子育てに関するお話しをさせていただく機会がありました。就学前の小さなお子さんをお持ちのお母さんを対象にしたものです。20人以上の参加者があったのですが、当然のことながら皆さんお子さんとご一緒です。講演の間お子さんをどうするのかというと、別室で預かってくれるのです。面倒を見てくださるのは他の児童施設の職員やボランティアで、子どもの数と変わらないくらいの方がこのために集まっていました。地域全体で子育てを応援していることがよくわかります。今回参加されたお母さん方も、子育ての手が離れたら、今度は応援する側にきっと回ってくれることと思います。こうして次の世代へと助け合いがつながっていくのだとあらためて感じました。

さて、講演の内容ですが、次のようなことを話させていただきました。

・子育てに正解を求めない
・ほめ方叱り方
・親が子どものよいところを見つける
・言葉をかける、聞くことを大切にする

「明るく楽しく前向きな気持ちなっていただけるようなもの」という主催者からの、リクエストだったのですが、ちょっと硬くなってしまったかもしれません。終了後、反省させられたといった言葉が聞かれたり、今まで間違えた叱り方をしていたが、これから直せば大丈夫ですかといった相談を受けたりしました。
育て方が悪い、親のせいだという言葉が安易に使われすぎるような気がします。そのために、子育てにプレッシャーがかかるのです。同じように育てても子どもの成長は、一人ひとりのもつ個性や環境によって大きく変わります。うまく育ったかどうかは、大人になるまで、いや大人になっても言えることではないと思います。
私がお願いしたのは、子どもが安心して居ることのできる場所をつくってほしいということです。「あなたを大切に思っているよ。愛しているよ」ということ子どもに伝えることです。居場所のある子どもは決して崩れないからです。
日々大変な子育てですが、だからこそ子どもの成長を楽しめる余裕を持ってほしいと思います。私の思いが参加者にうまく伝わっていれば幸いです。

食の授業づくりの講演

昨日は栄養教諭・学校栄養教職員対象を対象に、食の授業づくりの講演をしました。

食の授業を何度か見せていただいたことがありますが、共通しているのは資料やワークシートなど、事前の準備を驚くほどていねいにされていることです。年に何回も授業のチャンスがないのでその分、しっかりと準備をされるようです。どなたも、食の授業に対して本当に熱い思いを持って臨まれています。それ故に自分の授業に対して、どうすれば子どもたちが興味を持ってくれるのか、子どもたちの行動を変えるには何が足りないのかと、真剣に悩んでもおられます。
参加された方は、みなさん真剣なまなざしで私の話を聞いてくださいました。少ない授業経験を補うために、しっかりと勉強しようという気迫のようなものを感じました。
また、栄養教諭・学校栄養職員の皆さんの横のつながりの強さも印象に残りました。情報交換し助け合おうとする雰囲気が会場にあふれていました。

食の授業は、やっと学校現場に認知され始めたところです。しかし、参加された皆さんの姿を見て、間違いなく学校現場によい形で定着するという確信を持つことができました。ぜひ、実際の食の授業を見せていただいて一緒に勉強する機会をいただきたいとお願いをして会場を後にしました。

子どもの集中力が切れない授業

学習している内容が理解できないと集中力が落ちてしまうのが通常です。ところが、わからない子どもも集中して参加し続ける授業に出会うことがあります。そのような授業にはどのような共通点があるのでしょうか。

一つは、教師がその時間に子どもたちに身につけてほしいことを必ず全員にできるようにするという姿勢が明確なことです。
子どもたちは誰しもわかりたい、できるようになりたいと思っています。しかし、わからないまま次に進めばそこであきらめてしまいます。今わからなくても、ちゃんと授業に参加していれば必ずわかるはずだという安心感があれば集中力はきれません。説明を聞いてわからなくても、その後の問題練習でわかることもあります。友だちに聞いてみることで、意外とすんなりわかることがあります。子どもの集中力が切れない授業は、子どもが理解するチャンスや場面を何度も用意していることが特徴です。

もう一つの特徴は、子どもが自分はできた、わかったと実感できる場面が1時間の中に用意されていることです。
できなかった問題を教師に説明され、「わかりましたか」の問いかけに「はい」と答えても、なんとなくわかった気にはなりますが、達成感はありません。
例えば、○つけをして、必ず全員に○をつけて終わるようにする。周りの子と確認しあって、友だちから「OK」と言ってもらう。「みんながわかった」ではなく、「あなたがわかった」と伝える、個を意識した評価場面が必要なのです。

