大勢のご来賓・保護者の皆様の祝福を受けて、本日139名の卒業生が稲付中の門を巣立っていきました。 初夏を思わせるような陽気の中、長時間にわたりご列席いただいたご来賓・保護者の皆様には、改めて御礼申し上げます。
また、ご来賓・保護者とも例年よりご列席いただいた方が多く、式直前に慌ただしく椅子を追加することになりました。 私どもにとっては嬉しい悲鳴でしたが、皆様にはご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした。
写真は、いずれも式終了後の卒業生見送りの様子です。
私は新校舎の外階段から一人ひとりの表情を見ていたのですが、式場 ( 体育館 ) で多く見られた泣き顔も、大半は笑顔に変わっていたように見えました ( もちろん、校門を出るまで涙、涙 … という卒業生もいましたが )。
皆様の見送りの拍手と 「 おめでとう 」 の言葉は、しばらくの間卒業生たちの耳にこびりついていることでしょう。 そして、その記憶がうすれる頃、それぞれが別の新しい世界に第一歩を踏み出していることと思います。
本日は、どうもありがとうございました。
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本日は、ご多用中にもかかわらず、北区を代表されて区長・花川與惣太様、ならびに、大勢のご来賓の皆様にご臨席を賜りました。
学校を代表して、心より御礼申し上げます。
保護者の皆様におかれましては、お子様のご卒業、まことにおめでとうございます。 至らないところも多々あったかもしれませんが、私たち教職員は、この3年間全力でお子さんの指導に当たってまいりました。
本校の教育活動に対し、今日まで賜りました皆様のご理解とご協力に、厚く御礼申し上げます。
さて、3年生の皆さん。 中学校の卒業、そして、義務教育課程の修了、おめでとうございます。 皆さんと出会ってこの2年間、私はさまざまなことを皆さんに語り、伝えてきたつもりです。
今日、そんな皆さんに最後のメッセージを贈るにあたり、まずは皆さんに聴いてもらいたい歌があります。 それは、ちょうど2週間前、「 北とぴあ 」 で行った合唱コンクールで、稲付合唱団の皆さんが歌った 「 fight 」 です。
私が3年生に伝えたい最後のメッセージは、皆さんが歌ったこの曲のテーマに通じるところがあります。 恐縮ですが、ご来賓、保護者の皆様、配布した歌詞カードをご覧いただけますでしょうか。
稲付合唱団は、全学年から有志を募ってつくられた合唱団です。 ただし、その中心となって全体を引っ張ってきてくれたのは、紛れもなく3年生でした。
コンクール当日、その3年生にとっての 「 集大成 」 と紹介されていた合唱を、ぜひこの式場の皆さんにもう一度聴いていただきたいと思います。
どうかご来賓、保護者の皆様も、お付き合いください。
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この曲に登場する若者は、大人の世界に足を踏み入れる一歩手前、つまり、皆さんと同じぐらいの世代かと思われます。 そして、たぶん皆さんがそうであるように、少しずつ現実の厳しさを知り始めたことに戸惑いを感じています。
「 描く夢が、すべて叶うわけなどない 」
「 優しい嘘 大人になりたい 」
「 散りゆくから美しい、という意味がわかってきた 」
「 勝ち負けだって、本当は大事なことなんだね 」
「 ごめんね、もう少し大人になるから 」
「 そうさ、人生は引き返せない 」 …
どうですか? そうした歌詞を聴いて、共感できる部分もあったのではないでしょうか。 そのとおり、現実は決して甘くありません。 成功や勝利より、挫折や敗北のほうが多いという現実。 自分の思いどおりになることなど、実はほとんどないという現実 … 。
これから先皆さんは、そういう現実の中を生きていくことになります。 だからこそ私は今日、皆さんにもう一度 「 fight 」 を聴いてもらったのです。
歌詞を読めば、わかると思います。
この曲の中にも 「 現実 」 という言葉が出てきますが、それをかき消してしまうほどたくさんの 「 頑張れ 」 が出てくることを。
「 頑張れ 頑張れ 命燃やして 続く現実生きていく 」
「 頑張れ 頑張れ 限りある日々に 花を咲かせる 」
これから先どんなに厳しい現実が待っていようとも、皆さんにも必ず 「 頑張れ 」 と励ましてくれる人がいます。 その声援を心で感じ、自分の力に変えていってください。 事実、皆さんは今までも、そうして生きてきたのです。
思えば皆さんは、生まれてから今日まで、どれだけ多くの 「 頑張れ 」 に支えられてきたでしょうか。
その声援は、必ずしも耳に聞こえるものだったとは限りません。
時には別の言葉や、行動で表した 「 頑張れ 」 も、あったことでしょう。 時にはあえて言葉をのみ込み、黙って見守ることで伝えようとしていた 「 頑張れ 」 だったかもしれません。
いずれにせよ、幼かった皆さんが熱にうなされているとき …
友達とケンカして、泣いて帰ってきたとき …
思春期を迎えた皆さんが、人間関係で悩んでいるとき …
孤独に耐えながら、一人机に向かっているとき …
選択した進路に対する不安に押しつぶされそうになったとき …
そんな皆さんを支えてくれたたくさんの 「 頑張れ 」 が、身近にあったはずです。 さあ、今日まで声援を送ってくれた人たちの顔を、今、感謝の気持ちとともに思い浮かべてください。
それができたならば、今度は皆さんの番です。 稲付中を巣立つ今日を境に、皆さんは少しずつ、今度は誰かのために声援を送り、誰かを支えてあげられる存在に、なっていかなければなりません。
中学校を卒業したら、無条件にバラ色の世界が待っている … などという無責任な発言は、校長としてしたくありません。 今まで多くの保護のもとで生きてきた皆さんは、これからは少しずつ、自分の力で現実を切り開いていかなければならないのですから。
しかし、その現実世界で、誰かから 「 頑張れ 」 と励まされたり、誰かのことを 「 頑張れ 」 と支えてあげたりしながら共に生きていくのも、私は悪くないと思っています。
誰かから生かされ、誰かを生かすということこそが、「 人が生きる 」 ということなのだと、覚えておいてください。
それが、私から皆さんへの、最後のメッセージです。
終わりに、私は、皆さんにとってあまり良い校長ではなかったと思います。 私は、皆さんが3年生になった年に、文化祭を中止しました。 その理由はきちんと説明したつもりですが、きっといまだに納得できていない人もいることでしょう。
また、普段から、言葉遣いや身だしなみ、姿勢のことなど、学校で一、二を争うほど口うるさい校長でした。 ただ、それでも、これだけは信じてください。
私は、皆さんのことが大好きでした。
文化祭の中止に伴い、私のことを避けるようになった人もいます。 何回も同じことを注意されたり、時には大きな声で叱られたりして、嫌な思いをした人もいることでしょう。
それでも私は、皆さんのことを嫌だと思ったことは一度もありません。 それどころか、教室や廊下で出会える皆さんの明るく屈託のない笑顔、笑い声に、私は何度も勇気づけられ、たくさんの元気をもらうことができました。
皆さんの笑顔と笑い声は、皆さんが私に送ってくれた最高の 「 頑張れ 」 だったのです。
私は、皆さんに出会えて、本当に良かったです。
私は、皆さんに生かされていたことに、心から感謝しています。
平成25年3月19日 北区立稲付中学校長 武田幸雄