「学校、家庭、地域の連携」について講演

昨日は小中学校の保護者対象に「子どもたちの健やかな成長を目指して」と題して、学校、家庭、地域の連携についてお話をさせていただきました。

はじめに、健やかに育つとは具体的にどういうことか何人かの方に質問しました。「元気」「笑顔」「楽しい」といったキーワードと「体」「心」というキーワードが出てきました。子どもたちが元気に笑顔で心身ともに健康であってほしいということです。
子どもたちのそのように育ってほしいと考えたとき、学校、家庭、地域にはそれぞれの役割があり、互いに連携を取ることが大切です。そのとき、大切にしてほしいことは、何かをするから、このことを「手伝ってほしい」と、お願いするのではなく、子どもたちにこのような「成長をしてほしい」、そのために「手伝ってほしい」と目指すものを共有することです。目指す子どもの姿を共有し、また、その結果、子どもがどのような姿を見せてくれたかきちんと伝えあう。こういう姿勢が必要なのです。

家庭の役割としてお願いしたのが、「子どもの居場所をつくる」「存在を無条件に認めてあげる」ことです。「あなたはいい子だからおかあさんは大好き」「勉強を頑張っているから」「やさしいから」といった条件をつけるのではなく、何があっても大好き、愛しているというメッセージを送ってほしいのです。子どもに自己有用感を持たせるためにも、家庭での役割を与えて、「ありがとう」という言葉を子どもにかけてほしいのです。
学校の役割は、子どもを次代の社会の担い手に育てるための、知識や力を獲得させることです。
地域の役割は、子どもたちを取り巻く身近な社会として、子どもを見守り、社会的な成長の場を与えることです。

地域との連携という意味では、子どもに役割を与えること、活躍できるチャンスを与えること大切にしてほしいことを伝えました。観客席から舞台に上げるのです。
具体的には、たとえばイベントであれば、お客から、企画や運営する側に参加させるということです。子どもたちに、大人と一緒に何かをつくり上げる、大人から感謝される、時には大人から叱られる。こういう経験を積ませてほしいのです。子どもに対して上から目線ではなく、正面から向き合い、時にはぶつかりあい、一緒に悩み苦しみ、一緒に感動する。そういう場をつくってほしいのです。こういうことが、子どもたちに自己有用感を持たせ、成長するきっかけを与えるのです。

私の見てきた取り組みの具体的な話も交えながら、このようなことをお伝えしました。

大変熱心に聞いていただけ、質問もたくさんいただきました。また、個別に教師にかかわることも相談されました。若い教師が保護者とうまくコミュニケーションをとれていないと感じるものと学級規律をきちんと確立するためのスキルがないと感じるものでした。保護者ではなく、実際にその教師とお話しすることができれば解決が早い内容でしたが、それもかないません。保護者の立場からできることをアドバイスさせていただきました。私にとっても保護者の視点からの相談は新鮮で、とても勉強になりました。

今回の話が、この学区の子どもたちを育てる取り組みに少しでも参考になればと思います。私にとっても、とても楽しく、勉強になる時間をでした。このような機会をいただけたことに感謝です。

「学級経営のポイント」について講演

昨日は中学校で「学級経営のポイント」についてお話をさせていただきました。特に学級の状態の「チェックと修正」を中心に話しましたが、たまたま5月の連休明けという大事なチェック時期ですので、例としてこの時期にすべきチェックをリストアップしてみました。

・基本的生活習慣の確立(特に1年生)
 学習と部活動の両立
 学習習慣の確立
 欠席・遅刻・早退

・人間関係(友人関係の再構築の時期)
 どういうグループがあるか
 学級内の友人関係と他の学級との友人関係
 孤立していないか

・学習規律の確立(授業態度)
 集中力・指示への反応
 聞く姿勢(教師・友だち)

・生活規律の確立
 時間を守れるか
 規則を守れるか
 掃除がしっかりやれているか

・進路指導面(特に3年)
 真剣に向き合えているか
 不安を感じていないか

・・・

こういうチェック項目を時期ごとにリストアップするのは個人では意外と大変かもしれません。学年や学校全体で時期ごとのチェック項目をつくっておくとよいと思います。

チェックの方法ですが、大きく3つあると思います。

・毎日の観察
 定点チェック
  欠席・遅刻・早退
  下駄箱
  ロッカー
  トイレのスリッパ
  始業前のようす
  ・・・
 声かけ
 空き時間に他の教科の授業を覗く
 他の先生からの情報(授業・部活動・委員会活動etc.)

