同じ方向で取り組むことのよさ

先週末は中学校で来年度の研究の方向性を確認する会議に参加してきました。

会議の前に、全校の授業の様子を見学させていただきました。授業を見ていて印象に残ったのは、学年として同じ方向で取り組んでいることの結果が子どもたちから見てとれたということです。
例えばどの学級も座席は男女が市松模様で並ぶようになっています。子どもたち同士で相談する活動を取り入れています。1年間続けてきた結果でしょう。この日見た授業のペア活動では男女がとても楽しそうにしっかりと関わり合っていました。
また、先生方は子どもたちの言葉を聞くことを大切にし、しゃべりすぎないよう意識しています。その結果、子どもたちと先生の関係がきちんと作られていて、子どもたちは集中して授業に参加しています。
どの学級でも、どの教科でも同じです。1学期の頃は学級や担当の先生によってバラツキがありましたが、ほとんど感じられなくなっているのです。学年にかかわる先生がみな同じことを意識して取り組めば、個々に取り組んでいるときとは結果は大きく違います。子どもたちが育つことで、先生の経験や力量の差を子どもたちが埋めてくれるようになります。誰の授業でもきちんと集中して参加するようになるのです。

この学校では、来年度に向けて、共通で取り組むことを明確しようという動きが出てきています。先生方に、同じ方向で取り組むことのよさが実感されてきているのだと思います。学校全体がどのように変わっていくかとても楽しみです。

意味のある確認をする

子どもの発言の後、それでよいか学級全体に確認する場面をよく見ます。が、おやっと思うこともよくあります。

社会科の元寇の授業でのことです。

「元てどこのこと」
二人しか手が挙がりません。
「○○さん」
「中国です」
「みんないいかな」
ハンドサインでほぼ全員が賛成の合図をする。

以前に習っていたことなら、友だちの発言で思い出すことがありますが、もしそうだとすると、最初に手が挙がらないことが問題です。指名するより、ノートなどを確認させる必要があるでしょう。
この時は、まだ習っていなかったようです。そうならば、知らなかった子には「中国」という答えが正しいかどうかは判断しようがないはずです。にもかかわらず確認をしても意味はありません。しかも、賛成の合図を出すということは、授業の中で確認が形骸化してしまっていることを意味します。

知識などを子どもたちに確認をするときは、確認の手段を持っている必要があります。この例であれば、確認できる資料がなければ聞く意味はないのです。
そして、確認を形骸化させないためには、かならず根拠を具体的に言わせることが必要です。

「みんな○○さんの説明でわかった」
「わかった」
「じゃあ、△△さん。もう一度説明して」

子どもたちに確認して、「わかった」と言ってもらうと教師は安心して次に進むことができます。しかし、具体的に確認せずに進めばわかっていないのに「わかった」という学級になってしまいます。
本当にわかっているかどうかをきちんと確認することが大切です。

ペア活動のポイント

授業にペア活動を取り入れることがよくあります。子どもたち一人ひとりの活動量を増やすにはよい方法です。しかし、自分が活動することばかりに意識がいってしまい、互いにきちんとかかわり合えていないことがよくあります。ペア活動ではどのようなことに注意をすればよいのでしょうか。

大切なことは互いに相手をしっかりと意識することです。相手意識を持つことがかかわり合うための基本となります。

例えば本読みをペアで行う場合を考えてみましょう。読む側は何を注意して読むかを相手に伝えてから読む。聞く側はそれに対してどうだったかを伝える。相手に対する自分の役割を明確にすることで、読む側は聞いてもらうことを意識して読みますし、聞き手側もコメントするために意識して聞きます。このようにすることで、きちんとかかわり合えるようになります。

また、球技のシュート練習をペアでおこなう時などは、主たる活動であるシュートばかりに意識がいき、アシスト役は何も意識せずに漫然とパスを出し続けてしまいがちです。シュートしやすいようなパスをする、シュートのフォームをチェックするなど、アシスト役の役割を明確にしておくことが大切です。

ペア活動では相手を意識してきちんとかかわりあうことが大切です。そのために、互いの役割を明確にすることがポイントとなります。特に、漫然となりやすい受け側の役割を明確にするよう意識してほしいと思います。

