金大竜先生から本当にたくさんのことを学ぶ

今年度第1回の教師力アップセミナーは大阪市の小学校教諭の金大竜先生の、「やっぱり子どもが好き」から始める学級づくり〜魁・殿と凸凹のある子ども達〜と題した講演でした。

全体を通じて感じたことは、金先生の子どもたちに対する視線の優しさと、授業や子どもに対する視点(観)の豊さでした。
教師として子どもたちと接して悩むのは、自分の思った通りに子どもが動かないからです。しかし、例えば「やめて」の一言で話し合いが終わるのは授業規律がよいと言えますが、なかなか終わらないのは話し合いに熱が入っているとも言えます。よい悪いではなく授業観が違うのです。上手いかないということは、今の自分が持っている授業観と異なるものに出会えたということです。自分の授業観を豊かにしてくれると前向きにとらえればいいのです。

個が成長できるような環境づくり、集団づくり(つながりづくり)が重要ですが、そのためには自分の観を広げることが大切になります。観を持っていないと、目の前にそのことが起きていても見えません。見えないことは指導できないからです。例えば、数字の13は見方によってはアルファベットのBとも見えます。しかし、これはアルファベットを知らなければ認識できません。立ち位置の違いで同じものでも見え方が変わるのです。
しかし、見えることには弊害もあります。そこに目が向けばできないことが気になります。疑問を持たずに善意で指導してしまいますが、必ずしもそれがよいこととは限らないからです。

金先生は、つながりを大切にされています。教師と子どもの関係という視点では、子どもの親の前でもできる指導を意識されています。子どもと子どものつながりでは、「全員とは親友になれない」、しかし「温かい関係にはなれる」と、子ども同士の信頼関係をつくることを大切にされています。
忘れ物を無くすのは無理です。大切なのは忘れた時の対応を教えることです。人間関係ができてくれば自然に忘れ物も減ってきます。具体的な指導例で伝えてくださいます。
「先生が好きです」と日記に書いてくる子がいます。そこには、「先生にポジティブに見てもらいたい」という気持ちが現れているという金先生の視点は、常に子どもに寄り添っています。「水をやり、日にあてて植物を育てるように、成長のための環境を整えるのが教師の役目で、いつ花が咲くのかは植物に聞かない」という、成長を温かく見守る姿勢はとても素晴らしいものです。

金先生は具体的な授業技術をたくさん持たれている方です。しかし、そういった技術ではなく、子どもたちのどのような姿勢で接するといいかを伝えられます。かつて、勉強会でこれなら絶対上手くいくだろうという授業技術を伝えても、仲間が自分の学校でやってみるとうまくいかず落ち込むということが何度もあったそうです。子どもたちやその取り巻く環境が異なるからそれは仕方がないことです。講演の冒頭で「他人の実践は上手くいかないと思って持って帰る」とおっしゃった意味がよくわかります。

具体的な例も交え、子どもたちにできるという自信を持たせ、他者とかかわる力をつけていくことの大切さを伝えられます。そのために、受け側・聞き手を育てるということを大切にされています。全く同感です。

最後に、教師には子どもたちとつながるためなら何でもする覚悟と創造が必要だというメッセージを送られました。「自分のやりたいことをやらせようとする宗教家ではなく、子どもたちのやりたいことをやっているのか、なぜやらないのかを考え続ける哲学者となってほしい」という金先生の言葉は、私の中に深く残りました。

今回の金先生の講演は、どうすればいいという”How to”を伝えるのではなく、どうあればいいのかとその場で参加者に考えてもらうものでした。私自身の講演では、問いかけはしても、自分なりの答や具体的な例を伝えてしまっています。自分の講演スタイルを変えたいという気持ちになりました。とてもよい刺激をいただきました。
それだけでなく、金先生から、子どもを見るということの意味と大切さを始め、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
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