動画の活用の注意点

ICT機器が普及してきて、動画をスクリーンに映して活用する場面によく出会います。わかりやすい教材もどん開発されて、ますます活用されるようになると思います。しかし動画であるがゆえに気をつけてほしいことがあります。

「オリオン座はなぜ冬の星座か」を考える理科の授業でのことです。
コンピュータのシミュレーションをつかって冬の夜空と夏の夜空を映し出し、オリオン座の見え方の違いを見つける場面でした。子どもたちが気づいたことを発表します。中には「おうし座はオリオン座のそばにあるけど、夏でも見える」という素晴らしことに気づく子がいました。オリオン座しか注目していないので、多くの子どもは気づいていません。静止した資料であれば、もう一度自分で確認することができますが、動画は流れてしまうので、確認することができません。動画をもとにでた意見は必ずもう一度該当箇所を映さなければ、確認できないのです。

動画は確認するのに再度再生する必要があります。したがって、あまり長いものは授業では扱いにくくなります。内容を記憶することも考えると授業で扱うものは1回数分にとどめておく必要があります。
また、動画の内容をもとにグループで話し合いをさせるのであれば、グループごとに再生できる環境を用意しなければ互いに確認して共有化できません。

動画は子どもたちの興味を引いたり、多くの情報を与えたりすることができますが、それゆえ注意すべき点もあります。動画の特性をうまく利用して、授業に幅を持たせてください。

「結果を利用する」と「考え方を利用する」

算数や数学で、問題を解くときの手がかりが見つからなくて子どもたちの手が止まる場面によく出会います。解き方の手順を覚えるばかりでは、見たことのない問題を解く力はなかなかつきません。どのようなことが大切になるのでしょう。

解き方を知らない問題を解くときの壁は最初の一手です。どこから手をつけたらよいかがわからないのです。最初の一手を考えるときの基本は、「結果を利用する」と「考え方を利用する」です。
例えば台形の面積の求め方を考えてみましょう。
「結果を利用する」のであれば、面積に関して知っている知識=結果を整理します。正方形、長方形、平行四辺形、三角形の面積の求め方は知っています。台形をなんとかこれらの形にできないかと考えることから出発します。
「考え方を利用する」のであれば、平行四辺形や三角形の面積を求めるときにやった作業を思い出します。図形を切ったり、移動させて面積が求められる形を作ることから出発します。
結果的には、同じような活動になりますが、この2つの視点を意識することで、見通しを持って取り組む力がつくようになります。台形を対角線で2つの三角形に分けて考えた場合でも、先に三角形を意識した子ども、とりあえず切ってみることから始めた子がいるはずです。どちらかが優れているというのではなく、子どもたちにそのこと明確に意識させることで、問題を解く力がついてくるのです。

「A君は斜めに切って考えたんだ」
「A君は、すぐに斜めに切ろうと思ったの」
「平行四辺形の時に切ったから」
「なるほどね。前にやったやり方を覚えていたんだ。偉いね」
「それで、最初から斜めに切ったの」
「斜めに切ったら。三角形ができたから」
「それってどういうこと」
「三角形だったらわかるから」
「何がわかるの」
「面積」
「みんな三角形の面積はわかる」
「底辺×高さ÷2」
「なるほど、三角形の面積の求め方は知っているもんね。知っていることをうまく使ったね」

子どもたちが意識せずに使ったことを、明確にすることで視点が育ってきます。
したがって、新しい課題に取り組むときは、「今まで学習したことで利用できそうなことは何かな?」「今までやったやり方で利用できそうなことはないかな?」このような問いかけが大切になってきます。
算数・数学に限らず、他の教科でも、結果とそれを導き出した考え方を意識することで子どもたちの考える力、問題解決力が高まっていくと思います。

結果の板書で何が起こるのか

前回のワンポイントアドバイス(何を板書するか)に関連して、結果だけを板書することについてもう少し考えてみたいと思います。

例えば、ワークシートの正解や数学の答えを板書した時、正解者にとっては答えの確認にしかなりません。すぐに○をつけて終わりです。一方手がつかなかった、不正解だった子どもは、黒板に結果しかないのでそれを見ても何故そうなったかはわかりません。この板書の内容を必要とする子どもが教室にいないのです。しかし、わからなかった子どもは不安なのでとりあえず板書を写します。写してもわからないのに。
そこで、このことに気づいている教師は説明を始めます。