読売教師力セミナー2010動画配信開始

昨年の10月23日に椙山学園で行われた読売教師力セミナー2010「キャリア教育事始〜小中学生が『社会で働く意味』を考える〜」の動画配信が始まりました。私もコーディネータとして参加させていただいています。

・プログラム

1.開会あいさつ
 読売新聞中部支社次長兼編集担当 天野誠一
 椙山女学園大学学長 野淵龍雄氏
2.模擬授業「働くってどういうこと?」
 愛知県豊田市立竹村小学校教頭 和田裕枝氏
3.模擬授業「今を大切に生きる」
 愛知県一宮市立大和南中学校教頭 伊藤彰敏氏
4.パネルディスカッション
 「キャリア教育事始〜小中学生が『社会で働く』意味を考える〜」
 愛知教育大教職大学院教授 志水廣氏
 愛知県教育委員会海部教育事務所長 玉置崇氏
 愛知県豊田市立竹村小学校教頭 和田裕枝氏
 愛知県一宮市立大和南中学校教頭 伊藤彰敏氏
 ◆コーディネータ NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事 大西貞憲
5.模擬授業「キャリア教育モデル授業」
 愛知県教育委員会海部教育事務所長 玉置崇氏

特に椙山学園大学附属小学校の6年生、一宮市立大和南中学校の2年生の参加による模擬授業は、キャリア教育という側面だけでなく、よい授業とは何かを考えるための材料となると思います。

是非ご覧ください。

愛される学校づくり研究会に参加

日曜日に愛される学校づくり研究会に参加しました。実践報告と2月に開催するフォーラムの打合せでした。

実践報告は、公にできない内容ですが、学校現場が抱える深刻な問題について勉強させてもらいました。

フォーラムでは、2つのセッションに参加します。「愛される学校となるための学校広報と学校評価」をテーマとしたパネルディスカッションではコーディネータを務めますが、3人のパネラーからの提案を受けて、3年間研究会でやってきたことをまとめていくという大役です。事前に細かい打ち合わせができない状況ですが、仕込みのないライブ感覚でのディスカッションを会場の参加者と一緒に楽しめたらと思っています。
もう一つのパネルディスカッションでは、「愛される学校となるためにすべきこと」をテーマにパネラーとして提言をさせていただきます。他のパネラーの方とうまくかみ合うような提案ができるかドキドキしていますが、ちょっと違った目線での愛される学校づくりを提案したいと思っています。

定員は200名ですが、満員になることが予想されます。ご興味のある方はぜひお早めに参加申込みをしてください。

佐藤曉先生から学ぶ

教師力アップセミナーで佐藤曉先生のお話しを聞かせていただきました。

佐藤先生は大学の研究者ですが、学校現場での実践を大切にされています。年間200回も授業研究に参加されているとのことです。実際の授業での子どもたちの学びの軌跡を具体的に示してのお話しは大変説得力にあふれていました。

発達障害の子どもの対応について直接先生とお話しすることができましたが、「これが正解という対応があるわけではない」という言葉が印象的でした。
この子はこういう障害があると診断がくだりレッテルが張られると、今度はそのレッテルが独り歩きをする。障害はその子どもの持つ多くの要素のほんの一部でしかない。その一部分で全体を規定することはおかしい。子ども一人ひとりと向き合い、その子に応じた対応を考える。障害があるなしに関係なくどの子に対してもアプローチの仕方は同じであるはずだ。区別する必要はない。手探りで一人ひとりに応じた対応を見つけていくしかない。

あらためて、一人ひとりを大切にすることの意味を教えていただけた気がしました。ありがとうございました。

教師の人事評価

私学の経営にかかわる方とお話ししていると、人事評価のことが話題になることがあります。頑張っている方により多くの給与を与えたい。報われる形にしたいということです。
時として、給与の割に働いていないと感じる方の給与を下げて、その分を頑張っている人に回したいと言われることもあります。気持ちはわかるのですが、給与規定の改定が必要だったり、なかなか難しい面があります。

学校改革に成功しているところでは、人事面の評価を給与に反映させるのではなく、ポジションに反映させていることが多いように思います。成果を上げている人は、例え若手でも責任のあるポジションにつける。ベテランでも成果を上げていない人はそのポジションから退いてもらう。また、必要に応じて新しいポジションを作って活躍する機会を与える。ダイナミックな人事が学校の活性化につながっています。

