学校マネジメントを考える

学校マネジメントという言葉がよく聞かれるようになりました。マネジメントをどうとらえるかは、人によって差があると感じます。学校にはマネジメントはなじまないという方もいれば、これからは積極的にマネジメントを取り入れなければならないという方もたくさんいます。では、今までは学校マネジメントという考えはなかったのでしょうか。

マネジメントとは、目的を達成するために人・物・金・情報をいかに活用するかということですが、これはどの組織でも当然考えなければいけないことです。うまく機能しているかどうかは別にして、学校でもこのことは考えてきたはずです。だれをどの学級の担任にするか、行事の担当をだれにするかなどは、マネジメントという言葉で意識されていなくても、立派なマネジメントの一部なのです。

では、なぜ今までマネジメントが大切なこととして意識されてこなかったのでしょうか。その理由は、大きく2つあるように思います。

一つは学校が達成すべき目的(たとえば子どもたちの心身の健やかな成長?)に対してその達成のための目標がなかなか具体的にできないことです。教育の特性として、目標が抽象的になりやすいのです。結果、目標が達成できたかどうかのチェックも曖昧になってしまいます。そのため、そもそも具体的な目標をきちんと設定しなかったり、設定しても行動計画が立てられない。チェックできないので行動計画が改善されない、責任が明確にならないといった状態になってしまいます。どこに向かっているのか、どこにいるのかわからないようでは、マネジメントどころではありません。

もう一つは、学校では人・物・金・情報に関する自由度が低いことです。人に関しては、一般の教員は学級担任、教科担任、部活動顧問を振り分けるとほとんど余裕がありません。定員を勝手に増やすこともできませんから、どこかに人を厚くしてパワーアップをしたくてもなかなか難しく、教員の負担を増やさずに何かをやることはとても困難なのです。
物とお金に関しては学校が独自に予算を請求したり、自由に裁量して使える範囲は全体の予算の中で非常に限られています。情報に関しても、組織的に情報を集めたり、共有化するということがされにくい体制があります。
マネジメントをおこなうにも道具や材料がとても少ないのです。打てる手が限られているため、マネジメントをしようという意識が薄いのです。

では、なぜ今学校マネジメントという言葉が言われるようになってきたのでしょうか。それは学校を取り巻く状況が少しずつですが変わってきているからです。

一つは学校と地域の連携が進み始めたことです。その結果、地域の方が学校経営に積極的に協力するようになってきました。当然、第三者にもわかりやすい、客観的な目標の設定と評価が必要になってきます。学校評価の導入です。目標とその達成を明確にすることが求められるようになりました。これはマネジメントそのものです。また、人の問題に関しても、地域の方がボランティアとして学校の活動に協力してくれるようになってきました。学校として活用できるリソースが増えてきています。地域の方と一緒になって新しい教育活動に取り組んでいる学校が増えています。

もう一つはICTの活用です。学校評価にしてもそうですが、新しいことを始めればそのための労力はどうしても必要です。しかしICTをうまく活用することで負担を減らすことができます。最近多くの学校で導入されている校務支援システムは、教師の事務作業の効率化をはかることで、多少なりとも余裕を生み出してくれます。うまく活用することで教師間の情報の収集や共有化も促進できます。また、ホームページの活用は学校と地域の情報共有に大きな効果が期待できます。

大きく状況が変わったとはいえないかもしれません。しかし、こういった変化をうまくとらえ、マネジメントを工夫している学校は大きな成果をあげています。また、学校独自で使える予算をつけている市町村も増えてきました。環境は間違いなくよい方向に向かってきています。従来の思い込みを捨てて、あらためてマネジメントを考え直すことで、学校がよりよい方向に向かっていくことと思います。
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