言語活動を考える

来週に予定している講演に関連して、「言語活動」についていろいろ考えていました。
どうも言語活動というと、話すこと書くことを中心に語られることが多すぎるように思います。それよりも、聞くこと、読むことの方が大切な気がします。「伝えたい」「わかってほしい」より「理解したい」「わかりたい」を大切にしてほしいのです。

伝えたい思いをこめて一生懸命話したということで満足してもしょうがありません。伝わらなければ意味がないのです。でも、理解しようとしてくれなければなかなか伝わるものではありませんし、伝わらなくても何も反応してくれないからそのまますぎていきます。話し手が自己満足するしかありません。
理解しようとしてくれれば、うなずいたりしてわかってといるという反応をしてくれます。わからないところは首を傾げたり、質問してもらえます。自分の足りないところがわかります。その結果、自然に発信力もついてきます。
教室に相手を理解しようとする空気をつくることから始めなくてはいけません。そういう教師ではいじめも起きにくいはずです。言語活動はまず聞くことから始めてほしいと思います。

資料集をどう活用する

教科によっては教科書以外に資料集を持たせていることがあります。資料集を有効に活用するにはどんなことを意識すればよいのでしょうか。

資料集の活用には、次の3つのステップがあります。

・必要な資料を見つける
・資料を読み取る
・読み取った内容をもとに考える

注意してほしいのは、活動中に途中のステップで止まっている子がいるかどうかです。資料を見つけることができていなかったり、資料を読み取れていないのに、全体の場で結論を聞かされても話し合いに参加できません。
そこで、いきなり結論を発表させるのではなく、ステップごとに確認をすることも必要になります。

「どんな資料が見つかったか教えて」
「この資料からどんなことがいえる」

このようにすることで、途中で止まっている子ども次のステップに移れます。
また、考えることに時間を取りたいのであれば、ステップを飛ばして、利用する資料を最初から指定したり、全体で資料の内容を確認しておくことも有効です。

もうひとつ大切にしてほしいのは、考えを発表する場面で、必ず根拠とした資料を聞くことです。気づかなかった子は、その資料と出会うことができますし、気づいても違うことを考えた子は、別の視点に出会えます。

「・・・だと思います」
「なるほど、それはどの資料でわかったのか教えてくれる」
「○○です」
「Aさんは、○○から・・・がわかったといってくれたけど、なるほどと思った」
・・・
「じゃあ、私は○○から違うことを思ったという人いるかな」

このようにすることで、資料をもとに子どもたちの考えが深まり、つながっていきます。

資料集には子どもの考えを広げたり深めるための情報がたくさんあります。活用のステップを意識して、大いに活用してもらいたいと思います。

漫然と読ませない工夫

授業中、教科書や資料を読むときがあります。声に出す、黙読する、一斉に、個別に・・・。「読む」場面はとても多いと思います。ところがこのような場面で気になるのは、漫然と文字を追っているだけ、声に出しているだけに見える子どもが多いことです。

子どもが活動する時には、目標やその評価を意識することが大切です。「読む」場面でも、何を目標にして読むかを明確にして、その評価をすることが大切になります。

例えば、全員で一斉に読むときは、「大きな声で読もう」「主人公の気持ちになって読もう」といった指示があります。教師も指示した以上は、きちんと評価する必要があります。大きな声で読んでいるかどうかを評価するのであれば、声だけではわかりにくいので、口元が見えるように顔をあげて読ませるようするなどの工夫も必要です。主人公の気持ちになることを求めるのであれば、読む前に主人公の気持ちを確認しておくことも大切です。一度普通に読んだあとに、主人公の気持ちになってもう一度読ませ、「今、主人公の気持ちになって読んでもらったけど、どんな気持ちになって読んでくれたのかな」と聞くことから、本文の読み取りを始めるようなやり方もあります。
このような指示と評価を教師が意識することでより積極的に取り組むようになります。

より注意が必要なのは、黙読するときや友だちが読んでいるのを聞くときです。自分が声をださないので、どうしても漫然と文字を目で追ってしまうのです。こういうときは、本文に線を引きながら読ませることが効果的です。