このようにして、毎日の授業で必ず達成感を味わうことで、子どもたちは授業そのものに前向きになっていきます。今わからなくても、きちんと授業に参加すれば最後には必ずわかるようになる。子どもたちがこのように信じてくれるようになれば、集中力の切れない授業に自ずとなっていくのです。

グループやペアでの相談が止まる理由

子どもたちグループやペアで相談させる場面に出会うことが増えてきました。ところが子どもたちは互いに答えを見せ合ったり、写したりするだけで、そのまま活動が止まっていることがよくあります。どうすればよいのでしょうか。

このような状態になるのは、相談するとはどういうことをすればよいのか明確になっていないことが原因です。どうしてその答えにたどり着いたのかを聞き合う。その考えに対して納得できるのか、疑問はないのかを話し合う。具体的な方法を子どもたちが知らなければうまく進みません。相談の目的は、答えではなく、そこにいたる過程を共有化することだと知ることが必要です。教師は相談という言葉は使うが、その意味をきちんと伝えていないのです。

では、具体的にどのようにして教えればよいのでしょうか。いきなりグループ活動で身に着けさせようとすると無理があります。全体の場面でどのようにすればよいのかを経験させるのです。

「○○さん、どうしてそうなったのか、考えを聞かせてくれる」
「・・・からです」
「なるほど、今○○さんが言ってくれたことわかる。なるほどと思った人」
・・・
「○○さんの意見に質問のある人はいますか。△△さん」
「私は○○さんの説明の・・・がよくわかりません」
「なるほど、△△さんの質問に答えられる人いるかな」
・・・

答えを発表させて、その解説を教師がするのではなく、その理由を子どもたちから聞く。その考えに対する意見を発表させる。自分の意見を変えてもいい。このようにして、グループ活動でやらせたい活動を具体的に経験させておくのです。

グループ活動やペア活動では、その活動の具体的な進め方をきちんと子どもたちが知らないと、ただ発表しあうだけで終わってしまいます。子ども同士のかかわり合いの基本は、全体の場面できちんと身につけさせる必要があるのです。

終日特定の学級を見る

先週末に、中学校の授業アドバイスをおこないました。今回は、終日2つの学級を中心に授業を見学し、その学級にかかわっている先生方に対してまとめてアドバイスをさせていただきました。

今回の子どもたちの様子を見て感じたことは、授業の雰囲気をつくっているのは授業者の個性や進め方よりも、学級集団の特性のようでした。
1つの学級は、子どもたちと教師との信頼関係がうまくできていないようでした。過去に友だちの発言をからかうようなことがあったようです。子どもたちが安心して発言できる状況を教師が保証できなかったので、信頼関係も崩れてしまったのです。先生方に次のようなことをお願いしました。

・「わかった人」と正解を求めるような問いかけをしないこと
・どんな発言も「なるほど」とまず教師がきちんと受容すること
・その発言をポジティブに評価すること
・「同じ考えの人」「説明に納得した人」と問いかけることで、他の子どもとつなぐこと

残された時間はあまりありませんが、教師が子どもを認める、子ども同士が互いを認め合う雰囲気をつくることからやり直すのです。

もう1つの学級は、明るく元気な子どもが多いのですが、ちょっと落ち着きがありませんでした。どの時間でも共通していたのは、やるべきことが明確に指示されると取り組む姿勢を見せるのですが、集中力がすぐになくなり、同性間ですぐにおしゃべりを始めてしまうことです。学力的には2極化が進んでいるようです。できる子は終わってしまうとすることがない、できない子は途中で手が止まって集中力をなくす。そのために、ざわついてしまうようです。

・課題に対して答えだけではなく理由の説明をきちんと求めること
・わからなければ友だちと相談できるようにすること
・課題をスモールステップに分けて、わからない子がつまずいたままになる時間を減らすこと
・座席を男女市松模様にすること

このようなことをお願いしました。
できる子には説明などの高度な課題を与える。できない子どもには、わからない状態、手つかずの状態でいる時間を減らすことで、集中力を切らさないようにするわけです。また、同性間で相談すると無駄話になりやすいので、座席の工夫もします。

