校長式辞の様子
みなさんの門出を祝福するかのような、澄み渡った青い空、希望に輝く明るく暖かな光が、この体育館をやさしく包んでいます。
本日ここに、第70回卒業証書授与式を挙行するにあたり、公私ともにご多用の中、北区教育委員会 教育長 清正浩靖様をはじめ、多数のご来賓の皆さま、並びに保護者の皆さま方にご臨席を賜りましたこと、卒業生・教職員を代表いたしまして、心より御礼申し上げます。ありがとうございます。
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さて、卒業生の皆さん、改めてご卒業おめでとうございます。昨夜、そして、今朝をどのような気持ちで迎えたでしょうか。
まだ、実感はあまり湧かないかもしれませんが、今日は、みなさんが中学校の全課程を、そして、義務教育9年間を終える、とても大切な節目の日になります。
3年前の入学式。みなさんは、私が、校長として初めて迎え入れた新入生でした。
新しい制服に身を包み、少し緊張した面持ちで呼名に「はい」と元気よく返事をしていた当時の姿が、ほんの少し前のように感じられます。
中学校生活が始まることへの期待と不安を胸に、入学式に臨んでいたことと思いますが、実は、私も同じような気持ちでこの壇上に立っていました。
そして、入学式では「期待」と言う言葉に触れ、南の島に靴を売るために派遣された二人の社員の考え方の違いについて話しました。
誰も靴を履いていない南の島。ここでは靴は必要ない、売れないとがっかりする社員。一方誰も靴を持っていないのだから、靴の良さを知ってもらえば、たくさん売ることができると喜ぶ社員。
固定観念に縛られるのではなく、どんな状況にも柔軟に対応し、前例がないことに挑戦すること。つまり、何かをあてにして待つのではなく、自ら考え、行動することの大切さを伝えました。
みなさんは、忘れているかもしれませんが、私は確かにそのようなことを話しました。
あの日から三年間、卒業証書を受け取った今、みなさんの脳裏には、どのような思い出が巡っているのでしょうか。
1時間1時間みなで真剣に取り組んできた毎日の授業、休み時間や放課後のなにげない友との語らい、少し長いなと感じた朝礼での私の話。優勝を目指し、全力を尽くした運動会や合唱コンクール。集大成として取り組んだ奈良・京都への修学旅行。さらには、進路に向けて自分自身と自問自答した日々。
どれもがみなさんの成長にとって、かけがえのない貴重な歩みでした。
現校舎での活動には、譲り合うことや工夫すること、もちろん我慢しなければならないこともありました。
しかし、前例にとらわれず、柔軟な発想を持ち、現状に満足せずに、常に最高のものを作り上げようと努力してきました。
今、この校舎で最後の大きな行事が行われています。この間、入学式や運動会、70周年の記念式典・そして、今日の卒業式。全員参加で実施することは困難と言われる中、生徒・保護者・地域・そして、先生方と共に創意工夫し、協力し合いすべてを成し遂げてきました。
「疾風に勁草(けいそう)を知る」と言う言葉があります。「疾風」とは、激しく強い風、「勁草」とは、風雪に耐える強い草を表します。「強い風の吹く時にこそ、真に強い茎を持つ草は、動じることがない。」という意味です。
つまり、困難や試練に直面したときにこそ、その人の意思や信念の真の強さがわかることをたとえています。
これから歩んでいく道には、新たな出会いや喜びがたくさん待ち受けていることでしょう。一方、辛いことや苦しいこと、思いどおりにならないことなど、解決困難な問題と出会うこともあるはずです。
その時こそ、この稲付中学校で培った本質を見極め、強い信念を持ち、最後までやりぬく力で、自らの人生を切り拓く人であってほしいと願っています。
保護者の皆さま、お子様のご卒業誠におめでとうございます。
立派に成長され、義務教育を修了し、新しい世界に向け着実に歩みを進めているお子様の姿に、感慨もひとしおと拝察いたします。
この3年間、本校の教育活動にご理解とご協力をいただきましたことに、この場をお借りして、改めて、感謝申し上げます。ありがとうございました。
私ども教職員一同、お子様の健やかな成長を願い、努力してまいりました。自信に満ち溢れ、心も体も頼もしく成長したことを共に喜びたいと存じます。
新校舎での生活を少しでも、という願いに応えることはできませんでしたが、みなさまの思いを大切に、今後の教育活動を進めて参ります。
これからもぜひ、稲付中学校の良き理解者として、ご支援いただきますようお願い申し上げます。
結びにあたり、本校の卒業式にご臨席を賜りましたご来賓の皆様に、厚く御礼申し上げますと共に、一つお願いがございます。本日、本校を巣立っていく94名の卒業生は、ご覧のとおり、一人ひとり大変立派に成長いたしました。これからは、地域で、また、国際人として、さらなる活躍が期待される生徒たちでございます。今まで同様、みなさま方の温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。
卒業生のみなさん、名残は尽きませんが、そろそろお別れの時が近づいてきました。稲付中学校の良き伝統となっている「立志の言葉」を、みなさんの素晴らしい歌声で、中学校生活にフィナーレを飾ってください。
もし寂しくなった時、気持ちが揺らいだ時、それから、うれしいことがあった時は、いつでも稲付中学校を訪ねてください。施設や場所が変わろうとも稲付中学校は、あなたたちの母校なのですから。
いつの日も仲間と支え合い、高め合い、どんな困難なことにも協力し達成してきた、愛すべき卒業生の限りない前途に、幸多きことを願い、式辞といたします。
平成31年3月20日
東京都北区立稲付中学校長 高田 勝喜