正解を板書して、
「はい、こっちを見て」
「ノート取るのはやめて、あとで書く時間あげるから」
「説明するよ」
・・・
「はい、写していいよ」

結局、最後には板書を写す時間を確保しなければなりません。ところが正解だった子にとってはこの時間は写す必要がないので無駄になります。先生の話をちゃんと聞かずにノートを取った子どももすぐに終わります。多くの子どもが手持ちぶさたな状態にすぐになってしまいます。そこで教師は子どもをせかしたり、また写し終わっていない子どもがいても先に進んでしまったりします。写せなかった子は、次回からは説明中でも写すようになってしまいます。本当に説明を聞かなければいけない子が聞かない授業になっていきます。

板書と子どもの活動はうまく連動する必要があります。正解や結論、まとめが書かれた時点で子どもの思考は止まり作業に移ってしまいます。子どもの思考を促すような板書にしたいものです。

何を板書するか

若い先生から板書についての質問を受けることがよくあります。何を書くべきか。どういうこと気をつけたらいいのか。自分の中で板書をどう生かしていくのか明確になっていないようです。

板書を写すことが目的になってはいけないことは、以前にも書きました。(板書を写す意味
では、何をねらうとよいのでしょうか。大切なことは考えをまとめたり、整理することにつながることを板書で共有化することです。言いかえれば、結果ではなく考えるため起点を書くことです。こうすることで、板書を見て子どもたちが考えることができます。

「筆者はどう感じたのでしょうか。Aさん」
「さびしかったんだと思います」
「なるほど、それはどこでわかる」
「本文に○○○と書いてあります」
「なるほどね。みんな確認できたかな」
○○○を板書して、
「Aさんは、この文から筆者はさびしかったんだと思ったんだけど、この部分から筆者の気持ちを考えた人いるかな。今考えたことでもいいよ」
「つらい」
「のけ者にされている」
・・・
Aさんの意見を書かないことで、Aさんの考えに縛られずに他の子どもたちも考えることができます。子どもたちが考えたことを残したければ、後で板書すればよいのです。

「どうやって解いた。Bさん」
「点の座標を代入しました」
「なるほど。点の値を代入するってどういうこと」
「このグラフが点を通るから」
ここで、「点を通る」を板書して、
「ありがとう。みんな点を通るってどういうこと」
「入れたら成り立つ」
「式を満たす」
・・・
「そうか、だからBさんは点の座標の値を代入したんだ」

ここでは、代入という解くための手順をすぐに板書するのではなく、その根拠となった「点を通る」をまず板書することで、根拠となる知識の整理をしたのです。

結果や手順を見れば答えはわかります。しかし、どうやったらそこにたどり着くかはわかりません。考えるための起点やその過程を板書することで、考えるための糸口が見えてきます。子どもたちが考えることにつながる板書を目指してほしいと思います。

授業の進行を乱す子どもにどう対応する

授業中に教師や周りの気を引こうと声を出したり、ごそごそしたりする子どもがいます。無視をするとエスカレートするのでついつい教師はその子どもに関わってしまい、授業の流れが途切れたりします。このように授業の進行を乱す子どもにどのように対応すればよいのでしょうか。

子どもは教師の気を引きたいので、例え注意されても教師が関わってくれれば目的は達成されます。目的が達成されるので行動が強化されてしまいます。よい行動を取らないと目的が達成されないことを子どもに知らせることが大切です。

例えば、本人にわかるように指を口に当てて見せて静かにするように促します。それに気づいて子どもが口を閉じた瞬間に「あっ、静かにした。えらいね」とほめます。このようにして、子どもが静かにすればほめてくれることに気づけば、口に出してほめなくても目を合わせて笑顔で軽くうなずくだけで認めてもらえたとわかります。こうなれば授業の進行が乱されることはなくなります。子どもが静かにできるようになっても、ときどきはこの対応をして、静かにしていてもちゃんと見ているとメッセージを伝えるようにしておくことも大切です。

また、授業の内容にかかわることを言っているのであれば、

「いいこと言ったね。手を挙げてから言ってくれるかな」
「はい」
「じゃあ○○君、聞かせてくれる」
「・・・です」
「なるほど、いいこと言ってくれたね。ありがとう」

というように、正しい行動に矯正してからそれを認めるのです。

行動には目的があります。例え注意されても結果として目的が達成すれば子どもとしてはその行動は正しいのです。行動を変えるために注意をするのではなく、行動をよい方向に変化させて、その瞬間をとらえてほめるのです。ほめることでよい行動が強化されます。

授業の進行を乱す子どもは教師にとって悩みの種です。注意して行動を変えるのではなく、行動がよい方向に変わった瞬間にほめるという発想を持ってください。

指示を徹底させる

授業中に作業を始めると指示がわかっていない子どもがたくさんいて、教師が右往左往している場面がよくあります。こういうことが何回か起こると教師は、テンションを上げて説明をくどく行うようになります。受け身でいる時間が長いため、子どもたちのやる気がだんだん冷めていき、集中力も落ちて活動が停滞します。こういう悪い循環に入ると教師の指示は増えるが子どもは聞いていないという状態が慢性化します。子どもに指示を徹底させるにはどうすればよいのでしょうか。