今回のような授業アドバイスのやり方は初めてでしたが、1つの学級にかかわる先生方が一緒に話をすることで、自分の抱えている問題が個人の問題ではないことに気づき、気持ちも楽になったようです。互いの授業の様子を共有化することで、注意すべき点も明確になり、共通の対応をとれるためにその効果もより期待できます。学級づくりを担任だけの問題ととらえるのではなく、かかわる先生方全員の問題ととらえることが大切だとあらためて思いました。

ネット時代の変化の速さ

昨日は、中学校で新1年生の保護者対象にお話しをさせていただきました。

皆さんには次のようなことをお願いしました。

・子どもを無条件に愛する(よい子だから愛するのではない)
・子どもに家族としての役割を持たせる
・家庭の中で「ありがとう」のことばを大切にする
・子どもには職業観を話す
・学校も保護者も子どもの幸せを1番に考えている。互いに話を聞く姿勢を持つ

最後に携帯電話との付き合い方を話しました。
昨年はプロフという言葉を知らない保護者がかなりいたのですが、今年はほとんどいません。この変化の速さには驚きました。
昨年は、メール依存症やプロフの危険性を話していたのですが、今年は携帯ゲームについての話も付け加えました。1年前は携帯ゲームがこれほど問題になってくるとは思ってもいませんでした。子どもたちを取り巻く環境の変化がこれほど早いと、どうしても大人の対応が後手に回ってしまいます。新しいサービスや環境が出てきても変わらない、ネット時代を生きる基本を子どもたちにしっかり身につけさせることが大切だとあらためて思いました。

授業づくりの過程をみせる

昨日は、4月から活動予定の授業づくりプロジェクトについて、その進め方を仕掛け人と相談しました。

授業を発表することを目的とするのではなく、その授業がつくられていく過程を伝えることを大切にしたいと考えています。

・どんな子どもの姿を目指したのか
・そのためにどんな手立てを考えたのか
・実際の子どもの姿はどうだったのか
・どのように修正したのか

このような試行錯誤の上で、授業はつくられていきます。その過程をしっかり見せることで、授業づくりの視点が明確になり、よい授業の構成要素が明確になると思います。

公開授業ですばらしい授業をみて自分もまねしようとしたがうまくいかなかった。うちの子どもではダメだ。こんな言葉を聞くことがよくあります。
単に授業の流れや発問をまねてもうまくかないのは当然です。それまでにどう子どもたちを育ててきたかによって授業の姿は変わってくるからです。

1時間の授業は、それまでの積み重ねの上に成立しています。点でとらえるのではなく、そこに至る過程に注目することで初めて授業は理解でき、また再現できるのだと思います。
授業づくりの過程を明確することで、多くの先生方の参考になるプロジェクトにしたいと思っています。

グループ活動と全体指導

グループ活動やペア活動を取り入れる授業が増えてきます。友だちと学び合う楽しさを知る子どもたちが増えるのはとてもよいことです。このような授業を見ていておもしろいことに気づきました。グループ活動に入るときの子どもの様子の違いです。

ホッとした表情をして一瞬ざわつくときと、素早く机を移動して、うれしそうに活動を始めるときがあるのです。前者の場合もしばらくすれば子どもたちは落ち着き、グループ活動はきちんと成立するので、決して悪い状態ではないのですが、注意して観察してみると、グループ活動に入る前の状況に違いがあるようです。

子どもがホッとした表情をするのは、教師の一方的な説明が多く、ただ聞いているだけ、ノートを写しているだけの受け身の時間が続いていたときです。グループやペアで能動的に活動する楽しさを知っているので、よけいにつらいのです。グループ活動のよさを経験すると受け身の時間の集中力が以前と比べて落ちる傾向にあります。受け身の時間からやっと解放されたとホッとした表情になるのです。

一方、素早くグループ活動に取り組むときは、自分の考えを早く話したい、友だちの考えを聞きたいと、課題に主体的取り組む状態ができているときです。

「○○ってどういうことだと思う」
「△△じゃないですか」
「今の意見どう思う。なるほどと思った人手を挙げて。どこでそう思ったか教えてもらおうか」
・・・
「手を挙げていない人の考えも聞いてみようか」
「□□だと思います」
「違った意見が出てきたね。みんなどう思う。じゃあグループで相談してみようか」