「わからない言葉があったら線を引いて」
「主人公の気持ちがわかる表現に線を引いて」
「資料で、・・・がわかるところに線を引いて」

このように指示をすることで、子どもの集中度は間違いなく上がりますし、教師も子どもの手の動きをみることで評価がしやすくなります。
読んだ後は、自分で調べる、友だちに教えてもらう、どこに線を引いたか教え合う、その理由を聞きあう、学級全体で線を引いたことを共有する。このような活動をすることで、より「読む」ことに意欲的になっていきます。

「読む」場面では、目標と評価を明確にし、そのことを読む前と後できちんと確認する。そして、できれば、読み取ったこと、意識したことをその後の授業展開に生かす工夫をすることで、より集中して「読む」ことができるようになると思います。

夏休みをいただきます

本日13日より16日まで夏休みをいただきます。
日記もお休みをいただき、17日より再開します。

思いの深さと実現力

昨日は学校改革に成功した私立高校を訪問して、校長先生からお話を伺いました。

一番に感じたのは、子どもたち、学校への思いの深さです。「子どもたちを育てたい、学校をよくしたい」という思いがなければ学校はよくならない、という当たり前のことをあらためて実感しました。
しかし、思いだけでは学校は変わりません。それを実現するためにとった行動が素晴らしいのです。

「するな」の指導ではダメ。内面を育てれば自然に変わる。

地域に出て行って触れあうだけではダメ。地域によい影響を与えることが大切。それが子どもの自己有用感につながる。

教師に思いを持たせる。その思いを実現していくことで教師が育つ。

子どもたちの姿を見てもらうことが学校のよさを伝えること。

挑戦を繰り返して歴史と伝統がつくられる

学校をよくするためには思うだけでは何ともなりません。それを現実のものにする実現力が必要です。ここには書ききれないほどたくさんのことを学ばせていただきました。
この話は、後日まとめて記事にしたいと思います。

セミナーのご案内

(株)プラネクサス主催の学校経営セミナーで講師を務めます。

「授業評価で終わっていませんか? ―学校を変える授業評価とは―」
日 時:2010年9月17日(金)13:30〜15:30
場 所:東京・アルカディア市ヶ谷(私学会館)

授業評価を授業改善に生かすためのポイントをお話しするつもりです。
興味のある方は是非参加ください。
詳しくは(株)プラネクサスのホームページの「セミナーのご案内」をご覧ください。

指導案検討会に参加

研究発表のお手伝いをしている学校で、公開授業の指導案検討会に参加しました。教科単位での検討会でしたが、広い会議室で同時に行っていたので話し合いの様子が比較でき、こんなところにも教科の個性といったものがでるのだなと思いました。

とはいえ、私が目にした指導案は、どれも子ども同士がかかわり合う場面が工夫されていて、子ども同士のかかわりを大切にすることが教科を越えて根付いてきたことを感じました。こんな子どもの姿が見たいという思いも伝わってきます。
いくつかの指導案について授業者と話をしましたが、目指す子どもの姿が明確なので、具体的な発問や活動についての検討も論点がはっきりしたものになりました。

本時の目標につながる活動はどれか。
子どもたちが学ぼうとするにはどういう仕掛けが必要か。
子どもたちにリアリティを持たせるには、どのような教材よいのか。
ペアでの活動を生かすために全体活動で何をしておく必要があるのか。

皆さんと話すことで、私もたくさんのことを学ぶことができました。
検討会が終わった後も、授業のことを話し続けている教科がありました。この学校が目指す姿をそこに見たような気がします。研究発表会の研究協議では授業について楽しくかつ真剣に話し合う姿をきっとたくさん見ることができると思います。私も当日はこの学校の素敵な姿をたくさん皆さんに紹介したいと思います。

ルール化する

子どもに何か活動させる時、事前に指示をたくさんすることがあります。

「グループの全員が必ず意見を言ってね」
「わからないことは聞くように」
・・・
子どもたちは課題に取り組もうと意欲があがっているのに、事前の指示が多すぎて意欲がそがれてしまうこともあります。このような毎回の活動に共通するような指示はできるだけ少なくして、その日の課題に関することを中心に簡潔に指示をする必要があります。とはいえ、毎回確認しておかないと徹底できないようで、不安でもあります。
そこで、このようないつも共通する活動の進め方をルールにするのです。「話し合いのルール」「実験のルール」・・・。最初のうちは詳しく説明、指示が必要ですが、ルールにしてしまえば定着させやすくなります。教室の前に貼っておいて、いつでも確認できるようにするのもいいでしょう。