一つは簡潔な指示で子どもが動けるように説明を工夫すること。(参照:ルール化する
もう一つは、指示の確認をきちんとすることです。この時、子どもの自主申告である挙手に頼っていては、きちんと確認はできません。

「・・・するんだよ。わかったかな。わかった人は手を挙げて」
「はーい」
「みんなわかったようだね。じゃあ始めてください」
・・・
「あれ、わかってない人が多いみたいだね。作業をやめて。もう一度説明するよ・・・」

子どもがわかっていると思っていても、実際に作業に入るとわかっていないことはよくあります。そこで、教師が再度丁寧に説明しても同じことの繰り返しです。余計にだれてしまうこともあります。確認とその徹底は子どもたちに活躍させることが大切です。

「・・・するんだよ。わかったかな。聞いてみようかな」
「Aさん。最初に何をすればいいのかな?」
「なんだっけ」
「困ったね。誰か助けてあげて。Bさん」
「・・・をします。なるほど。Cさんは」
「Bさんと同じです」
「Cさんの言葉で言ってくれる」
「・・・です」
「わかったかな。Aさん、言ってくれる」
「・・・です」
「いいね。じゃあ、次は・・・」
・・・
「それでは始めようか。わからなかったら周りの人に聞いてね」

子どもたちに指示内容を言わせることで受け身でなくなります。子どもの言葉で確認させることで指示がよく伝わります。また、わからない子も周りに聞きながら作業することできちんと参加できます。

指示を聞いていないな、伝わらないなと感じたら、声を大きくしたり、何度も説明するといった教師のテンションをあげることよりも、子どもたちを使って確認をするように意識してほしいと思います。

行事でつくる人間関係と授業でつくる人間関係

2学期になって子どもたちの表情がよくなってきた、自然に友だちと相談できるようになった。ところが、授業に関係ない無駄話が増えた、また、孤立する子どもが出てきた。こんな光景を目にすることがあります。なぜこのようなことが起こるのでしょう。

1学期は子どもたちの人間関係がまだうまくできていない、子ども同士の関わり合いが少ないと感じていたのに2学期になって雰囲気が変わってきた学校がいくつかありました。子どもの表情が柔らかくなって、関わり合いも増えているのです。先生の質問に対してまわりと相談する姿もよく見られます。先生方の授業スタイルが変わってきた成果が出てきたのかと思いました。ところが、何か違うのです。子どもたちは、友だちに答えを聞いたり写すだけで解き方や理由を聞こうとしません。自分でもう一度考えようともしません。そのかかわり、そのまま授業に関係ないことを話し出すのです。ニコニコと楽しそうにしていますが、これでは困ります。
何回か訪問していると、このような関わり方が増えているだけでなく、まったく友だちと関わらずに孤立している子が目立ってきたことに気づきました。学級の中に大きな集団がつくられ、それに入れない子どもができているのです。2学期は行事がたくさんあります。どうやらこの状況は行事を通じて作られたものだったのです。

行事は集団で一つのことを成し遂げていく活動です。人と関わりながら、自分の役割をはたし、時には自分を押さえて集団の決めたことに従います。行事がうまくいくとその達成感とともに子どもたちに集団へのよい帰属意識が生まれ、友だちとも仲良くなれます。ところが、その延長上に生まれるかかわりには友だちとの世間話や無駄話などもあります。これがそのまま授業に持ち込まれてしまっているのです。また、一つの方向に向かっていくときに、うまくその流れに入れない子どもは集団から離れやすくなります。強力に一つの方向に持っていこうとするときほど、入れない子どもが増える傾向があるのです。

一方授業では、課題を解決するために互いの考えを聞きあったり、認めあったりします。ここでは、無駄話の入る余地はないはずです。また、無理に友だちの考えに従う必要はありません。グループでの話し合いは互いの考え深めるため行うのであって、答えを一つに決める必要はないのです。大切なのは互いに相手の考えを受容し認め合うことです。

どちらの人間関係もとても大切なことです。注意しなければならないのはどちらか一方でよいと思ってしまうことです。行事でできた人間関係をうまく生かして子ども同士が学び合う雰囲気を作る。行事でうまく集団には入れなかった子どもも授業では周りと関われる。こういったことが大切なのです。そのためにも、行事でつくる人間関係と授業でつくる人間関係の違いを意識してほしいと思います。

