小学校で道徳の授業づくりの研修

先週、小学校で道徳の授業づくりの研修を行いました。授業の組み立て方や発問のポイント、資料の扱い方についてグループで考えていただきました。

「誠実」をテーマにした読み物資料をもとに、3つのグループで資料における「誠実」の意味を考え、発問と予想される児童の反応を考えました。事前に研修で使う読み物資料を配ってあったのですが、皆さんよく考えてこられているようでした。
「誠実」はあまりぶれない価値のように思っていましたが、先生方のとらえ方が多様であったことにちょっと驚きました。中にはこの資料は、相手との約束を守るために自分のチャンスをあきらめるような自己犠牲をするので嫌だという方もいます。自分の気持ちに誠実であることも大切だという考えです。ここでの「誠実」の使われ方はある種のレトリックですが、子どもからも似たような考えが出てくるはずです。どれが正解と言うわけではありませんが、先生自身がぶれないものを持っていることは大切だと思います。そういう意味でも、先生方が「誠実」という道徳的な価値について意見を交換したことはとてもよい経験だったと思います。
先生方から出てきた発問は、主人公の気持ちになって考える、主人公の気持ちを想像する、自分だったらどうするといったものが多かったです。この資料で授業をされた経験のある方が、実際に子どもから出てきた反応を教えてくださいました。約束を破っても、チャンスをつかんだ後、相手にそれに見合うようなお返しをするというものです。このような答は、私も何度か目にしています。きれいな言葉で言えば「Win Win」の関係です。確かに理想ですが、この場合一度約束を破るということがその前にあります。決して相手は「Win」ではありません。どうも、自分は損をしたくないということが前提にあって、その上で落としどころを探すという考え方が増えているように思います(昔からあったのかもしれませんが・・・)。こういった考えにどう対応するかというのは難しい問題です。そうではない意見に触れることで、考え直すきっかけとなってくれればと思います。
道徳では主人公の気持ちを中心に考えることが多いのですが、子どもたちを揺さぶるために「当事者」の気持ちを考えさせることも時にはよいと思います。もし約束を破られたらその「相手」はどんな気持ちになるだろうか、その後どのような行動をとるだろうといったことを想像させるのです。

私からは、どうすれば子どもが深く考えるかという視点でお話をさせていただきました。
道徳の授業で基本となるのが、学級の雰囲気です。モラル的にはどうかという意見も安心して本音で話すことのできる学級であることが大切です。どんな意見もバカにされずに聞いてもらえる、おかしなことを言っても互いに笑い飛ばせるような学級であることが理想です。
読み物資料を使う時には、読み取りに時間をかけると子どもたちの考える時間が少なくなってしまいます。国語の授業ではありませんから、先生が解説をしてもいいのです。できるだけ早く登場人物に入り込めるようにすることが求められます。特に、ポイントとなる事件や出来事では登場人物の気持ちを強調したり、問いかけたりして子どもが寄り添えるようにすることが大切です。
発問では子ども自身の問題としてとらえさせることが大切になります。「どうすべき」といった問いかけは客観的な判断を求めることなり、突き放した意見や教科書的な答になりやすくなります。子どもたちの反応よっては、主人公だけでなく、他の当事者や第三者の気持ちに寄り添った考えを聞いたり、その後どうなるかを想像させたりといったことも必要になります。
子どもに深く考えさせるためには、揺さぶることも大切です。「○○の気持ちを考えよう」ではなく、「○○の気持ちわかる?」「そんなことできる?する?」と子どもに迫ったり、「もし、△△がなかったら、それでも変わらない?」と条件が変わっても揺るがないかと問いかけたりすることで、子どもの気持ちが揺さぶられます。そこで、もう一度子どもに考える時間を与えることで、考えが深まります。その時間をつくるためにも、資料の読み取りの時間をできるだけ早くすることが大切になります。

夏休みに入って少し余裕のある時期でしたので、先生方も落ち着いて話し合うことができていたように思います。互いに授業について考えを聞き合うということはとても大切なことです。こういった機会を持つことが大切だと思います。
私も先生方の素直な意見を聞かせていただくことで、とても勉強になりました。よい機会をありがとうございました。
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