「話し合いのルールはなんだった。思い出せない人は前を見て確認しよう」

といった指示で済みます。
また、課題ができた子に対する次の指示を、活動中に口頭ですることもよくありますが、まだ作業中の子は自分の課題に集中しているので指示をきちんとは聞きません。そこで、「できた人への指示は黒板に書いておく」というルールにしておけば、できた子は黒板を見て次の課題に取り組むので、遊ぶこともありません。

日ごろの指示で、教室のルールにできそうなものは、ルール化するとよいと思います。

一人で考えることにこだわりすぎない

グループ活動や話し合いの前に、自分の考えを持たせたい。そのためにどのくらいの時間を取ればよいのかと相談されることがよくあります。

自分の考えを持たないと人の話を聞くだけで受け身になって、話し合いに参加できない。
最低一つは自分の考えを持たせてから、グループ活動に参加させたい。

教師にはこのような思いがあるのですが、すべての子に考えを持たせようとすると時間がかかるため、肝心の話し合いの活動の時間が無くなってしまいます。だから相談されるのです。このような相談をされる方は、自分の考えを持たせるために「一人で考える」よう指示していることが多いのです。
実際に授業を見ていると、考えを持てない子は時間を与えてもなかなか持てるようになりません。余分に時間を与えたからといって、考えを持てるようになるわけではないのです。逆に、早く考えを持てた子どもがだれてしまうこともあります。

自分の考えを持つことと、一人で考えることは決して同じではありません。考えを持つためには人の考えを聞くことも大切です。一人で考えて行き詰るなら友だちと相談してもよいのです。一人で考える「時間」にとらわれるより、自分の考えを持てる「活動」を大切にしてほしいのです。そう考えれば、「一人で考える」ことにこだわらず、最初からグループで相談する、苦しくなったら相談するという選択肢も出てきます。大切なのは、友だちとのかかわり合いの中で、答えという「結果」を共有するのではなく、どのように考えたかの「過程」を共有するように指導することです。

「最初に、こう考えたんだけど」
「こうやったけどうまくいかなかった」
「問題の意味がよくわからない」

このような言葉が出るようにすれば、自分の考えを持てていない子どもも、話し合いに参加できるようになります。人とかかわりながら自分の考えを持つことができるようになります。「一人で考える」ことにこだわりすぎないようにしてください。

根拠を問う

子どもに発言を求めるときに、答えや結果だけを確認する場面に出会うことがよくあります。

「主人公はこのときどんな気持だったと思う。考えを聞かせてください」
「とても悲しかったと思います」
「そうです。悲しかったんだね」

しかし、同じ答えだからといってそこにいたる過程や根拠は一人ひとり違うことがあります。また、そこにたどり着けなかった子どもは、結果だけを聞いても何故そうなるか理解できません。子どもに根拠を問うことで結果に至る過程を明らかにする必要があるのです。

「とても悲しかったと思います」
「なるほど、とても悲しかったと思ったんだ。それは、どこでわかるの」
「○ページの△行目に・・・と書いてあるので、ああ悲しいんだなと思いました」
「じゃあ、そこを読んでみて。・・・納得した人手を挙げて」

大人でも「なぜ」と根拠を問われると答えにくいものです。「どこでわかった」「それってどういうこと」と聞くことで、答えやすくなります。

資料から探すような場面でも、

「この人物はどういうことをした人。Aさん教えて」
「○○をした人です」
「それってどうやってわかった」
「資料集の何ページの下の方に書いてありました」
「あっ、あった」
「Bさん見つかった。何って書いてあった」

このようにすることで資料集のよさや使い方を子どもは身につけていきます。

「子どもの発言に対して、必ず根拠を聞くようにするといいよ」とアドバイスした先生に、その後を聞く機会がありました。
子どもが元気よく挙手をする学級でしたが、挙手の数が減ったそうです。今まで根拠を意識していなかった子どもが、根拠を考えるようになったためです。そのかわり首を傾けたりして考える場面が増え、友だちの発言を今まで以上に聞くようなったそうです。