大きな声がでればいいのか

教師の言葉や発音を子どもたちに繰り返し練習させる場面があります。全員がしっかり声を出している姿は気持ちのいいものです。単語の発音練習のように覚えたことを定着させるための訓練だけでなく、動詞や主語を変えて文をつくる練習のように考える場面でもよく見かける場面です。考える要素が強い一斉練習のときに注意してほしいことがあります。

「be going to を使う練習をしましょう。I play the piano.」
「I am going to play the piano.」
「声が小さいね。I am going to play the piano.」
「I am going to play the piano.」
「声がしっかり出てきたね。はいもう一度。I am going to play the piano.」

子どもたちが大きな声を出せるのは自信があるときです。ですから、教師が正解を言ってくれたあとでは、しっかり声が出ます。しかし、きちんと理解できているかどうかは疑問があります。耳から聞いた教師の言葉をそのまま言っているだけの子もいるからです。教師が正解を言わなくて全員が一斉に大きな声で正しく言えるときは定着できているときですが、意外と難しいものです。そこで、すぐに答えを言って全員に大きな声を出させて練習させようとするのです。

ポイントの一つは、子どもが考える時間を少し取ることです。フラッシュカードを使った単語練習のように、すぐに反応を求めるとまだ考えているのに答えを言わなくてはなりません。力のある子だけで進んでしまいます。質問の後に少し間を取り、それから答えを言うように合図をします。子どもの理解が進めば間を短くしていけばよいのです。そこで大きな声が出ないようであれば、オープンカンニングを使えばよいのです。
また、何人かを指名してそれから全員に答えさせる方法もあります。教師の正解と違って、子どもは参考にしながら考え続けます。
最後に全員が大きな声で言えるようになるまで繰り返してください。そして、何人かを指名してきちんと理解できているか確認してください。

子どもが一斉に大きな声で答えているから理解できている、定着しているとは限りません。子どもが考え、理解し、定着していくための過程を意識した活動をしてほしいと思います。

子どもの発言量を増やす

教師が質問するとなかなか口を開いてくれない子どもも、友だちから聞かれると一生懸命答えようとします。このことから子どもの発言量を増やすことを考えてみたいと思います。

基本的に教師は答えを知っている人です。ある意味教室では絶対者です。その教師に答えを問われるということは、自分の発言を間違っているかどうか高いところか判定されることになります。間違いと言われたくないので、どうしても発言しづらくなります。よほど答えに自信がない限りプレッシャーがかかってくるのです。
一方友だちは、対等な関係なので意見が言いやすいのです。ですからペアやグループで相談することは子どもの発言を増やすための確実な方法なのです。

このとき注意しなければいけないのは、友だちの発言に否定的なことを言わない雰囲気をつくることです。互いに認め合える状態は子どもたちだけではつくれません。教師が子どもとの日ごろのやり取りの中で受容的な態度を取っていることが大切です。子どもは教師の鏡なのです。
また、できる子がグループ全体を仕切ってしまわないような注意も必要です。できる子が絶対者になってしまうと、他の子は引いてしまいます。できる子ほど待てる、聞ける力をつけてほしいのです。
司会などの役割は決めずに、話すことより聞くことが大切であると常に伝え、相手の顔を見て、うなずきながら聞くことなどを指導することが大切です。

では、全体指導の場で発言を増やすにはどうすればよいのでしょうか。
子どもの発言を引き出すにはで述べたことのほか、正解、不正解を判断しない問いかけが有効です。

「考えたことを教えて」
「○○と思った」
「なるほど、同じように考えた人いるかな。ああ何人かいるね」
「それで、そのあとどうなった」
・・・

「どんなことをやってみた」
「△△をやってみた」
「なるほど、それでどんなことがわかった」
・・・

子どもの発言量を増やすためには、安心して話せる状況が必要です。教師と子ども、子ども同士、いずれの場合も否定的な言葉がでない、互いの発言を聞き合える受容的な雰囲気作りを心掛けてほしいと思います。

答え合わせをどうする

問題を解いた後は答え合わせをするのが普通ですが、漫然と正解の確認をしているだけのこともよくあります。答え合わせは何を意識すべきなのかを考えてみたいと思います。

まず一番に意識してほしいのは、どのようにすればできなかった子どもができるようになるのかということです。

知識の確認や復習の問題は覚えているかどうかの問題なので、正解を示せばよいように思います。しかし、単に正解を示してそれを写させてもその知識は定着しません。既習事項であれば教科書やノートに答えがあるはずですから、自分で調べればよいのです。もし答え確認したければ、まずどこで習ったか、どこに書いてあるかを発表させて自分で確認させるのです。こうすることで、より定着を図ることができます。

「今から復習をしよう。どうしてもわからなかったら教科書やノートを見ていいからね」
・・・
「これはどこでやったか教えてくれる」
「○○です」
「わからなかった人、見つかったかな」