・データ
 成績
  絶対と相対
  平均より度数分布
  個人の変化
 アンケート
  平均と個人の差を見る
  同じ項目で変化を見る
  相談したいことがあるかを問う
 生活記録・学習記録
  変化に注目

・面接・面談
 個別
  個人カルテをつくっておく
 グループ
 保護者

特に観察は、意識していないことは目に入らないので、何を見るかを明確にしておくことが大切です。また、ベテランと若手の差のつきやすいところでもあります。観察するには、比較の基準を持つことが大切ですが、多くの学級を見てきたベテランは色々な学級の状態を知っているので、しっかりとした基準が持てているのです。経験の少ない若手は、他の学級のようすを学級経営の視点で観察し、その変化を見ることで経験値を増やしてほしいと思います。よい方向に変化していれば、間違いなく担任の働きかけがあったはずです。そこを知ることで観察のポイントと対応が明確になります。それがわからないときは思い切ってその担任に質問してみるとよいでしょう。きっと快く教えてくれるはずです。

チェックの結果、問題点が明らかになれば修正が必要になります。その視点の一つが、個の問題であるか、全体の問題であるかです(個の問題か全体の問題か意識する参照)。

要所要所で学級の状態をチェックし、早めに対応することが学級経営のポイントになります。
今回、若手だけでなく、ベテラン(特に女性)の方にも熱心に聞いていただけました。私の話がこれからの学級経営に少しでもお役に立てばうれしく思います。

愛される学校づくり研究会に参加

先週末は愛される学校づくり研究会に参加しました。今年度第1回ということで、新しい会員も増えて盛会でした。
来年度のフォーラムの概要も決定し、皆様にお知らせできるようになりました。この件に関しては別記事でお知らせします。

メインのテーマは「4月の学校づくり」ということで、今年度異動で新しい学校に赴任された校長のこの1月の学校経営についての報告をきっかけに話が広がっていきました。
お話をうかがっていて、どの校長も学校HP(ホームページ)をコミュニケーションツールとしてうまく活かしていることがよくわかりました。
新しい校長が赴任して学校が変わろうとしていると保護者が一番に感じるのが、学校HPのリニューアルです。年度変わりのこの時期、保護者や地域の方が学校HPにアクセスする機会が増えます。このときにHPがリニューアルされ、新しい発信があり、記事のカテゴリーが変化したり増えたりしていると、新校長の学校経営の姿勢が強く印象付けられます。どの校長もそのことを意識して、素早くリニューアルしていました。
学校HPのシステムは更新が簡単にできるものが普及してきましたが、全体のリニューアルが学校で簡単にできるということも大切な要素だと強く感じました。何日もかかったり、業者にお願いしなければならなかったりするようでは大切な時期を逃してしまいます。今回の新校長の動きは、簡単にリニューアルできるシステムの普及と無縁ではないと思いました。

HPの学校経営への活かし方という視点でみると、とりあえず学校で起こっていることを毎日記事にして発信するというものから、ずいぶん進化してきていると感じました。HPでの発信が、保護者や地域だけでなく、教員や児童生徒も意識した戦略的なものになってきているのです。
そのことを少し説明しましょう。

