理科(モデル)で大切にしたい問いかけ

理科では目に見えないもの、実際に確かめにくいものを、モデルを使って説明します。たとえば原子は目で見ることはできません。分子と原子の違いも目で確認にすることはできません。そこでモデルを使って説明しようとするわけです。

ここで注意してほしいのは、モデルは実際に起こっていることを説明する仮説だということです。モデルが先にあるのではなく、実際の現象が先にあるのです。原子の例でいえば、水素と酸素から水をつくる(水を水素と酸素に分解する)と気体比では常に水素:酸素:水=2:1:2になります。この事実を原子モデルでうまく説明できるかどうかが問われるわけです。世の中に認められるモデルを正しいものとして子どもに理解させようとするのではなく、現実に起こっていることを、モデルを使って(考えて)説明しようとする姿勢を持たせてほしいのです。これが理科と数学の違いなのです。常に現実の現象から出発するのが理科なのです。

水素と酸素を混ぜれば気体の体積はそれぞれの和になります。なのに反応して水になると、水蒸気に変化させて測っても異なる体積になります。しかし、質量の合計は反応の前と後で変化しません。これをどう説明すればよいのか?
2種類の元素A、Bから異なる物質がつくられることがあります。原料となる元素の質量の比の値A/Bをそれぞれ求め、その値を比べてみると、簡単な整数比になります。これを、原子モデルで説明できるのか?
さきほどの、水素と水と酸素の比の関係は、同種の原子がくっつかないという原子モデルでは説明できるのか?
科学史をそのまま追体験させろと言いませんが、こういう問いかけを大切にしてほしいのです。そうでなければ、モデルを知識として理解し覚えることが理科になってしまいます。現象をどうとらえ説明するかという科学的なものの見方・考え方が身につかないのです。この見方・考え方は社会に出てからもとても大切になるものです。

天体の動きなども神の視点で描かれた図と動き(モデル)で考えますが、私たちはそれを直接見ることはできません。間接的にしか見られないのです。ですから、月の満ち欠けであれば、私たちが月に関して観察できる事実(30日周期で満ち欠けする、三日月は西の空に現れすぐに沈む、・・・)をまず押さえてほしいのです。その上で、これらのことが「このモデルで説明できるのか?」と問いかけるのです。
もう一歩踏み込んで、「このモデルで説明するならば月はどちら向きにまわっていなければならない?」と問いかけたり、「このモデルで考えれば南半球に住んでいる人は、月の見え方は北半球の人と何が同じで何が違う?」と問いかけたりしてもよいでしょう。実際にオーストリアでの月の見え方を映像で見せれば、モデルで考えることの意味を実感できるでしょう。

理科でモデルを扱うときは、モデルの説明から出発するのではなく、そのモデルが何を説明しようとしているのかをしっかり意識して、その妥当性を問うことを大切にしてほしいと思います。
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