なくてはならない人から、いなくてもよい人になる

「なくてはならない人から、いなくてもよい人になる」。これは、私が大切にしている考えです。学級を運営する上で学級担任は絶対的な統率者でなければいけません。子どもたちは未熟です。指導することが必要です。子どもたちが安心して学校生活を送れる環境をつくるために教師はなくてはならない存在なのです。新年度が始まった4月は全力で学級のルール作り、組織化を進めます。この時期にきちんと学級のルールを子どもたちに浸透させなければ、1年間苦労をすることになってしまいます。この1月を乗り切るとその後の学級経営はとても楽になります。教師の指示がきちんと通る。係活動が円滑に進み、子どもたちが落ち着いて学校生活を送れるようになります。

しかし、子どもたちを育てるという視点で見ればここからが勝負になると思っています。どういうことかと言うと、子どもが教師を信頼し、教師の指示に素直に従うということは、受け身であるとも言えるからです。また、子どもが自分の指示に従うようになると、思うように子どもを動かすことができるので、学級の支配者となってなんでも細かく自分が決めて指示してしまうようになってしまう方もいらっしゃいます。学級の規律を保てばそれでよいのではありません。子どもたちが自ら考えて正しい行動ができるように育てることもとても大切なことなのです。「なくてはならない人」になるまでも大変なことですが、そこから一歩進んで「いなくてもよい人」になることが求められるのです。

学級が安定して動きだしたら、少しずつ教師が子どもたちにどうすればよいか考え、判断させるようにします。いきなり子どもに任せるのではなく、事前に学級委員や係の子どもと相談し、何が問題か整理し、どのように進めたらよいかを考えさせます。学級への提案は彼らからするようにします。行事なども、担任が先頭を走ってリーダーとして引っ張って行くのではなく、子どもたちのリーダーに任せて一歩引いて見守るようにします。行事は学級担任の力が大きいと言われます。中には子ども以上に熱くなる教師もいます。確かに教師が先頭切って指導し、行事で優勝することで学級が盛り上がるかもしれません。子どもたちではうまくまとまらずによい結果が出ないかもしれません。しかし、問題はどれだけ子どもが成長したかです。子どもたちの成長のためには教師が少しずつ下がっていくことも大切なのです。教師がいなくてもまわっていく学級をつくることが理想だと思っています。

最初から「いなくてはいい人」では困ります。この時期、まずは子どもたちにとって「なくてはならない人」になることに全力をあげてください。それができた段階で、今度はどうやったら「いなくてもいい人」になれるか考えてほしいと思います。

定点観測の勧め

学校・学級経営において子どもの変化をきちんと捉えることがとても大切です。その方法の1つに定点観測があります。同じものを継続的にみることで変化がよくわかるのです。何を定点観測すればよいのでしょうか。

子どもの変化がよくわかるものには、

・朝の登校風景
子どもが自分から挨拶できるか。
服装がきちんとしているか。
登校時間に余裕があるか。
誰と一緒に登校するか。

・下駄箱
きちんと整理されているか。
かかとが踏まれていないか。
泥がぬぐわれているか。

・掃除道具入れ
道具が整理されているか。
道具が壊れていないか。
雑巾がきちんと絞られているか。

・トイレ
スリッパ・下駄が整理されているか。
きれいに使われているぁ。
入り口付近でたむろしていないか。

・廊下
ゴミが落ちていないか。
どんなグループが話しているか。

・掲示物
取れかかっていないか。
落書きがないか。

・・・

などがあります。もちろん、遅刻や欠席の数などの出席状況は必ずチェックします。子どもたちの学校生活のようすは、大きく変化する前にこういったところに予兆が現れます。好ましくない方向への変化には、あわてて注意するのではなく、その原因を考えることが必要です。その上で、叱るのではなく子どもたちが自ら気づいて改めるように仕向けることが大切です。よい方向への変化は、すばやくほめることで確かなものにします。「えらいね」とほめるよりはIメッセージで「うれしい」「きもちがいい」「すてき」といった言葉を使うとよいと思います。
学校や学級の状況でも定点観測すべきものは違ってくると思いますが、学校・学級経営の視点から定点観測すべきものを考えて、子どもの変化への感度を高めてください。
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