教師も子どもたちと同じで、自己有用感を持つことが、いきいきと働く原点だと思います。要は、自分のやったことがきちんと評価されていると実感できることが大切なのであって、学校の実情に応じていろいろと工夫の余地はあるはずです。ここが、学校経営の腕の見せ所なのです。

ノート作りで意識したいこと

子どもたちのノートを見てみると、板書の内容を写しているだけのものがあります。計算や作業が中心の物もあります。教科によっても違いがあると思いますが、どのようなことを意識してノートを作らせればよいのでしょうか。

大切なことは、ノートを作ることで、自分の考えが深まったり、成長が意識できることです。そのためには、ノートにはまとめだけ、正解だけが書かれているものにしないように注意することです。板書とも連動しますが、途中の考え、間違ったものもノートに残すようにする、消さないということです。

例えば、いくつかの考えが出たら、それらをノートに書かせ、自分がよいと思った考えを丸で囲ませる。できれば、その理由も書かせる。友だちの意見で納得するものがあればそれも書く。間違いに気づいたらその部分を赤で訂正したりしてわかるようにする。このように考えの変遷を残すようにします。
これらを根拠としてまとめを自分で書き、友だちや教師のまとめを聞いて足りないところを付け加える。このとき、色分けなどの工夫をして付け加えたものがわかるようにする。
また、算数や数学であれば、正解が黒板に書かれていても見ずに再挑戦し、見なければ書けなかった部分に線を引くなどして自分にとってのポイントがわかるようにする。

すべての場面でこのようにするのは時間の関係で難しいと思いますが、グループ活動のように自分たちで考えさせる場面ではこのようなノート作りをできるだけ取り入れてほしいと思います。

次年度に向けて考える

気が早いと思われるかもしれませんが、三ヶ日は次年度も継続してお手伝いする予定の学校のことを考えていました。4月になってから新たな行動を起こそうとしても、1年で最も忙しくかつ学級づくりにとって最も大切な時期にそんな余裕はありません。3月末までに準備を終えていなければなりません。今の時点で明確な方向性が打ち出されていなければ、間に合いません。
多くの課題を抱えている場合、緊急度の高い課題が優先されます。しかし、次年度のことを考えた時に、今手をつけておかなければならないことがあります。わかっていてもどうしても余裕がないために後回しにされがちですが、ここでやっておかないと次の1年の動きが取れなくなってしまうのです。
あわただしい3学期ですが、今の課題を明確にして、解決のための準備を怠りなくしてほしいと思います。

年末年始のお休み

12月30日から1月4日までお休みをいただきます。
日記もお休みをいただき、1月5日より再開します。

学校の応援団

昨日は、学校評議員をさせていただいている学校のおやじの会(おやじ限定でなくお母ちゃんも参加している)の忘年会に参加させていただきました。

学校と子どもたちのことを話題に楽しい時間を過ごしました。子どもたちの成長のみならず、先生方の変化、成長も本当によく見ていただいています。もちろん厳しい意見も出ますが、それも子どもたちを育てるという視点でのことです。

この学校のことというわけではないのですが、学校が地域の方にお願いをするとき、あまり負担にならないようにという発想で、これだけやっていただければとスポット的なお手伝いを頼むことが多いようです。そうではなく、学校の思いを伝えてもらい、きちんと責任のある仕事を頼まれる方が、多少物理的負担が増えてもやりがいを持って積極的に参加できるという話がでました。自分たちのやっていることが、子どもたちの役に立っていることを具体的な成果として実感したいというわけです。自分たちが能動的に関わるために、学校がどのように動いている、子どもたちがどのような活動を行っているのかをきちんと知らせてほしい。そうしてもらえれば、自分たちでどのように関わればよいのかを考えることができる。このように話されていました。
この学校では、何年にもわたる積み重ねの中、こういう関係ができつつあるのです。

