データの考察を考える

学校評価や全国学力学習状況調査など、私たちはデータをもとにいろいろなことを考察します。これは学校のことではないのですが、先日こんなことがありました。

「住宅の購入・建築における条件の重視度」というアンケートをもとに、低価格住宅に自分たちの強みを加えれば確実に売れるということを力説する方がいました。20代、30代、40代、50代、世代ごとに2位以下は変わるが、どの世代も「価格」が1位になっているというのがその理由です。それだけ聞けばなるほどと思うのですが、どうも引っかかります。大きな買い物ですが多くの人は値段が安い方がよいに決まっています。しかし、それだけなのでしょうか。
実はこのアンケートは複数回答可だったのです。「価格」を選んだ人はどの世代も80%から90%です。しかし、どの世代でも80%を超して選ばれた項目が複数あります。「耐震性能」はどの世代でも80%を超しています。その他にも、20代では「周辺環境」「防災対策」「生活環境」「セキュリティ」、30代では「日当たり」が80%を超しています。70%を超える項目は、どの世代でも10はあります。つまり、住宅の購入・建築には非常に多くの条件が重視されているということです。その中でも「価格」が一番共通して重視されているということなのです。このアンケートから価格が安ければ売れるとはとても言えません。ではその方はなぜこのように判断したのでしょうか。すべての世代に1番だったのでどの世代でも売れそうだと判断したのでしょうか、それとも意図的に他の要素を無視したのでしょうか。実際のところはわかりませんが、アンケートの元データを見せてもらわなければ私もそういうものかと思っていたかもしれません。

この例は極端かもしれませんが、学校評価や全国学力学習状況調査の考察だけを読んでいるとその判断の根拠がよくわからないことがあります。私が学校評議員をしている学校では、ほとんどのデータを評議員に公開してくれます。おかげで学校の考察もよく理解できるし、私なりの判断を付け加えることができます。とてもありがたい対応です。しかし、元データを公開しろとは安直に言えません。今回の例のようにおかしな結論が独り歩きする危険性もあるからです。学校評価が義務付けられ、全国学力学習状況調査の結果の公表の圧力が高まっています。一部の結果に引きずられてとんでもないことを言いだす人が出てくるかもしれません。

今日は全国学力学習調査がほとんどの学校で実施されていることと思います。この結果をどのように考察し公表するのか、学校現場は厳しい視線にさらされています。拙速な判断を避けてほしいと願うのは私だけでしょうか。
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