それぞれに応じた課題が見つかる

小学校で授業アドバイスを行ってきました。市内の全小中学校での授業アドバイスの一環です。今回で、市内全校の1回目の訪問が終わりました。この日は、4人の先生の授業アドバイスを行いました。

採用2年目の先生の授業は、2年生の図画工作でアートカードを使った鑑賞の授業でした。
グループで1組のアートカードを使うのですが、数が足りないため1グループの人数が5人になってしまいました。そのため、どうしてもグループが分断されたり、参加しづらい子どもがでてきたりします。全部のグループで同じカードを使う必要のない活動であれば、カードを分割した1グループの人数を4人にしたいところでした。
本時のめあてを子どもに示します。「しっかり見よう」「思ったことを話そう」「作品やグループの人と仲よくなろう」の3つです。「しっかり見る」「作品と仲よくなる」とは具体的にどういうことかよくわかりません。もちろん授業の最後に、「しっかり見る」とはどういうことか子どもの言葉で説明したりまとめたりする場面があればそれでよいのですが、今回はそのような場面はありませんでした。また、「話そう」では話して終わりです。伝える、聞く、理解するといった要素を意識させる必要があります。
授業者が黒板に2枚のアートカードを並べて、似ているところを考えさせます。それほど大きいものではないので、黒板を見て考えることはできません。手元のアートカードから同じものを探して、それを見ながらの活動になりますが、子どもたちは見つけることに時間がかかっていました。あらかじめここで使うカードを抜き出しておいて、そのカードだけ先に配っておくとよかったでしょう。残りのカードは必要になってから配ればよいのです。教室には大型のディスプレイがあります。縦長のカード2枚であれば同意に提示できます。全体で進めるのであれば、比較するカードを縦方向の物にしてディスプレイを活用するという方法もありました。一部のグループで、カードを自分の手元に持ってくる子どもがいました。その子どもから遠い子どもはカードを見ることができません。カードをグループの真ん中に置くように指示する必要があったようです。
子どもたちの考えを全体で確認します。指名した子どもの発表を笑顔で受け止めることができています。子どもからは、「古い感じ」といった言葉が出てきます。そこで終わるのではなく「それってどういうこと」と聞き返したいところです。同じように感じた子どもをつなぎながら、「古い感じ」が「色がはっきりしない」「昔のようす」といったものに起因していることを明確にしたいところです。ここで、「色」「題材」といった絵を見る視点を整理しておくとよいでしょう。「いっしょのことに気づいた人」とつなげる場面もあったのですが、挙手による一問一答が多かったのが残念です。
主活動は、グループの一人がアートカードから似ていると思うカードを一組選び、それを見て他の子どもが順番に自分が考える似たところを説明し、最後にカードを選んだ子どもが自分の考えを発表するものです。これを順番に繰り返します。めあてが提示されていましたが、この活動とめあての関係を子どもたちは意識していません。冒頭に説明したことなので頭から消えているのです。ここで、もう一度押さえておく必要がありました。
自分の発表のことを考えるのに精一杯で友だちの話を聞けない子どもが目立ちます。話す方もカードを持ってくれている人に向かってしゃべったりと、聞き手を意識できていませんでした。ただ自分の思ったことを言うだけですので、話せる子どもはテンションが上がります。似たところになかなか気づけない子どもからは、「同じ色がある」といった意見しか出てきません。全体の場で、事前に具体的な視点をたくさん与えておく必要がありました。授業者は、子どもたちにいろいろな視点で絵を鑑賞してほしいと願っていました。全体で視点を広げる活動したつもりなのですが、価値づけや整理ができていません。子どもたちが「できる」ようになるためにどのような働きかけが必要かを考える必要があります。全体の場での発表でも、こういった視点の整理がありません。「しっかり見る」というめあては、最後までどこかに行ったままでした。
子どもたちは指名されたいばかりです。挙手をして指名されないとがっかりしてしまいます。聞くことの価値を高めることを意識してほしいと思います。最後に感想を書かせますが、感想ではなく何ができるようになったか、どんなことがわかったかを書かせることが大切です。時間がないため書く時間を十分に取ることができませんでした。子どもから、「休み時間に書いてもいい?」と質問が出ました。授業者は「やる気があっていいね」とほめました。このように、子どもを受容したり、ほめたり、つないだりも時々できますが、いつもではないのです。余裕がないのでしょう。経験が少ないので当然と言えば当然です。常に意識できるようになることが課題です。それと同時に、活動の目的や目標を子どもの目線で考え、与えることも課題です。子どもに対する基本的な姿勢はよいので、よい方向に変化していくことと思います。