・校長が目指す学校の姿を切り取ったものになっている。
たとえば子どもたちが落ち着いて学び合っている学校を目指すのであれば、子どもたちが柔らかい表情で友だちの考えを聞いている姿を写真に撮る。そして、その場面のどこが素晴らしいかを具体的に解説します。
これは、保護者や地域の方に学校のよい姿を伝えて安心してもらうだけでなく、教師にとっても強いメッセージとなります。今学校で目指しているものは、こういう姿となって表れると伝えることで、個々の教師の授業での目標が明確になります。記事に取り上げられた教師には励みになります。こういう記事が積み重なっていくことで目指す姿に近づいていくのです。
そうはいってもなかなかそういう場面に出会えないとおっしゃる方があるかもしれません。たとえ一瞬でもそのような状態があればその瞬間を切り取ることで伝えることができます。いいとこを見つける視点で校内をまわることがとても大切です。

・子どもに提示した行動目標が達成できている場面を記事にしている。
4月の式等で、子どもたちに行動目標を提示している校長は多いと思います。たとえば「凡事徹底」という目標を提示したとします。校長が何度も話をすればその言葉と意味はわかるかもしれません。しかし、それが具体的にどのような行動かを伝えるのはなかなか簡単ではありません。それをHP利用しておこなうのです。お昼休みにトイレのスリッパがきちんと整頓されていればそれを「凡事徹底」というカテゴリーの記事にする。学級全員が名札を忘れずにつけていれば、そのことを記事にする。その上で、職員に「今日はこのようなことを記事にしました。子どもたちをほめてください」と伝えるのです。こうすることで職員も「凡事徹底」を意識しますし、子どもたちをほめることで教師と子どもの人間関係をよくするきっかけになります。こういうことを積み重ねることで、子どもたちもどのような行動をすればよいのかわかってきます。もちろん、地域や保護者の方にも子どもたちのよさを伝えることができます。学校を見る目がポジティブに変わり、教師や子どもが自信を持つようにもなっていきます。

今年度このような戦略的なHPが私の周りで増えたのは、間違いなくこの研究会が影響しています。今回よくわかったことは、皆さんが互いの学校HPを見合ってしっかり研究していることです。研究会の場だけでなく、日ごろから互いの学校経営を学び合っているのです。そのことが、学校HPにも強く表れたのです。今回も多くのことを学べた研究会でした。皆さんに感謝です。

地域と学校の連携に関する講座の打合せ

昨日は、生涯学習センター主催の講座の打ち合わせに出かけてきました。中学校区の保護者を対象にした学校・家庭・地域の連携に関する講座です。通常、生涯学習センターは学校、PTAと保護者との橋渡しが中心で、細かい打ち合わせにはかかわらないのですが、今回の講座は特別なもので、区内の中学校をモデル的に1校選んで、5回の講座を総合的にプロデュースするそうです。

講座の内容は、情報モラル、思春期の子どもとの接し方、コミュニケーションスキル、防災など多岐にわたっています。私はその第1回ということで、ガイダンス的に学校、保護者、地域が連携して子どもを育てることの意味をお話します。とはいえ、あまり抽象論になってもいけないので、できるだけ具体例をあげながら、自分の子どものことだけでなく、地域の子どもを自分たちで育てるという意識を持っていただけるような話をしたいとお伝えしました。
やらされている感の強い活動ではなく、自分たちが充実感、有用感をもてるような活動にするためのヒントとなるような話しができればと思っています。
幸いにも、私がかかわっている学校の中には、地域と学校が一体となって積極的に子どもを育てているところがあります。この学校で起こってきたことを伝えることで、地域と学校の連携のポイントを理解していただけると思います。

今回の講座のように、行政が地域と学校の連携に対して積極的な支援活動をおこなうようになってきました。子育てを学校や保護者だけの問題でなく、地域社会の問題としてとらえるようになってきた証拠だと思います。とはいえ、現実はそれほど簡単なことではないでしょう。各地で試みられている色々な取り組みを通じて、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ前進していくものだと思います。
私にできることはごく限られたことでしかありませんが、与えられた機会を少しでも意味のあるものにしたいと思っています。

