スモールステップを意識して授業を組み立てる

授業づくりにはスモールステップを意識することが大切だとよく言われます。子どもたちがその日の授業の目標に到達するまでに、どのようなステップを踏む必要があるかを細かく考えて授業を組み立てることです。注意してほしいことは、このステップを教師が見落としていることがよくあることです。そのため、思わぬところで子どもがつまずくのです。子どもの視点でていねいに思考をたどって、そのステップを整理しておくことが必要です。すぐに気づくだろうと思っていても、子どもにとっては壁があることがあります。過去に学習したことで子どもに定着しているはずだ、いつもやっているから大丈夫なはずだと教師が思っていても、つまずくことはよくあります。教材研究の段階で、この日新しく学習することだけでなく、既習事項についてももう一度教え直すつもりで細かくステップを意識することが必要です。

例えば、繰り下がりのある引き算の筆算を学習するのであれば、既習である繰り下がりのない引き算が定着しているのが前提です。そこで、繰り下がりのある例題で1の位を引き算して「引けないね」と繰り下がりの必要性から始めて説明をした後で練習問題を解かせていると、15−8といった問題で筆算の形にするところでつまずく子どもがいたりします。ここでつまずく子どもがいるはずだと意識しているのであれば対応できますが、予想していなければ対応に困ってしまう可能性もあります。事前に繰り下がりのない引き算について、位をそろえて書く、1の位から計算するといったステップを意識して、授業の組み立てを考えておく必要があるのです。
先ほどの例であれば、繰り下がりのない筆算を最初に全体でやってみるという方法もあります。スモールステップを一つずつ確認して新しいことを学習する前に整理しておくのです。復習の問題を1問、個別に解かせるという方法もあります。全員できているか素早く確認して大丈夫であれば、この日の課題に挑戦するのです。定着していなければ、ていねいに復習することから始めます。スモールステップはすべて一つずつていねいにクリアしなければいけないわけではありません。大切なのは、スモールステップを意識して組み立てることなのです。

できればスモールステップは子どもたち自身で越えさせたいものです。新出事項であっても、いきなり挑戦させるという方法もあります。子どもたちに説明をせずに取り組ませるのです。あらかじめスモールステップを意識していれば、子どもがつまずくところは予想できます。最初のステップをクリアできているかいないかをチェックして、適当なところで作業を止めるのです。クリアできていない子どもがどこで困っているかを共有して、クリアできている子どもを活躍させて全員でそのステップをクリアさせて、次のステップに挑戦させるのです。

スモールステップでていねいに授業を進める。子どもたちに一気に壁を超えさせるような挑戦をさせ、つまずく子どもに対してはスモールステップでていねいにクリアさせる。授業の組み立て方はいろいろありますが、大切なのは教師がその日の目標を達成するためのスモールステップを意識して授業を組み立てることなのです。
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31