根拠を聞くことで、子どもたちはより深く考えるようにもなるのです。

会場と舞台をつなぐ難しさ

昨日は市の研修会で模擬授業の解説を行ってきました。200人が参加する大規模なものでした。

この市では初めての試みで、しかも大きな市民会館の大ホールでの模擬授業ということもあり、最初会場の雰囲気は固かったのですが、次第に模擬授業を見ながらいろいろな反応を見せてくれるようになりました。しかし、私の取り回しが悪く、なかなかうまく拾って全体の問題とすることができません。私の視点での問いかけが多く、会場の先生方の疑問とうまくリンクしていなかったのかもしれません。
模擬授業も終わりに近づいたころ、授業者が、ここはどのように進めるといいか、どのような問いかけがいいかを子ども役の先生と相談しながら進め始めました。授業者の先生と子ども役の先生が自然に一体となって授業を考え始めたのです。
これが模擬授業のよさです。会場の先生方も一緒になって考えているのがよくわかります。模擬授業の中で自然に出てきた疑問や課題であったので、会場全体に広がり、舞台とつながっていったのでしょう。

授業者の先生と子ども役の先生のおかげで、授業をみんなで考えるよさを伝えることができたと思います。ありがとうございました。
最後に取りまとめの校長先生から、この研修を材料としてそれぞれの視点から各学校で料理してくださいという挨拶がありました。私もこの研修から会場と舞台をつなぐ難しさをあらためて実感しました。よい経験として今後に生かしたいと思います。

ベテランと若手が参加する研修

昨日は終日市主催の授業力研修の講師を務めました。各学校からベテランと若手2〜3名が参加して、その内容を校内に広めてもらおうというものです。若手教師2名が午前と午後にそれぞれ模擬授業を行ってくれました。

私が研修で行う模擬授業は、よいと思った場面、気になる場面があればすぐに止めて、その場面を参加者と振り返ります。今回は基本的なスキルの部分に焦点を当てたかったので、最初の授業はどうしても短い間隔で止めることになってしまいました。授業者にとっては流れが中断してしまうので大変やりにくかったともいます。それにもめげずガッツで最後まで乗り切ってくれた授業者のおかげで、具体的な話ができました。

午後の模擬授業は、1学期に実際にやった授業を再現してくれました。子ども役から出た意見が、教師の予想とはかなり異なったものなので授業者が困って助けを求めるシーンがありました。これが模擬授業のよいところです。このあと、どうすればよいのかを全体で考えることができました。最後に実際の子どもの発表の資料を見せてもらい、教師の考えと子どもの考えの違いがよくわかり、授業者が戸惑った理由も納得できました。

また、授業者はグループ活動に入る前に個人の考えを最低一つは持たせようと個人で考える時間をとっていました。その意図を聞いたところ、グループになった時に聞くばかりでなく話せるようにしたいからということでした。一方では、時間をかければわからない子が自分の考えを持てるようになるわけではない。時間で切るべきだという意見も出てきました。そのとき、わからない子は自分の考えをなかなかもてないので、どこがわからないかだけははっきりさせる。グループでの話し合いは、わからない子が、どこがわからないかを発表して、他の子がそれにこたえることから始める。このことをルールにしていると、自分の実践を発表してくださる先生がいらっしゃいました。この話に参加者全員が納得!! 私自身も大変よいことを教えていただきました。

若手教師のガッツや素直さ、ベテラン教師の実践力。ベテランも若手も参加する研修は、それぞれのよさの相乗効果で、実りの多いものになりました。次回は、私が仕切らずに各グループで授業を検討してもらいます。若手とベテランがどのような化学反応を起こしてくれるのか楽しみです。

やっぱり教師は授業が好き

昨日は中学校の現職教育で模擬授業をコーディネートしてきました。

この学校では模擬授業は初の試みです。先生方も、授業者もどうなるかとやや緊張気味でした。
中学校ですので、参加される先生の教科はばらばらです。教科の特性に影響されやすい、授業の流れより、個々の場面で起こったこととその対応を一緒に考えてもらうことを中心にしました。日ごろ手を焼いている生徒がいるのでしょう、問題のある生徒役の先生はとてもリアルに演じてくれます。思わずこんなシーンあるあるとうなずいていました。

机間指導は何をすればよいのか
友だちの発言を聞けていなかった理由はなぜなのか
指名されていない生徒が答えをつぶやきやき教師の気を引こうとしているときどう対応するのか
教師の発問意図がなぜ子どもに伝わらないのか
グループ活動のあと子どもの発言を引き出すためにどう問いかけるか
・・・