教科書や資料を調べるような問題も同様に、答えでなくどこで見つけたかを発表させればよいのです。

では、知識ではなく、考え方や途中が大切な問題の場合はどうでしょう。
子どもに正解を言わせて教師、または子どもが説明するパターンが多いと思います。答えや説明を板書することも多いはずです。このとき、これが正解ということを先に示すと、正解した子どもは安心して集中力をなくします。一方間違っていた子どもは、きちんと正解をノートに写したいので、説明を聞くよりは板書を写すことの方に意識がいってしまいます。正解した子もできなかった子もきちんと参加して学びあえるようにする必要があります。

「Aさん、考えを教えて」
「・・・」
「なるほどね。Aさんと考えが似ているという人いる? じゃあBさんの考えを聞かせて」
「・・・」
「なるほど。二人の考えを聞いて納得した人」
「じゃあCさん黒板に書いてくれるかな。みんなは自分でノートに書いてね」
・・・

このように、正解した子どもの活躍の場を増やすと同時に、できなかった子が友だちの考えを聞いて再度挑戦できるような時間を確保することがポイントです。できていない子どもが多いようであれば、いきなり答え合わせをせず、途中で一旦作業を止めて、ヒントになることを子どもから引き出しておくことも有効です。また、板書は答えだけでなく、答えを導くための過程や視点が残されていることが大切です。正解だけが書かれたノートを見てもできるようにはならないからです。

正解を示して説明すればできるようになるわけではありません。答え合わせは、できた子どもを活躍させながら、どういう活動を加えればできなかった子ができるようになるかを工夫してほしいと思います。

メモを取る

授業中に子どもがメモを取る姿を見ることがほとんどありません。教師が大切なことを板書してくれるので、それを写しておけば困らないからです。
しかし、子どもたちに自分で整理し、まとめる力をつけるためにはメモを取る力をつけることが必要です。子どもたちにメモをとる力をつけるためにどのようにすればよいのでしょうか。

まずメモをとる必然性を作る必要があります。いろいろな考えや意見を発表させてその結果をまとめていく。このような作業ではメモを取ることは大切になります。
しかし、突然メモを取るように言ってもすぐにできるわけではありません。そこで、黒板を使って教師がメモをとります。

「今の意見、ここがよかったね。メモしておこう」

「今の意見を聞いて、なるほどと思ったところはどこか聞かせて」
「○○です」
「ありがとう。ここにメモしておくね」

このメモを使ってまとめていくことで、メモの取り方とその使い方を教えていくのです。
メモの取り方がわかってくれば、今度は子どもにメモをとらせるようにします。

「友だちの意見を聞いて、大切なことはメモしてね」
・・・
「どんなことをメモしたか聞かせて。なるほどと思ったらメモに付け加えていいよ」
・・・

ここで発表されたメモの内容を板書して全体でまとめの作業に入ってもいいですし、個人やグループでまとめの作業をして発表させるのもいいでしょう。

いつも教師が整理してまとめた板書を写すのではなく、自分で整理する力をつけることは大切です。メモを取る力をつけることはそのための第一歩なのです。

言語活動を支える力をつける

指導要領の改定で、言語活動の充実が言われるようになりました。言語活動にはコミュニケーションと言語化による思考の整理・深化という2つの側面があると思います。ここで、忘れてはならないのが子どもたちの語彙力です。いくら理解しようとしても、いくら伝えたいことがあっても言葉の意味がわからなければ話になりません。語彙力をつけるためにどのようなことに気をつければよいのでしょうか。

国語の時間にあらかじめわからない言葉の意味を調べることがあります。子どもたちは辞書で調べた言葉をノートにきちんと写しています。にもかかわらず、その言葉が使われている文の意味が理解できないことがよくあります。なぜこんなことが起こるのでしょう。
これは、子どもたちがもとの文に戻って言葉の意味を理解しようとせず、単に辞書に書かれていることを写しているからなのです。言葉によっては複数の意味が辞書に載っていますが、どの意味で使われているのかを考えずに最初に書いてある説明を写していることもあります。これでは語彙力はつきません。一問一答の「○○はどういう意味ですか」には答えられても、実際に使うことはできないのです。

わからない言葉に出会ったときには、前後関係からどういう意味か想像し、そのうえで調べることが大切です。こうすることで、その使われ方も含めて理解できます。ですから、わからない言葉に線を引いて、後からまとめて調べたり、教師があらかじめワークシートに言葉を書きだして調べさせるようなやり方は、必ず本文に戻って意味を確認するというステップを入れる必要があります。

