研究会で授業の展開について考える

数学の授業づくりの研究会に参加してきました。この日は体育館で3つの授業が公開されました。一般参加者として授業を見るのは久しぶりなので、純粋に授業を見ることを楽しむことができました。

一つ目の授業は中学校1年生の関数の授業でした。小学校の算数の題材で、ヒゴを使って正方形で階段をつくっていくときの段数とまわりの長さの関係を考えるものがあります。その題材を小学校の「ともなって変わる2つの量」という考え方から、「一方が決まれば他方が決まる」という関数関係でとらえなおし、従属変数のふるまいを独立変数との関係で見ることによりその「特徴」を知ることができることを理解させるのがこの授業のねらいでした。

授業者は大学の教授です。子どもの顔が上がっていないのにしゃべる、子どもが理解できているかの確認をせずに進めていくというように、授業技術については気になるところがたくさんあります。小中学校の現場の経験のない方にはどうしても仕方がないことです。また、授業者の問題ではなく、この学校の子どもたちも授業者の顔をあまり見ない傾向があるように感じました。顔は上がっていなくても説明はちゃんと聞けています。優秀な子どもたちなのでしょう。しかし、子どもたちの表情が見えないと理解の程度がわからなかったり、気づきや戸惑いを察知できなかったりします。子どもの反応を大切にする学校であれば、子どもたちは自然に顔を上げるようになっています。このことも少し気になりました。

子どもたちに題材を提示して、「変化する数量をちょっと考えて」と発問します。小学校であれば実際に試してみせたり、自分の手で図をかかせたりといった操作活動必要になりそうですが、さすがに中学生です。すぐに考えることができます。子どもたちから「まわりの長さ」が出てきます。「段の数が変わると?」と授業者は返しますが、子どもはあまり反応しません。授業者が関数関係を意識させようとしていることがわかりますが、子どもたちにとっては唐突だったのかもしれません。子どもから出てきたものを図で確認していきますが、「面積」を「四角の数」と置き換えたり、「段の数」と「高さ」を同じとしたりします。数学では、等価なものに置き換えて考えることは大切なことですが、子どもたちに納得する時間を与えることが必要だと思います。「頂点の数」も出てきたのですが、確認をしませんでした。私は面白いと思ったのですが、その理由がよくわかりません。授業全体が、授業者の都合で進んでいるように感じました。

この中からどの数量に注目して関係を調べるのかを決めるのですが、そこまでで15分以上かかっていました。「段の数が変われば変わる量」ということを意識させたいのかとも思いましたが、特にそのような場面はありませんでした。導入としてはちょっと長すぎると思います。
何を調べるのかを挙手で諮りますが、どれがよいか数学的に根拠があるわけではありません。子どもにとっては調べる必然もなく、この授業のねらいや目標もよくわかっていないので、ただ指示に従って活動しているだけです。「関係がよくわからない」「知りたい」といったこの後の活動やねらいにつながるような条件を足しておきたいところでした。

ここで、1段、2段、・・・に続いて突然x段という言葉が出てきます。調べるということと段の数をx段とおくこと必然性がありません。また、x段とした時点で関数であることを示唆していますが、多分に誘導的です。
「正方形の数」か「ヒゴの数」を選択させて「段の数」との関係を考えさせます。授業者は「作戦」という言葉で、関係をとらえる過程や方法を意識させようとしますが、子どもたちの手の動きは止まりません。
関係という言葉がどうにも明確にならないまま授業が進んでいきます。2つの数量の関係を式にすることがねらいなのであれば、関係を考えることには直接つながりません。それでも子どもたちは、活動しています。「関係を調べる」=「関係の式をつくる」という図式でできているのでしょう。
「どんなことが明らかになったか?」を書くように指示します。途中でまとめの例を出すのですが、どうにも意図がわかりません。視点や方向性を明確にしたいのなら、最初に例を示せばよいと思います。自由に書かせてそれらを価値付けしながら考えていくのであれば、例を示す必要はありません。途中で示すのなら、子どもたちが書いたことをいくつか発表させてカテゴライズしたり価値付けしたりして、視点を増やすといったやり方もあります。どこをねらっているのかよく見えませんでした。

多くの子どもは表から規則を調べていましたが、それだけでは根拠が不足しています。授業者はそのことには積極的に触れていませんでした。「よく見ると式の形が似ている」といった言葉を発しますが、子どもたちがそのように思ったのかどうかはわかりません。主観で話を進めていきます。授業者が説明をしている間も、子どもたちは説明の式をノートに写していました。
考え方によって、式の形が違ってきましたが、最終的には同じものだという確認の場面がなかったことも気になりました。子どもたちは疑問を持たなかったのでしょうか?授業を通じて疑問を持ち、それを解決していくといった形の授業にはなっていませんでした。授業者と子どもたちのつながりが感じられないのが残念でした。

最後に授業者は「関数の考えを使うと特徴がつかめる」とまとめましたが、「関数の考え」とは何だったか、どんな「特徴がつかめた」かは、全くわかりませんでした。

この授業のねらいを達成するのであれば、式を出すことにエネルギーを使うのではなく、式などを使って関係の特徴をたくさん表現させたいところでした。
例えば「段の数」と「正方形の数」の間にどんな関係があるかを問いかける。その関係にどんな特徴があるかを言わせる。その上で関数関係にあることを押さえて、関係をより明確にするにはどうすればいいのか考えさせる。「グラフ」「表」「式」といった言葉を子どもたちから出させた上で、それぞれがどのようになるか、そこから何が言えるかを考えさせる。こんな展開もあるでしょう。
また、特徴を意識させるのに、「正方形を2倍にするには、段の数は2倍くらいいるのかな?ヒゴの数は?」といった課題もあるかもしれません。

「特徴をつかむ」というキーワードを意識した授業展開についていろいろと考えることができました。よい学びのきっかけをいただけた授業でした。

この続きは明日の日記で。
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