模擬授業から気づいたたくさんの疑問や問題を先生方と考えることができました。

最初かたかった先生方の表情もほぐれ、若手は子どもの立場に立った素直な感想を、中堅は生徒役で迫真の演技を、ベテランはこの問題の原因はここにあるのではないかとさすがの指摘を、授業者の先生は自分の行動や発問の意図を、それぞれの立場や経験に応じた活躍を見せてくださいました。模擬授業を通じて先生方がつながっていくのを感じました。たくさんの笑顔と真剣な表情に、先生は授業が好きなんだとあらためて実感しました。私自身もたくさんのことを学ばせていただいたとても楽しい時間でした。

継続すること

昨日は、授業力アップのセミナーにオブザーバーとして参加しました。このセミナーは先生のグループが自主的に開催しているもので、市教委などの後援はあっても基本的には手弁当の会です。
今年で8年目になりますが、参加者、スタッフの熱気あふれる大変よいセミナーです。新任の参加者が多いのですが、自腹を切ってこのような研修に参加するということは、この市の新任研修が受講者にとって有意義なものであることの証だと思います。(研修嫌いの若手が多い市町も結構たくさんあります)

このセミナーのスタッフには、毎年若手が参加していますが、何年か前に受講者の中に見た顔がスタッフとして成長した姿を見せてくれることはうれしい驚きです。しかも、裏方だけではなく、グループでの実習のリーダーとして進行から受講生へのコメントまでをこなしています。この会のリーダーの先生方がいかに若い先生をフォローし育てているかがよくわかります。

今回は、特に若手がリーダーをしているグループを中心に参観しました。若さあふれる、決して上から目線ではない、参加者とともに学ぶ姿勢が印象的でした。スタッフとして活躍することで、彼らもより多くのことを学んだことと思います。
先日授業参観した若手教師もスタッフとし参加していましたが、緊張している受講者を持ち前の笑顔でほぐしながら、見事に進めていました。この先生の学級がよい状態であった理由がよくわかりました。

余談ですが、雑談の中で、先日の私のアドバイスをすぐに実行して、子どもの変化を手ごたえとして感じ始めているとのことでした。素直に他人の言葉を受け止める姿勢が素晴らしいと思いました。次にお会いする時はより成長した姿を見せてくれることでしょう。

また、毎年新しいことにチャレンジしていることもこのセミナーの特徴です。評価の高さに安住することなく、より高いものを目指すからこそこれだけ会を重ねることができたのだと思います。当然参観する私もたくさんのことを学ぶことができます。このセミナーに欠かさず参加するようにしている所以です。

毎年同じことの繰り返しでは、その先に待つのは穏やかな死です。新しい血を取り入れながら、常により高いところを目指さなければ継続していきません。このことをあらためて教えていただいた一日でした。

事前に子どもの考えを知ることの落とし穴

子どもがどんな考えを持っているかを知るために、机間指導でチェックしたり、グループでの話し合いをそばで聞くことはよくあります。この後の全体での追究場面で生かすためです。最初にこの意見を出させて、次はこの子にあてて、最後はこの意見で締めよう。このような進め方のシナリオをつくることもよくあります。このこと自体は決して間違いではないのですが、注意してほしいことがいくつかあります。

教師が指名する時にあらかじめその子がどのような答えをするかわかっているため、子どもの発言が不完全でも教師は理解できてしまいます。しかし、他の子どもたちは初めて聞くのですから、教師よりも理解度は落ちます。子どもたちが発言を理解できず、考えが全体に広がっていないのに教師が次々指名して、教師の予定した結論に導いてしまうこともあります。教師はあらかじめシナリオをつくっているので、子どもの状況を把握することより、予定した通りに進めることを優先してしまうからです。

また、全体の場で出てきた意見を受けて考えが変わることもあります。当然、教師が予定していた意見を子どもが言ってくれないこともあります。そのようなとき、「ノートに書いたことを言って」と無理やり予定した発言を引きだそうとすると、子どもは自分が最初に発言したことを否定されたような気持ちになってしまいます。

事前に把握している子どもの考えにとらわれず、出てきた意見をきちんと子どもたちに広げて、子どもたちの反応に応じて、時には予定したシナリオを捨てることも必要です。事前に子どもたちの考えを知ることが悪いことではありません。それにとらわれず、子どもたちの状況に柔軟に対応することが大切なのです。

ほめることは難しい?

