学校の役割を考える

「学校の役割は、 子どもたちが、大人になったときに、生涯ちゃんとお金を稼げる人 に育てあげることです。その為には、社会で必要とされる 資格や 技術をしっかり身に付けることです」。この言葉がある校長のブログで書かれていました。もちろんこれが学校の役割のすべてということではなく、たまたま全国学力・学習状況調査の実施に関連して書かれていたことです。今、大阪では学校改革のキーワードとして、「ユーザー視点」という言葉が使われていますが、それに通じるものがあります。学校現場をまわっていると、自分の子どもの視点からだけで、全体のことを考えない意見を言われる保護者に出会うこともあります。「ユーザー視点」ということでいえば、これも認めるべきことなのでしょうか。

これからの日本の社会構造を考えれば、「生涯ちゃんとお金を稼げる」というのは、教育だけで何とかなる問題だけではありません。お金を稼ぐためには「資格や技術を身につける」という発想もちょっと単純すぎるような気がします。経済の発展が減速している状況では、なかなか職に就けない人も出てきます。構造的な問題です。パイの数より人の数の方が多いのです。資格や技術を身につけることは、ひところはやった言葉の勝ち組になる手段であり、その影には必ず負け組ができてしまいます。確かにユーザーという視点では勝ち組になることが大事に思えるのも理解できますが、校長という立場では、勝ち組になるというような発想ではなく、もう少し広い視点で学校の役割を語ってほしいと思いました。

少なくとも税金を投じておこなわれている公的な義務教育では、社会のためという視点が大切だと思います。私たちの社会をより良い形で持続していくための大切な担い手を育てるという役割が、常に第一であってほしいと思うのです。稼ぐことが一番の目的である企業も、社会に貢献する対価として利益を得ています。そうでなければ、暴力団との区別がなくなってしまいます。私は子どもたちに「社会の役に立つことで稼ぐ」という意識を持った人間になってほしいと思います。そのために、「役に立つ」「認められる」という経験がとても大切になります。自己有用感をもつことは子どもの学習や働くことへの原動力にもつながります。人の役に立つ、人から認められる経験を積むことを学校の役割として意識してほしいと思います。
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30