語彙力をつけるためには、生きた言葉に出会うことです。教師は子どもたちにわかる言葉で話すことをいつも意識しています。しかし、時には子どもたちが知らない言葉であってもその場面にふさわしい言葉を選んで使うことが大切です。子どもたちがその状況から言葉の意味を自然に理解できることもよくあります。あとから教師が説明したり、時には話を中断して辞書を引かせることもよいでしょう。国語の時間だけでなく、すべての時間で子どもたちの語彙力を高めることを意識してほしいと思います。

オープンカンニングの発想

フラッシュカードを使って、一斉に発音練習をする。教師の後に続いて全員で音読する。学級全体で一斉に同じことをする場面がよくあります。このような場面では、基本的に全員が答えられる、参加できるような活動であることが多いように思います。
ところが予定と違ってぱらぱらとしか反応が返ってこないため、教師が戸惑ってしまうのを目にすることがあります。どのように対応すればよいのでしょうか?

例えば英語で問いかけて、答えがほとんど返ってこなかったような場合、教師がやさしい言葉に言い換えたり、質問を日本語に変えたりします。
こういう対応をすると、

「今の質問はわからなくてもよかったんだ」
「わからないときは教師がフォローしてくれる」

と思ってしまいます。
また、真剣に考えている子どもは情報が増えるのでかえって混乱することもあります。

こういうときは、ゆっくりと同じ質問を繰り返します。ほんの数人でも正しく答えてくれれば、教師は大きくうなずきこの答えでよいことを示します。もし違っていれば、ゆっくり首を横にふってもう一度考えることを促します。これを何度か繰り返すとだんだん声が大きくなり最後には全員がきちんと答えるようになります。そこで、次に進めばよいのです。

問題に関するヒントを与えるよりは、考えることに集中させる、まわりの声に耳を傾けさせることの方が効果的です。友だちの答えを聞いて、ああこう答えればいいんだとわかれば、教師に教えられたのではなく自分で解決したと思います。
一斉に活動させる場面では、このオープンカンニングの発想をうまく使ってほしいと思います。

後だしじゃんけんをしない

資料をもとに考えさせる場面で、用意した資料を全部見せずに、決定的な資料は教師が解説する時の根拠としてとっておくことがあります。見せないことで、子どもたちの考えが広がることをねらっているのですが、実際にはどうなのでしょうか。

社会科の授業の例です。明治政府が基盤を固めていく過程の学習で、鉄道敷設の苦労から当時の政府の状況を考えさせる場面です。
教師は、鉄道の路線図や錦絵を資料として与え、子どもたちから鉄道が海を通っていること気づかせました。そこで、「なぜ、わざわざ海を走らせたのか」と質問をして、グループで考えさせました。

景色がいいから
鉄道を通す場所がなかった
土地を買収できなかった
・・・

いろいろな意見が出ますが、そこから先へは進みません。資料集には根拠となる資料がなかったし、また他の資料を探す手段も用意されていなかったのです。

グループ活動の後、話し合いの結果を発表させますが、発表を聞いて「なるほど」「そういう考えもある」とは思っても、結論づけることはできません。そこで教師が、明治政府の信用や威光がないため、土地を売ってもらえなかった。そのために海を通した。資金もないため、鉄道敷設のために外国から借金をしたことを解説し、最後に、当時の海沿いの土地の写真を資料として見せました。海沿いに小さな家がたくさん建っている写真です。この写真を見れば土地を買収する必要があることが一目でわかるすばらしい資料です。授業者は苦労してこの資料を見つけたそうです。ですから最後に子どもたちを納得させる資料として使いたかったのでしょう。

子どもたちは、納得するというより、

「えっ、そんな資料があるなら先に見せてくれればよかったのに」

と釈然としない様子でした。後だしじゃんけんをされたような気持ちになったのでしょう。

しかし、子どもたちにその資料を与えていればどうだったでしょう。買収できなかったことにすぐに気づき、本時の目標である当時の明治政府の状況を考えることに自然につながったはずです。
最初から与えては考えが広まらないと思うのであれば、途中で子どもたちに「どんな資料がほしい」と聞いてやればよいでしょう。そこで、「じゃあ、こんな資料があるけどどうかな」といって与えればよいのです。

教師だけが根拠となる資料を持っていて、それを根拠として解説されると、せっかく子どもたちが自分で考えようとしていても、最後は教師の説明を聞けばいいのだと受身になってしまいます。
必要な資料は子どもたちに与えて話し合い、子どもと一緒に結論にたどりつくようにしてほしいと思います。

必然性のある場面をどうつくる

子どもの学習意欲を高めるための大切な要素として、学ぶ必然性があります。学ぶことが役に立つ、必要であると感じれば、当然一生懸命課題に取り組むからです。では、学ぶ必然性のある場面をつくるには、どういうことを意識すればよいのでしょうか。

