卒業式に思う

昨日は中学校の卒業式に来賓として出席しました。学校にとって最大の行事である卒業式ですが、近年は来賓のあいさつ等は極力減らし、生徒主体のもの変わっていく傾向にあるようです。とてもよいことだと思います。地区や学校ごとに特色がありますが、卒業生による合唱は選曲も、時代を映した曲であったり、オーソドックスなものであったりとさまざまです。今年はどんな曲を歌うのかと密かに楽しみにしています。

卒業式は3年間の集大成と言われますが、まさにその通りです。式の最中に見せる姿からどのように育ってきたかがよくわかります。
入場の歩き方一つとっても、その子どもの3年間がわかります。式の最中の姿勢や表情からも、どのような思いを持って過ごしたのかが伝わってきます。合唱も、姿勢や口の開け方、声量にその学年がどのように指導をされて成長してきたのかがよくわかります。
特に、答辞のときの代表以外の子どもの視線、姿勢、表情からは、どのような集団生活を送ってきたのか、どのように友だちとかかわってきたのかがよくわかります。答辞の言葉を自分のことのように感じられている子どもは、感情を押さえていても言葉に反応します。卒業生の思いが一つになっていると感じる卒業式は、はたで見ている私たちの胸にも迫るものがあります。

今回の卒業式で一番印象に残ったのは、出発(たびだち)の歌ではなく校歌でした。自分たちが3年間を過ごした学校を誇りに思う気持ちと別れるさびしさが伝わるものでした。彼らは、この学校ですばらしい3年間を過ごしたのだと思いました。

年ごとに見せる姿に違いはありますが、いつの年も純粋で、さわやかで、未来への希望と困難に立ち向かう力強さを感じさせてくれます。まぶしいような若さをちょっぴりうらやみながら、この先待ちうけているだろう困難を乗り越えて素晴らしい人生を送ってくれることを祈るのが常です。この日卒業した皆さんも力強く明日へと歩を進めてくれることと思います。
卒業おめでとう!!

簡単な指導案から多くのことを学ぶ

幾何ツールを利用した授業の指導案がメーリングリストで流れました。指導案といっても課題と子どもとの簡単なやり取りを想定しただけの2時間分で2枚のものですが、とても興味を引きました。

三角形の内部に3点をとり、その3点を結んだ三角形の3辺の長さの和が最小となる三角形を求める2時間完了の問題です。

授業の流れは、1点を固定して考える。次のその1点を動かして求める三角形を見つけるというものです。
最初に、「幾何ツールを使わずにわかるかな」と問いかける場面があります。ここがとてもいい。いきなり幾何ツールを使うのではなく、図を描いてみたり、ちょっと考えたりすることで自分の中の疑問、何がわかると糸口が見つかりそうといった視点が明確になります。そこで、幾何ツールを使うことで漫然と点を動かすのではなく、意図を持った活動に変わります。

指導案には、子どもたちがどんなようすになるだろうか。どんなつぶやきが出るだろうか。そんな思いが書かれています。

生徒 何となく対称図形を利用しようとすると思うが、四苦八苦するはず。
   この時、どんな話し合いを班でするかが楽しみ。

生徒 AI、AJを結んでみたよ
教師 なんで?
生徒 図形の性質を説明するためには、今まで学習した図形を図の中に見つけ出して使うとよかったから。
  (3年生のこの時期にこんなこと言ってくれたら、泣けてくる)

グループ活動に返す
生徒 いっつも二等辺三角形だけど、相似だよ。
生徒 AE=AIじゃない
生徒 あ!!!
(なんて話し合いがあったりしたら
 3人寄れば文殊の知恵!
 iPadで図が動くからの気づきがつながっていけばおもしろい!)

課題のおもしろさにひかれて、私も取り組んでみました。
あえて幾何ツールを使わずにやってみます。当然解は見つかるのですが、別のことが気になりだします。私の考えは正しいと思うのですが、すぐに証明が見えません。フリーハンドの作図では、このことが正しいか今一つ自信が持てません。そこで、私も幾何ツールを利用しました。実際にいろいろと図を動かして自分の考えを確かめることで、思考が深まります。幾何ツールだけで証明が完了するわけではありませんが、具体と抽象を行き来することで思考は深まるはずです。幾何ツールというICTのよさと可能性をあらためて実感しました。

ICTを思考のツールとするためにはどのような課題を設定し、どのような活動を子どもたちにさせるのか。子どもたちの思考と幾何ツールをつなぐ言葉をどうかけるのか。こういったことをしっかり考える必要があります。教材研究だけでなく子どもとのかかわり方などの授業技術の裏付けも大切です。

その点、指導案はとてもシンプルですが、子どもたちにどうなってほしいかという教師の思いが明確です。細かいことは書いていません。方向性だけが示されています。それは、実際の子どもたちのようすによって、自在に対応しようという意志の表れだと感じました。その裏には、実際には使われないかもしれないたくさんの手立てや切り返しの言葉が準備されていることと思います。子どもたちがどのような活動や思考をするかはわかりませんが、きっとそのことを活かした授業になると思います。

授業者とは何年もお付き合いがありますが、この数年の進歩は素晴らしいものがあります。簡単な指導案だからこそ、そのことがよくわかります。授業者が目指すもの、子どもに対する思い。ふだんの授業までが見えてくるものでした。シンプルだからこそ伝わるものがあるのです。久々に指導案から勉強させていただきました。
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