このように、教師が問いかけて子どもの考えを発表させるなど、子どもが課題に入り込むための時間をとっているのです。グループ活動に慣れていると、友だちの話を聞く姿勢が育っているので能動的に聞くことができます。聞いたことをもとにしっかりと考えるのです。自分の考えを持てているので、友だちと早く意見を交換したいのです。

グループ活動や、ペア活動が子どもたちにとって充実したものであれば、全体指導でも子ども同士がかかわり、学び合うといった能動的になる場面をつくりやすくなります。反対に受け身の場面での集中力は落ちていきます。
グループ活動を取り入れるということは、全体指導の場面でも子どもたちが能動的になるような工夫が教師に要求されるということなのです。

ICT活用研究校訪問

先週、来年度ICT活用研究のお手伝いをする学校と打合せを行いました。私の方から無理を言って、授業の様子も見せていただきました。この子どもたちの様子であれば、ICTを工夫して使うことで、授業での関わり合いや集中度を高めることができると思いました。

ICTの活用研究というと、まず利用することが第一歩ととらえがちなのですが、この学校ではICTの活用以前にどのような授業を目指すかを明確にすることから始めていました。その上で、どのような場面でICTの出番があるかを考えるのです。そして、ただ使ってみるのではなく、きちんと従来の方法と比較して、どちらがより効果的かを検証しようとしています。このような視点を意識することで、ICTを使う、使わないにかかわらない、基本となる授業力の底上げを図ろうとしていることをしっかり感じました。
目指す授業像も「伝え合う、学び合う」ことをベースとしたしっかりものでした

目指す授業像、子どもの姿を明確にし、それに向かってどのような工夫をするかが、授業をよくしていくための基本です。ICTは黒板やプリントなどと同様に、ツールの一つにしか過ぎません。そのことをわかった上でそのよさを活かす場面を工夫することが大切です。このポイントしっかり押さえている学校です。足が地に着いた研究になることと、今後が楽しみになりました。

研修会の参加者から元気をいただく

昨日、一昨日と算数・数学の授業力アップの研修講座にスタッフとして参加しました。

昨年、今年と模擬授業を中心にした研修を行いました。今回もリピーターの方がたくさんいたことをとてもうれしく思いました。

私は中学校を担当していますが、この1年間で大きく進歩された方がたくさんいらっしゃいました。たった、2日間の研修で授業がうまくなるわけがありません。この方たちは、この1年間、研修で学んだことを地道に努力されてきたに違いありません。実際、2日目の実習では、1日目に指摘されたことをしっかりと意識しておられました。指摘を素直に受け入れる姿勢が伸びる教師の条件であることがよくわかります。

この研修では、あれやこれやと理屈をたくさん教えるのではなく、実習を通じて大切なポイントを具体的に意識し、身につけてもらうことを大事にしています。
私たちスタッフにできることは、何を課題として意識すればよいかのアドバイスだけです。
当り前ですが、身につけるためには、本人が毎日そのことを意識して授業をする必要があります。本人の姿勢が一番大切です。ただ漫然と授業をしているだけでは、決して授業力はつかないのです。

次にお会いする時には、皆さん大きく進歩していることと思います。参加者の学ぶ姿勢、やる気に私たちスタッフもたくさんの元気をいただきました。

教材の広がりを実感する

昨日は幾何ツールを使った授業研究会に参加しました。

1人の授業者が同じ教材で2度授業をします。1回目の授業後に検討会を行い、その内容を受けて修正した授業をもう1度行います。内容の修正はあくまでも授業者の意思で決定するので、言い訳はできません。とても、厳しい研究会です。
まな板にのる授業者へのプレッシャーは想像に難くありません。

1つの教材をつかって2つの課題に取り組んだことから、今回の話題は広がりました。
等積変形を、三角形の等積変形を使って考える、その上で三角形の合同を使って別の形をつくるという課題です。

・教科書で扱っている三角形の等積変形を押さえることを優先するのか。
・三角形の等積変形にはこだわらず、子どもたちが集中して取り組んでいた後半の課題に絞って時間をつかうのか。