基本はゴールが明確であることです。ゴールにたどり着くために必要であることが学ぶ必然性につながります。

色の塗り方を工夫して絵を描くことを考えてみましょう。「今日は○○の絵を描く」だけではゴールはまだ明確ではありません。今までの子どもの作品を見せる、その絵のよさを子どもが感じる、あんな絵が描きたいと思う。こういう過程が必要になります。その過程で「色の塗り方に工夫がされている」ということに気づかせればよいのです。

次に意識したいのは、学んだこととそれを活かす場面はできるだけ近接させるということです。

先ほどの絵の例で、下絵を描いてから色を塗る作業に入るのであれば、色の塗り方の工夫を具体的に考えさせるのは、下絵を描いた後がよいということです。
下絵も描いていない状態で自分がどんな絵を描くかも明確でなければ、先輩の作品を見て色の塗り方の工夫について考えても、その必要性をあまり感じません。「さあ今からどんな風に色を塗ろう」と思っているときであれば、先輩の工夫から学ぶことに必然性があります。

「下絵が描けた人は、色を塗ってもらいます。塗り始める前にもう一度先輩の作品を見て、ここがいいなと思うところがあったら真似していいからね。どんなところを真似したかあとで教えてね」

このような指示を出すことで、集中して先輩の絵から学びます。

子どもたちが学ぶ必然性をどうすればより感じることができるか意識して、授業をつくっていただきたいと思います。

一人ひとりの活動量を確保する

挙手をした子どもを教師が指名する。子どもの発言を受けて次の発問をする。この連続で進む授業は、子どもが活躍するよい授業に思えます。ところが、実際に発言しているこどもはごく一部に限られていて、他の多くの子どもは受身であったり、全く話についていけてなかったりします。貴重な授業時間を無駄にしています。授業では、一人ひとりの活動量をきちんと確保する必要があるのです。

一人ひとりが話を聞いて考えていれば、それはきちんと活動していることになります。しかし、そればかりでは集中力が続きません。自分の考えを発言したり、主体的に参加する必要があります。しかし、全体の場では、同時に一人しか発言できません。子どもたちが主体的に活動するには効率が悪いのです。

個人作業をそのための時間ととらえることもできますが、わからないとそこで止まってしまいますし、自分の考えを外化してそれに対する他者の考えを聞くこともできません。活動の幅が狭いのです。

・個人作業でも、わからなければ友だちに聞く。聞かれたらきちんと説明する。
・考えを隣同士で言いあう。周りの人と相談する。
・グループで相談する。

このような時間を取り入れることで一人ひとりの活動量が確保でき、授業の密度が上がります。子どもたち一人ひとりに目を向け、きちんと活動できているかを意識するようにしてほしいと思います。

評価の観点を具体的に示しておく

子どもたちの活動の後、教師がほめることはごく普通の光景だと思います。ところがそのほめる観点を事前に具体的に示さずに活動していることがよくあります。

「A役とB役にわかれて、二人で読みあってください。頑張って読んでくださいね」
・・・
「はい、みんな頑張って読んでくれたね。○○さんは、身振りもつけてくれてとてもよく頑張ったね」

この場合、頑張ることは具体的にどういうことか示されていません。たまたま身振りをつけた子がいたので、それを頑張ったこととして教師はほめたわけです。
「身振りをつければほめてもらえるのなら、最初からそう言ってくれれば意識したのに」と思う子どもが出てきます。頑張ることはどういうことか明確でないために評価に対する納得感がありません。活動のねらいにつながることを具体的な目標として事前に伝える必要があります。

本当に教師が身振りをつけるような工夫をさせたいのであれば、そのことを最初に示しておきます。

「A役とB役にわかれて、二人で読みあってください。その人の気持ちが伝わるような工夫をして読んでくださいね」
・・・
「○○さんは、身振りもつけてくれて工夫してくれたね。△△さんは、声の大きさを変えて読んでくれていたね。みんな工夫してくれていたね。ペアの人がどんな工夫をしていたか、気づいたことを教えてくれる?」

子どもたちに活動させる時は、ねらいを意識させる必要があります。ほめることは、その評価です。事前にその観点を明確にすることで、子どもたちが意欲的に取り組み、意識して活動してくれます。その結果、ほめることが子どもたちのモチベーションアップにもつながっていくのです。

資料集をどう活用する

教科によっては教科書以外に資料集を持たせていることがあります。資料集を有効に活用するにはどんなことを意識すればよいのでしょうか。

資料集の活用には、次の3つのステップがあります。

・必要な資料を見つける
・資料を読み取る
・読み取った内容をもとに考える

注意してほしいのは、活動中に途中のステップで止まっている子がいるかどうかです。資料を見つけることができていなかったり、資料を読み取れていないのに、全体の場で結論を聞かされても話し合いに参加できません。
そこで、いきなり結論を発表させるのではなく、ステップごとに確認をすることも必要になります。