これからの学校には、このおやじの会のように地域と学校をつなぐパイプ役、緩衝材となっていただける応援団が必要になってくるのだと思いました。

資料と知識の関係

資料を活用するとき、知識がないと読み取れないことがあります。逆に資料から知識を身につけることもできます。資料と知識の関係を整理したいと思います。

例えば、ある地域の農作物の生産量の資料から、その地域の特徴を考えることを考えましょう。
米づくりに適した環境(8月の平均気温が20度以上、・・・)、野菜づくりに適した環境などの知識がなければ、子どもたちの目は、「米をたくさん作っている」「野菜が多い」といった、資料から直接言えることにしかいきません。しかし、農作物の栽培に関する知識があれば、「気温どうだろう」「降水量は?」と環境との関係を考えようとするはずです。
逆に、その地域の環境と農作物との関係を考えることを課題とすることで、栽培に適した環境の知識を得ることができます。課題を変えることで、子どもたちにとって必要な知識を得ることもできるのです。次の地域ではその知識を活用すればよいのです。

ただ資料を与えて「読み取れ」ではなく、その資料を読み取るためにはどんな知識が必要なのかを明確にしておくことが大切です。子どもたちがその知識を持っていなければ、「事前に知識を与える」のか、「この資料をきっかけにして知識を得ることにつなげる」のか、どのようにするのかを考えておかなければなりません。
資料を活用する時は、その資料と知識の関係を整理してから、どのように扱うかを考えるようにしてほしいと思います。

若い先生に学んでほしいことを考える

先週末は、教師力アップセミナーの次年度の講師について相談をしました。

ここ数年は若い先生の参加が増えてきています。若い先生の役に立つ内容を増やすという視点で講師の選定を進めました。私も仕事上で若い先生と話す機会が多いのですが、授業等ですぐに使えるネタをほしがる傾向にあるように思います。そうではなく、もっと基本的な教師として身につけるべきものがその前にあるように思います。

どのような姿勢で日々過ごすことが教師力を高めてくれるのか。
学級経営の基本となる子どものとの関係をどのように作っていけばよいのか。
研究授業のような特別な授業ではなく、日々の授業をどのようにして作っていけばよいのか。

次年度はこのようなことを学んでいただけるようなセミナーを企画しました。多くの若い先生方によい学びをしていただきたいと、手分けして素晴らしい先生方に講演をお願いしているところです。よい返事がもらえることを期待しています。

グループ間格差をどうする

グループ活動で、活発に話し合いが進んでいるグループと手詰まりになっているグループに分かれるときがあります。このような時、手詰まりになっているグループに個別にアドバイスするのがよいのでしょうか、それともこのまま活動を続けた方がよいのでしょうか。
手詰まりになっているグループに対して教師がアドバイスをしていると、子どもたちは苦しくなると教師を頼るようになります。自分たちで解決しようとせずに、すぐに教師を呼ぶようになるのです。しかし、そのままにしておいても、動き出すようにはなりません。

このような時には、一旦グループ活動をやめて途中経過を発表させるのです。答えそのものを聞くのではなく、どんなことを話したか、どんなことに気づいたか、どんな資料を探したのか、過程を共有化するのです。手詰まりになっているグループも、「ああ、こんなことを考えればいいのか、ここを調べればいいのか」と、動き出すきっかけを自分たちでつかむことができます。そこで、もう一度グループで活動をさせればよいのです。

グループ活動は、結論がでるまで続けなければならないわけではありません。子どもの状況に応じて一旦グループ活動を止めて、そこまでの活動を全体で共有化することも必要です。足場がそろうことで、どのグループもしっかりと活動できるようになるのです。

やってきたことを無駄にさせない

予習など、事前に指示したことをやっていない子どもがかなりの数がいた時にどのように対処すればよいでしょうか。

一番いけないのは、やっていないことを前提に授業を進めてしまうことです。やってきた子は、せっかくやったことが無駄になってしまいます。やってこなかった子は結果として困りません。その結果、やってこない子が次第に増えてしまいます。

では、どうすればいいのでしょう。
例えば意味調べをやってくるように指示したとしましょう。

「Aさん。○○の意味を教えてくれる」
「やってきていません」
「こまったね。やってきた人に聞いてごらん。やってきた人助けてあげて」
「教えて」
「△△」
「Aさん、わかった」
「△△です」
「よかったね。教えてくれたBさんにお礼を言って」
「ありがとう」

やっていない子がいても、やってきたことを前提に進めます。その上で、やっていない子はやってきた子に助けてもらうようにします。そのとき、きちんと「ありがとう」と言わせるようにします。
やってきた子は、やってよかったと思います。やってこなかった子は友だちに助けられたことを意識できます。こうすることで、友だちとのかかわりができるようになります。また、自分がやってこないと友だちに助けてもらわなければいけないと感じると、次はやろうと思うようになります。

