反転授業について考える

ICTを活用した反転授業が話題になっています。
家庭で事前にビデオを見て予習し、学校ではその学習をもとに、問題を解いたり、個別指導をしたり、わからないことを教え合ったりするというものです。わからない子どもはビデオを何度も見直すことができるので、自分の理解のペースに応じた勉強ができる。学校では、講義をしないので、できない子どもに教師が個別指導をすることができ、問題演習の時間も確保できる。

何かを期待させる新しい発想に思えるのですが、根本的に引っかかることがあります。ビデオの授業はできの悪い一斉授業と同じく、一方的に教えるものです。もちろん思考を促す場面や問いかけなどはあるでしょうが、基本は子どもの状況にかかわらず一方的なものにならざるを得ません。もちろん何度も見ることでわかるよさはありますが、そのような授業で子どもが理解できるのであれば、教室で同じ講義をすればよいということです。いやいや、理解できない子どももいるかもしれないが、講義の時間がない分、学校で理解できない子どもに対応する時間を確保できるからよいのだという反論も聞こえてきそうです。その根底にあるのは、時間をかければ子どもに力をつけることができるという発想です。何度も述べていますが、小規模の学校では個別指導の時間が多く取れます。だからといって決して学力が高いという結果は出ていません。たとえ講義の時間がゼロになっても、教師が個別指導で何とかできることは限られています。かけた時間よりもその内容が問われるのが授業なのです。

また、一方的に教師が教えて、その内容を演習するのが授業だという発想も感じられます。例えば分数の割り算の考え方は教師が教えることなのでしょうか。そうではなく、割り算の意味、分数の意味をもとに子どもが自分たちで考えながら理解していくことが重要だと思います。知識として一方的に与えるようなものではないと考えます。
もちろん教えなければならないことはたくさんありますが、1時間の学習で一番大切な内容は、子どもたちの手で見つけていくことが大切だと思います。となれば、反転授業で予習をするのはいったいどんな内容になるのでしょうか。子どもは常に受け身で教えられるだけの存在になるのでしょうか。子どもを目の前にしての授業でも、全員に考えさせ、理解させることはとても難しいと感じています。反転授業で考える力をつけることはできるのでしょうか。

このような疑問や不安がたくさんわいてきます。まだまだ始まったばかり(日本では)の試みに対してネガティブなことを言うのは、あまりほめられた態度ではないことはよくわかっています。しかし、どうにも気になってしょうがないのです。私の考えていることなどは織り込み済みで、素晴らしいものがつくられつつあるのかもしれません。実際のところを見せていただく機会を得たのち、再度話題にしたいと思います。
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