・三角形の等積変形、三角形の合同などの学習内容を扱うことを大切にするのか。
・数学的な思考や根拠を持って課題を解決することをより大切にするのか。

・1時間完了にこだわらず、2時間完了にするのか。
・2時間でやるのなら、どちらの課題を先にするのか。

それぞれの先生の授業に対する考えや思いがたくさん語られました。1日議論をしても結論がでる問題だとは思いません。1つの教材でも、本当に様々な授業が生まれてくることを実感しました。教科書の例題であっても、教師の工夫でいろいろな広がりを見せると思います。教師の持つ授業観の多様性と、教材研究の大切さをあらためて学ばせていただきました。プレッシャーのかかる授業に挑戦された授業者と同僚の先生方、忌憚のない意見をたくさん発表して内容の濃い会にしていただいた参加者の皆さんに感謝です。

楽しいお酒をいただく

昨日は、幾何ツールを使った授業研究会の前夜祭ということで、楽しいお酒をいただきました。

毎回、検討会の司会という大役をいただくのですが、その会を通じてたくさんの方と知り合え、多くのことを学んでいます。
うれしかったのは、昨年の授業者の方が、大きく成長されていたことです。授業に対する考え方、目指す子どもの姿が非常にシャープになっているのです。今まで漠然ととらえていたものを意識して言葉にするようにしたそうです。外化することにより、明確になっていったのです。授業もずいぶん進化したことでしょう。

残念ながら、今回は彼の授業はありませんが、検討会では視点のはっきりした明快な考えを聞けることでしょう。どんな場面について彼の意見を引き出そうか、今から楽しみです。

同じ考えを大切にする

子どもたちの考えを発表させる場面で、たくさんの意見を出させたいので、次々と指名していくことがあります。この時、注意をしてほしいことがあります。

「○○さんの考えを聞かせて」
「・・・です」
「なるほど、いい考えですね。他には」
「はい、△△さん」

教師は「いい考え」と評価しているのですが、その考えを子どもたちにきちんとつないではいません。また、すぐに「他には」と聞くことで、同じ考えの子どもたちの活躍の機会を奪っています。

「○○さんの考えを聞かせて」
「・・・です」
「なるほど、いい考えですね。○○さんと同じ考えの人はいますか?」
「たくさんいるね。□□さん、もう一度聞かせてくれるかな」
「・・・です」
「ありがとう。□□さんの考えも足してくれていたね。2人の発表を聞いて、納得した人手を挙げて」
「△△さん、どこでわかったか聞かせて」

同じ考えの人を挙手させることで、発表者以外の子どもも評価された気持ちになります。また、自分から発表できない子も授業に参加している実感が持てます。自信がなかった子も、この時点であれば指名しても安心して発表ができるはずです。
一方、自分と異なる考えを理解するには時間がかかります。1回聞いてすぐに理解することはとても難しいことです。そこで、教師が子どもの考えを説明してしまうと、それを聞けばよいので友だちの意見を聞かなくなります。同じ考えを他の子どもにも発表させることで、子どもたちの言葉で互いに理解するチャンスを増やすことができます。
また、「納得した人」と自分の考えが友だちにわかってもらえたことを実感できる場面をつくることは、子どもたちの自己有用感につながります。友だちの考えを理解したことを評価することで、より真剣に発表を聞くようになりますし、自分ではなかなか気づけない子どもにも活躍するチャンスをつくれるのです。

すべての場面でこのように子ども同士をつなぐことは、時間の関係で難しいかもしれません。しかし、教師が一つひとつの考えを大事にする姿勢を持つことで、より多くの子どもが授業に参加し、かかわり合えるようになるのです。

課題意識を持って授業に臨む

昨日は中学校で授業研究と授業アドバイスをおこないました。

今回は授業アドバイスを9人に行いましたが、最後の1人が終わった時は10時近くになっていました。勤務時間を過ぎてまでアドバイスを受けてくださった先生方の熱心さには本当に頭が下がります。
遅くなった原因の一つに、どの先生も子どもとの関係がよいことがあげられます。子どもたちがしっかりと授業に参加しようとしているのです。その結果、教師の働きかけと子どもの活動の関係が明確になり、授業の改善点が具体的にはっきりとします。改善のポイントがたくさん見つかり、どうしても話が長くなってしまったのです。

ある先生は、すべての子どもたちにできたという実感を持たせたいと、全員に○をつけるようにしていました。その結果、以前と比べて子どもたちが授業に積極的になってきたという手ごたえを感じています。しかし、解説の場面等で集中していない子がまだいます。この子たちは、どちらかというとできる子たちでした。このことに気づいていましたが、どうすればよいのか、悩みながら授業に向かっていたそうです。