うれしいメール

昨日私がアドバイザーをしている学校の前教頭を通じてある学校から授業アドバイスの依頼がありました。喜んでお引き受けしましたが、その夜に1通のメールが来ました。私がアドバイザーをしている学校から昨年その学校へ異動になった先生からでした。メールでこの先生が今年度から現職教育の担当となって私を推薦してくださったのだと知りました。

初めてこの先生の授業を見せていただいたときに、授業規律とそれをつくる指導力に感心したことをよく覚えています。このようなベテランに私が直接アドバイスする機会はほとんどなかったのですが、数年の間にその授業は笑顔が増え、子どもを受容する場面が多くみられるようになりました。まわりから吸収して、コミュニケーションのあり方を意識的に変えようとしていることがよくわかります。自分のスタイルを持っているベテランはなかなか変わろうとしないものですが、授業にこだわり、進歩しようとしている姿勢をとても素晴らしいものだと思いました。
このような方に推薦いただけたことを本当にうれしく思いました。

メールの中で次のようなことが書かれていました。

授業で生徒を変える、授業で学校を変える、こういう意識が先生方に芽生えれば学校は良くなると思っています。意識して授業力をアップしていくことが生徒の信頼と信用を得ることにもつながります。

全く同感です。こういう視点で現職教育が組まれていけば、学校はきっとよい方向へ変わっていくと思います。どのような形でかかわっていくかはこれからですが、私にとってもよい学びの機会なると確信しています。

授業を大切にしたい、授業を通じて子どもを育てる、そういう学校が増えてきているように感じます。とてもうれしいことです。また、授業を大切にしようとしている学校のお手伝いができることに感謝しています。5月の連休が明ければ、学校への訪問も本格化していきます。どのような出会いがあり、どのような学びがあるのか、今からとても楽しみです。

入学式で式辞を考える

昨日は、中学校の入学式に来賓として参加しました。

着なれない制服姿が初々しい子どもたちの姿と先日の卒業式の子どもたちの姿が重なります。3年後にはあのような立派な姿に成長するのだと思うと、子どもたちの3年間がいかに大切なものかよくわかります。子どもたちの成長にわずかでもかかわれることの幸せを感じました。

新任校長の式辞も、子どもたちと同じく初々しいものがありました。日ごろとはちょっと違う緊張した姿に、校長としての意気込みを感じました。失礼ながら、式辞のときは子どもたちの話を聞く姿を観察することが常で、その内容や言葉が強く記憶に残ることは少ないのですが、今年は「涙をたくさん流せるような生活をしてください」という言葉がしっかりと残りました。「うれし涙」「感動の涙」「悔し涙」をたくさん流せるように、一生懸命中学生活を送ってほしいとの願いです。私の耳にも残ったのですから、きっと子どもの心にも残っているはずです。教室で新しい担任はこの言葉を子どもたちにもう一度問いかけてくれたでしょうか。子どもたちに、たくさんの「心の涙」を流して成長してほしいと思いました。

自宅に戻って、何人かの校長の式辞を読ませていただきました。HPに式辞を載せる学校が増えたので、こういったこともできるようになりました。原稿にすると短い式辞でも、伝えたいことがシャープであると、きっと子どもたちの心に残ると感じました。校長として言いたいこと、伝えたいことがたくさんあります。しかし、伝わらなくては意味がありません。話が終わった後に何が子どもたちに残っているかです。短い式辞の校長は、きっとそのことを意識されたのでしょう。

式辞のメインは子どもたちに向けての話ですが、担任はそれをどのように聞いているのでしょうか。式典をただの通過儀礼にしてしまうと、静かにしていればよいという表面を取り繕う子どもになってしまいます。式後の学級で、子どもに「校長先生の話はどうだった」「どんな言葉が残っている」と問いかけてほしいのです。人の話から何を学んだか、何を学べたのか、子どもに意識させてほしいと思います。担任がこのようにすることで、校長の式辞もより洗練されていくと思います。式辞を形式的なものではなく、子どもたちの成長につながるものにするのは、式辞を述べる校長だけでなく、担任の働きも大切なのです。
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