子どもたちをほめて伸ばすということが、よくいわれます。ところが、このほめることがうまくできない、ほめ方を教えてくれという相談がよくあります。中には、「悪いところばかりの子どもをどうやってほめるの?」と質問する方もいます。子どもたちをほめるには、難しいことなのでしょうか、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。

まず、ほめる観点が具体的であることが大切です。「積極的に取り組んでいる」ことをほめるのであれば、それがどのような子どもの姿でわかるのかを明確にすることです。そして、どのような場面で見られるかを明確にしておくことです。具体的な姿を意識して、その姿が見られる場面をつくることで、子どものよい姿を見つけることができるのです。見ようとしないと見られないのです。

また、教師の中に絶対的な基準があって、これができればほめるという発想だと、どうしても能力の高い子、よい子ばかりがほめられることになります。教師にはどうしても完璧を求める傾向があります。最終目標は高くてよいのですが、そこに足りないところを見つけて指摘するのではなく、出来たところまでをほめるのです。こうして、一人ひとりの成長したところ、できたことをほめるようにすればすべての子どもをほめることができます。

「Aさん、プリントが配られてすぐに名前を書いたね。えらいね」
「Bさん、すぐに鉛筆を持ったね。やる気があっていいね」

こんなことでも、普段なかなかできない子であれば、ほめていいのです。全員を同じ基準で見るのではなく、個人内相対評価をしてあげることが必要です。

教師が子どもたち一人ひとりのほめたい姿を明確にして、その姿を見ようとすれば、ほめることは難しくないはずです。

読売教師力アップセミナー打合せ

昨夜は、この秋に行う読売教師力アップセミナーでも模擬授業の検討会でした。
授業の内容を検討するときに大切になるのは、当然のことながらゴールはどこかということです。ところが、キャリア教育のゴールが具体的に見えないのです。中教審の資料等を読んでもなかなか明確になりません。キャリア教育とは何か? その話し合いの内容はとても面白く、当日のパネルディスカッション担当としてはこの内容で進めれば成功間違いなしとの確信を持つことができました。
一方、模擬授業の担当者は今頃・・・。
愛知県を代表する2名の先生です。きっと次回の打ち合わせでは我々が唸る案を持ってきてくれることでしょう。いやいや、次回が楽しみです。

模擬授業の楽しみ

昨日は、来週行う研修の打合せを行いました。

この研修は、ベテランが模擬授業をおこない、授業の見方を会場の皆さんと考えるというものです。授業者とは大体の方向性を確認しながら、どう授業をつくるかを話し合いました。この会話のなかに、教材研究のエッセンスが詰まっていました。当日この内容を再現できたらと思っています。

今年は模擬授業をベースにした研修をいくつか企画しました。

気になる場面があればすぐに止めることができる。
やり直しができる。
子ども役から、子どもの視点での意見を聞ける。

などのメリットがあります。
また、中学校などでは教科性が強いため、なかなか他教科の授業について意見が言いにくいのですが、子ども役として参加することで、教科の枠を超えて話し合いに参加できます。

昨日の打合せの結果、どのような授業展開になるかは、実際に模擬授業の場面まで私も知らされません。どのような研修になるのか当日になってみないと予測できませんが、参加者と一緒に私も楽しんできたいと思っています。

挙手の様子から何がわかる

授業中に子どもの挙手を求める場面がよくあります。勢いよく手が挙がる子、ゆっくりと手が挙がる子、まわりを見ながら手を挙げる子いろいろです。挙手の様子から何がわかるのでしょうか。そして、どのように対処すればよいのでしょうか。

勢いよく手が挙がるのは、自信のあるとき、指名されたいときです。大きな声を出したり、指名してもらおうとわざと目立つ行動を取ったりもします。子どもと教師の人間関係がよいと、子どもは正解して教師にほめてもらいたいのでこの傾向が強くなります。勢い余って指名されないのに答えてしまったりもします。他の子が答えると、「言われたー」とがっかりします。こういう状態を続けると、子どもと教師の関係はいいが、子ども同士の関係があまりよくない学級になってしまいます。
対応としては、一つの問いに対してできるだけたくさんの子どもを指名することです。教師が「正解」という言葉を言わない限り何人でも指名できます。