やってきたことを無駄にさせない。やらなかったことを他者と関わることにつなげる。このことを意識するようにしてほしいと思います。

わからなければ聞く

昨日は、中学校で授業アドバイスを行いました。

社会科の授業で、おもしろい場面がありました。北海道の農業の授業です。石狩、空知、十勝地区では水稲が生産されているのに、釧路、根室地区では生産されていません。水稲が石狩、空知、十勝地区で生産されている理由をたずねたところ、最初に指名された生徒は、「寒いから」と答えました。授業者は「なるほど」と認めましたが、次の生徒を指名しました。今度は「暑いから。米は暑くないと育たないから」と答えました。2つの意見が対立しました。
しかし、授業者は「あとから考えよう」と一旦その話を保留にしました。

授業後話をしたところ、なぜ最初の生徒が「寒いから」と言ったかわからなかった。稲はアジア原産で暑いところでとれるものだから、間違っている。よくできる子なのになぜそんなことを言ったんだろう。どう扱っていいかわからなかったので保留にしてしまったということでした。子どもが理解できないことを発言すると対処できなくなってしまうのです。
しかし、よくわからない発言でも子どもなりにちゃんとした理由があるはずです。まずはどうしてそう考えたか確認することが大切です。「それってどういうこと」と聞けばよかったのです。
これは私の想像ですが、米の生産量が多いところは北海道や東北地方なので、愛知県に住んでいる子どもから見れば「寒いところで米はとれる」と考えたのではないでしょうか。
もしちゃんと理由を聞いていたら、この2人の発言からよい課題が生まれたことと思います。

教師は自分のペースで授業を進めたいという気持ちがあります。わからない発言、想定外の発言はどうしても無視してしまう傾向があります。わからなければ「それってどういうこと」と聞きながら、子どもと授業をつくっていく姿勢が大切だと思います。

生徒募集競争

先日、大阪の私学の副校長とお話しする機会がありました。昨年度まで大阪府立高校の校長をされていたそうです。
学校会改革のお話が中心だったのですが、府立高校長時代のお話も聞くことができました。

・毎月のように校長対象の研修がある。
・学校の中長期計画策定して教育委員に直接面談で説明する。
・募集に関しては、オープンスクールや中学校訪問だけでなく、塾への説明会もおこなう。

中でも募集に関することが強く印象に残りました。公立高校が塾対象に説明会をする状況というのは、ちょっと想像がつきませんでした。
大阪は、私学も公立も授業料が無償です。府立の高校も何もせずに生徒が集まる状況ではないのでしょう。学校間の募集競争を否定する気持ちはありませんが、こういった競争が最終的に、学校の中身の向上につながってほしいと思います。入学した生徒をどれだけ成長させるかが、学校にとって一番大切なことですから。

説得になっていないか

授業研究で、教師の説明について検討されることがあります。「ここはこういう説明をした方がよいのでは」といった言葉がよく聞かれます。教師は子どもたちにわかってもらうために、いろいろと工夫をするのですが、その視点が気になります。

「このように説明をすればわかるはず」と教師の視点で話をしているように感じることがあります。

「・・・だから、○○になります。わかった」
・・・
「あれ、わからない。じゃあ、△△まではわかる? だから、・・・」
・・・
「じゃあ、もう一度最初から説明するよ。・・・だから△△になるよ。いいね。△△になると・・・だから、○○になることはわかる? いいかな。だからこの場合、○○になるんだ。わかったね」
「???」
「言っていることはなんとなくわかるけど、何だかよくわからない」
「どうしてわからないの!?」

子どもたちが、わからない顔をしていると、それではと、新たに説明を加えます。子どもがわからないと、教師の発する言葉ばかりが増えていきます。はたで見ていると、「わかったと言いなさい」と一生懸命説得しているように見えます。ひどい時には、「わかってくれー」と教師が悲鳴をあげているように感じることもあります。
わからせようとする意識が強いとこのようになってしまうのです。

受け身で説明を聞いて、わかったような気持ちになっても子どもは納得出ません。大切なことは、教師がうまく説明してわからせることではなく、子ども自身が自分でわかったと思うことです。