そこで、できる子たちが参加しない理由を一緒に考えました。
彼らは○をもらっているので、解説を聞かなくてもよいと思っているようです。結果がわかっているので参加しないのです。とはいえ、彼らが興味を示す課題だと、せっかく積極的に参加するようになった学力低位の子どもが離れていってしまいます。扱う問題は変えずに、友だちのやり方を本人に代わって説明するなどの、より高度な課題を工夫をすることにしました。自己完結するのではなく、他の子どもたちとのかかわりをもたせる課題とすることで、できる子も低位の子も参加できる授業に進化させるのです。

他の先生方ともこのような話をたくさんすることができました。
どなたも、それぞれの課題を持って授業に臨まれていました。課題を持っていると、クリアできたかどうか、子どもたちの状況を意識することになります。子どもたちをしっかり見ることで、うまいかない原因も見えてきますし、あらたな課題も見つかります。こうして授業力がついてきているのです。

この学校におじゃまするようになって1年近くがたちました。確実に力をつけてきた先生が何人もいらっしゃいます。授業改善に前向きな先生が増えてきました。
「2月には、4月からの学級経営について相談させてください」という、うれしい一言をくださった先生もいらっしゃいました。
先生方の学ぼうという気持ちに私もたくさんの元気をいただきました。

ペア活動でのアドバイス

先週末は中学校の授業研究に参加しました。

体育の柔道の授業でのことです。ペアでアドバイスしながら、受け身の練習をしていました。先生が一人ひとりにアドバイスするのには限界があります。活動量を確保しながら修正をするにはペア活動はよい方法です。
柔道経験がなくてもよいアドバイスができているペアもいるのですが、どこがよかったか、何をアドバイスしていいか、うまく伝えあえないペアも目につきます。練習を繰り返しているうちに子どもたちの集中力が落ちてきました。
きちんとかかわり合わないので、漫然とした練習になってしまったのです。

柔道経験の少ない子どもたちなので、先生のお手本を数回見て説明をうけただけではポイントがわかりません。互いにアドバイスをし合うにもそのためのベースがなかったのです。

授業の最後に全体で、自分が受けたよいアドバイスを発表させました。とても意味のある活動です。最後ではなく、途中で練習を一旦止めてからこの活動をおこなうことで、アドバイスのポイントが明確になり、その後のペア活動が変わったと思います。

子どもたちがアドバイスし合うには、そのためのベースになる知識や経験が必要なことをあらためて学ぶことができました。

子どもの集中力が続く授業

昨日は中学校で英語の授業研究に参加しました。

子どもが積極的になるにはで紹介した、GDMの授業です。この時間は新たに、"into"と"out of"の使い方を学ぶ場面でした。代表の子どもが、「教室の外に移動して廊下の窓に貼ってあった絵をはずして教室に戻ってくる」というシチュエーションを英語で表現します。
子どもたちは自信がないのかなかなか全員がしっかりと大きな声で言えません。先生は正しく言えている子どもにうなずきながら、何度も挑戦させます。通常このような状態が続くとあきらめる子どもが出てきて、集中力が落ちてきます。ところが、なかなか理解できない子どもも、真剣に友だちの声を聞きながら理解しようとしています。結局この時間の最後まで子どもたちの集中はきれませんでした。

子どもたちの集中が続いた理由の一つは、同じことを何度も繰り返しているということです。この場面で言えば、何度も表現させた後、代表で演じる子どもを変え、内容の変化は絵の種類を変えるなどわずかにとどめ、また挑戦させています。何回も繰り返すうちに、どこかで理解できる瞬間があるのです。子どもたちはそのことを経験的に知っているので頑張り続けることができるのです。わかりたいという気持ちが満たされる瞬間を知っているから集中力が続くのです。

1回やってすぐに先生が正解を言って、それをただ繰り返す。これでは、子どもは答えがわかっただけできちんと理解できたわけではありません。わからない子はわからないまま授業は進んでいきます。すぐに集中力は切れてしまいます。

このことは英語に限ったことではありません。子どもたちがわかる瞬間を保証することが、子どもたちのやる気と集中力を生み出すのです。安直に答えを教え込むのではなく、子どもたちの中から「わかった」が生まれてくるような工夫が大切だということをあらためて確認できました。
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