「Aさんはどう思った?」
「○○です」
「なるほど、○○と思ったんだ。Bさんは?」
「えっ。Aさんと同じですが・・・」
「もう一度言ってみて」
「○○です」
「なるほど、Aさんとおなじだね」
「Cさんは?」

このようにすれば、子どもは友だちと同じ考えでも指名して答えられるので、落ち着いて手を挙げるようになります。
また、同じ答えの人を確認したり、次に指名する子どもは根拠を聞くようにするのもよいでしょう。

「Aさんと同じ考えの人手を挙げて」
「Bさん。どのようにして考えた」
「△△です」
「なるほど、△△と考えたんだ。Aさん、Bさんの考えを聞いてどう思った」

このようにして、子ども同士をつなげていくと、子ども同士の関係もよくなっていきます。

友だちの発言の後、すぐに勢いよく手が挙がるのは、発言を聞こうとする気持より自分の意見を発表したい気持ちが強いときです。逆に手がゆっくり挙がるのは、友だちの発言をきちんと受け止めているときです。友だちの発言を聞くようにするには、友だちの発言を聞く必然性をつくることです。

「Aさんは○○と言ってくれたけど、それについてどう思う」
「Aさんは○○と言ってくれたけど、なるほどと思った人」
「Aさんは○○と言ってくれたけど、その理由を説明できる人」

教師が友だちの発言を聞く必然性をつくることで、自然に友だちの発言を聞くようになります。

まわりを見ながら挙手する子どもは自信のない子です。多くの子が手を挙げる中では、できないと思われたくないのでわかっていなくても手を挙げている場合もあります。正解以外が評価されない学級で起こりやすい状況です。
わからないことを積極的に評価する。不正解でも否定しないことが大切です。

「この問題よくわからない人手を挙げて」
「わからないことをはっきりできる人は偉いね。Aさんどこがわからない」
「□□がわかりません。なるほど、Aさんありがとう。じゃ□□をみんなで考えてみよう」
・・・
「Aさんのおかげでよく考えることができたね」

誰でもできないことから出発する、できないことができるための第一歩であることを子どもたちに伝えることが大切です。

ノートにはよい意見が書いてあるのになかなか挙手してくれない子には、机間指導の時に○をつけたり、よい意見だから発表するようにお願いしておきます。また、挙手だけに頼らず、教師が指名してもよいでしょう。

「いい意見だね。あとで発表してね」
「Aさんのノートにとてもいい意見が書いてあったんだけど、聞かせてくれる」

挙手の様子からも子どもたちのいろいろな状況がわかります。自分の学級の状況に応じて挙手の後の対応を工夫してみてください。

机間指導のポイント

子どもに作業をさせているとき、教師はまず間違いなく机間指導(支援)をします。ノートに○をつける、できない子の指導をする。なかには、漫然と子どもたちの間を散歩しているように見える方もいます。
机間指導とは何に注意をして何をすればよいのでしょうか?

机間指導は個別指導のチャンスでもありますが、大切なのは全体を把握することだと思います。まずは、全体を見回して支援が必要な子どもどのくらいいるかを確認します。数人であれば、すぐにその子たちのところへ行って、指示の確認や必要な支援を行います。もし、多くの子どもたちが手のつかない状態であれば、作業を中止させて全体で再度説明しなければなりません。
注意しなければいけないのは、一人の子どもにかかりきりになってしまわないことです。手詰まりになっている子に一生懸命に個人授業をしていると、全体の様子が見えません。他にも支援が必要な子がいるかもしれませんし、できてしまった子が遊んでいるかもしれません。子どもたちの間をまわって、個別に○をつけたり、アドバイスをしているときも必ず、移動の間に全体の様子を把握する必要があります。

では、できない子やつまずいている子を見つけたらどうすればよいのでしょう。大切なのは、事前に子どもたちがどのようなつまずきをするかを予測しそれに対する簡単なアドバイスや声掛けを考えておくことです。こうすることで、一人の子に多くの時間を割かずにすむわけです。このとき、わざと大きな声でアドバイスすると同じようなつまずきをしている子が自分で気づいてくれることもあります。また、すべて教師一人で対応しようとせずに、まわりと相談するように促すこともよい方法です。

机間指導では、できない子をきちんと指導しようとするのではなく、まずは、動きが止まっている子どもが動き出すためのきっかけを与えることと、子どもたちのつまずきの状態を把握し次の場面での指導に生かすための情報を集めることに注意するとよいと思います。
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