「なぜ○○になるんだろう。△△になることはわかる?」
「はい、Aさん」
「・・・だからです」
「なるほど、みんな納得したかな。自分でノートに書いて確かめてみて」
・・・
「みんな納得できたようだね。じゃあ、今度はなぜ○○になるのか考えてみよう。周りの人と相談してもいいよ」
・・・

わかったと実感するためには、何らかの活動が必要になります。子どもの視点でどのような活動をすればわかるのかを教師が考えなければなりません。
説明されたことを自分でノートにまとめる、友だち同士で説明を聞きあう、自分で図を書く、・・・。教師の説明の引き出しを増やすことより、子どもたちの活動の引き出しを増やすことが大切なのです。

わかりなさいと説得することは、教師の活動です。大切なのは子どもたちの活動です。「わからせる」ではなく、「わかる」ことが大切なのです。そのために、子どもたちがわかるための活動を中心に考えて授業を組み立てるようにしてほしいと思います。

教師が前で○をつける?

問題が解けた子どもに、ノートを持ってこさせて○をつけている場面に出会うことがあります。子どもたちは○をもらいたいので一生懸命問題に取り組みますが、気になることがあります。○つけをするときには、何に注意をすればよいのでしょうか。

前で○つけをすると、子どもが並んで待つことになります。待っている間子どもは学習活動ができません。問題が解けてテンションが上がっている状態ですからどうしてもざわついてしまいます。一方問題が解けない子どもは、落ち着かない雰囲気に集中力をなくしてしまいます。
また、○をつけた子どもに次の課題を与えていないと、席に戻って遊んでしまい、まだ解いている子どものじゃまになります。時には、聞かれてもいないのに答えを教えたりします。
分からない子は、周りの子がどんどん○をもらってくると焦ってしまいます。
一方教師はどうしてもできた子どもの○つけに集中することになり、できない子の支援ができません。○つけに追われ学級全体の状況を把握することもできなくなってしまいます。

では、どうすればいいのでしょう。
○つけは教師が机間指導をしながらすることが基本です。できた子どもに手を挙げさせたり、正解を見つけて○つけをするのではなく、すべての子どもを見ることです。できない子どもにも声を掛けるのです。
愛知教育大学の志水廣教授が提唱する○つけ法では、正解に○をつけるだけではなく、間違えたり、途中の段階だったりしても、合っているところまでを認めて○をつけて部分肯定するようにします。絶対に×はつけません。子どものやる気がなくなるからです。部分肯定した上で具体的な指示やアドバイスをしていくのです。もちろん正解者にも「いいね」と称賛の声をかけるように勧めています。

○をもらえない子どもは、学習意欲をなくしていきます。ですから、手がつかない子、分からない子、間違えてしまった子をどうやって見つけて支援するかが大切になります。また、一人の子どもに多くの時間を割くと、全員を見ることができません。素早い的確な指示も必要になります。友だちどうし相談して、確認し合うのも一つの方法です。全員を○にして、どの子もできたという自信が持てる授業を目指してほしいと思います。

子どもを育てる地域

先日、中学校の学校評議員会に参加しました。

学校に関わる様々な方が参加されましたが、みなさん地域で子どもを育てるということを大切にしておられました。

たくさんの議題がありましたが、子どもたちのボランティア活動の活性化について一番多くの時間が割かれました。

ボランティアなのだから強制するようなことはしたくないが、リピーターの子が多いということは、経験するとその楽しさがわかるはずだ。参加するきっかけをうまく作ってあげたい。

自分が役に立っているという実感を持たせたい。ボランティア活動で地域がこんなに助かっていることを伝えたい。子どもたちに「ありがとう」と言われる機会をたくさん与えたい。そのためにも、子どもたちが活躍する場を地域で作らなければ。

このような積極的な意見がたくさん語られました。

こうすれば絶対活性化できるという妙案はありませんが、PTAが行っている資源回収を子どもたちのボランティアに移行することが検討されることになりました。

このような地域に育つ子どもは、自分も大人になった時に、次の世代を育てることに力を尽くしてくれると思います。地域の方が、子どもたちを育てることに積極的に関わろうとしていることの素晴らしさをあらためて実感させていただきました。
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