「どんな資料が見つかったか教えて」
「この資料からどんなことがいえる」

このようにすることで、途中で止まっている子ども次のステップに移れます。
また、考えることに時間を取りたいのであれば、ステップを飛ばして、利用する資料を最初から指定したり、全体で資料の内容を確認しておくことも有効です。

もうひとつ大切にしてほしいのは、考えを発表する場面で、必ず根拠とした資料を聞くことです。気づかなかった子は、その資料と出会うことができますし、気づいても違うことを考えた子は、別の視点に出会えます。

「・・・だと思います」
「なるほど、それはどの資料でわかったのか教えてくれる」
「○○です」
「Aさんは、○○から・・・がわかったといってくれたけど、なるほどと思った」
・・・
「じゃあ、私は○○から違うことを思ったという人いるかな」

このようにすることで、資料をもとに子どもたちの考えが深まり、つながっていきます。

資料集には子どもの考えを広げたり深めるための情報がたくさんあります。活用のステップを意識して、大いに活用してもらいたいと思います。

漫然と読ませない工夫

授業中、教科書や資料を読むときがあります。声に出す、黙読する、一斉に、個別に・・・。「読む」場面はとても多いと思います。ところがこのような場面で気になるのは、漫然と文字を追っているだけ、声に出しているだけに見える子どもが多いことです。

子どもが活動する時には、目標やその評価を意識することが大切です。「読む」場面でも、何を目標にして読むかを明確にして、その評価をすることが大切になります。

例えば、全員で一斉に読むときは、「大きな声で読もう」「主人公の気持ちになって読もう」といった指示があります。教師も指示した以上は、きちんと評価する必要があります。大きな声で読んでいるかどうかを評価するのであれば、声だけではわかりにくいので、口元が見えるように顔をあげて読ませるようするなどの工夫も必要です。主人公の気持ちになることを求めるのであれば、読む前に主人公の気持ちを確認しておくことも大切です。一度普通に読んだあとに、主人公の気持ちになってもう一度読ませ、「今、主人公の気持ちになって読んでもらったけど、どんな気持ちになって読んでくれたのかな」と聞くことから、本文の読み取りを始めるようなやり方もあります。
このような指示と評価を教師が意識することでより積極的に取り組むようになります。

より注意が必要なのは、黙読するときや友だちが読んでいるのを聞くときです。自分が声をださないので、どうしても漫然と文字を目で追ってしまうのです。こういうときは、本文に線を引きながら読ませることが効果的です。

「わからない言葉があったら線を引いて」
「主人公の気持ちがわかる表現に線を引いて」
「資料で、・・・がわかるところに線を引いて」

このように指示をすることで、子どもの集中度は間違いなく上がりますし、教師も子どもの手の動きをみることで評価がしやすくなります。
読んだ後は、自分で調べる、友だちに教えてもらう、どこに線を引いたか教え合う、その理由を聞きあう、学級全体で線を引いたことを共有する。このような活動をすることで、より「読む」ことに意欲的になっていきます。

「読む」場面では、目標と評価を明確にし、そのことを読む前と後できちんと確認する。そして、できれば、読み取ったこと、意識したことをその後の授業展開に生かす工夫をすることで、より集中して「読む」ことができるようになると思います。

ルール化する

子どもに何か活動させる時、事前に指示をたくさんすることがあります。

「グループの全員が必ず意見を言ってね」
「わからないことは聞くように」
・・・
子どもたちは課題に取り組もうと意欲があがっているのに、事前の指示が多すぎて意欲がそがれてしまうこともあります。このような毎回の活動に共通するような指示はできるだけ少なくして、その日の課題に関することを中心に簡潔に指示をする必要があります。とはいえ、毎回確認しておかないと徹底できないようで、不安でもあります。
そこで、このようないつも共通する活動の進め方をルールにするのです。「話し合いのルール」「実験のルール」・・・。最初のうちは詳しく説明、指示が必要ですが、ルールにしてしまえば定着させやすくなります。教室の前に貼っておいて、いつでも確認できるようにするのもいいでしょう。

「話し合いのルールはなんだった。思い出せない人は前を見て確認しよう」

といった指示で済みます。
また、課題ができた子に対する次の指示を、活動中に口頭ですることもよくありますが、まだ作業中の子は自分の課題に集中しているので指示をきちんとは聞きません。そこで、「できた人への指示は黒板に書いておく」というルールにしておけば、できた子は黒板を見て次の課題に取り組むので、遊ぶこともありません。

日ごろの指示で、教室のルールにできそうなものは、ルール化するとよいと思います。
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