3年生の国語の授業はありがとうの手紙を書く場面でした。
最初に、PCをフラッシュカードとして利用して、漢字の読みの練習をします。ワイヤレスマウスを使ってうまくタイミングをとり、移動しながら進めます。しかし、教室の後ろから画面を見て練習してもあまり意味はありません。子どもがきちんと言えているかどうかは、声の大きさではなく口の動きで見る必要があります。そのためには、教室の前方から子どもたちを見る必要があります。ディスプレイは一瞬見るだけでいいのです。
授業規律を意識していることがわかります。指名しても返事がなければ、「○○さん、○○さん」と返事をするまで名前を呼びます。このこと自体は悪くないのですが、返事ができれば「いい返事だね」とほめることを忘れないでほしいと思います。
顔の上がらない子どもを指名して、本時のめあてを読ませます。子どもに参加を求める方法の一つです。全員参加を意識していることがよくわかります。
指名した子どもに教科書を音読させます。他の子どもが集中していないことが気になりました。暗黙のルールがあるのかもしれませんが、そうだとすれば徹底できていません。具体的に指示をすることが必要でしょう。
ありがとうの手紙を出す相手を考えます。子どもたちはあらためて聞かれると、なかなか思い浮かびません。ありがとうを恥ずかしくて言えない人がいないかと聞くと、「いる」と反応する子どもがいます。しかし、授業者はその反応を活かしません。「誰に」「どんな」「ありがとう」を伝える手紙を書けばいいのか子どもたちは困っています。子どもたちの姿勢や表情が今一つです。個人作業に入っても、手が動かない子どもが多いので、授業者は「困っている人?」と聞きます。手がたくさん挙がります。子どもたちが先生に助けてもらうのを期待しています。子ども同士で聞きあったり、書けている子どもに全体で発表してもらったりというように、子ども同士で解決することを意識するとよいと思います。
手紙には型があることを教科書の音読を通じて説明します。ここでも、先ほどと同じく集中できていない子どもが目立ちます。音読や説明場面で子どもたちに参加を求めることが必要です。言葉での説明が続きますが、ここは授業者が書いた手紙を準備して、具体例で考えるとよかったと思います。教室には大型のディスプレイがありますから、そこに手紙を映して、どこが教科書の説明にある時候の挨拶、本文、結びになっているかを具体的に考えさせます。そして、時候の挨拶を読むとどんな気持ちになるかを問いかけることで、型の持つ意味を考えさせます。手紙の型が相手に気持ちを伝えるために大切なことを含んでいることに気づかせたいところです。
子どもたちに、時候の挨拶をワークシートから選ばせますが、選ぶだけなのであまり考えてはいません。できれば、拙くてもいいので子どもたちの言葉で書かせたいところでした。季節の出来事、今のまわりの様子などを子どもたちから出させて、文章にするのです。個人作業で難しければ、グループで行ってもよいでしょう。
作業が終わった子どもが姿勢を正して待っています。授業者は「いい姿勢で待っているね」とほめました。できれば、固有名詞で何人もほめたいところです。
本文を書くにあたって「敬体」「常体」の説明をします。新しい用語ですので、全員に読ませます。しかし、口を開いていない子どもも目に付きます。「常体」は3回読ませましたが、それでも定着しているとは思えません。テンポよく全体で読ませたり、個別に読ませたりして定着させたいところです。また、用語だけ定着しても中身が定着しなければ意味はありません。例文を出して、「敬体」か「常体」かを問う。「敬体」を「常体」に、「常体」を「敬体」に書き換える。読む相手を指定して、どちらを選ぶかを問う。こういった活動も必要でしょう。
授業者が机間指導中に、通路側に筆箱を立ててバリアを作っている子どもがいました。ところが、手が動きだすとバリアは無くなっています。課題に手がついてない時に授業者に見られたくなかったのでしょうか。面白い場面でした。
子どもたちは指示にちゃんと従っているのですが、意欲は今一つだったように思います。原因の一つに手紙を書くことの目標や評価がはっきりしていなかったことがあります。リアリティがないと言ってもいいでしょう。授業者による評価でなくてもいいのです。「やれた」と自己評価できる基準が必要なのです。このことは、活動全体だけでなく、相手を決める、時候の挨拶を選ぶ、本文を書くといった個々の細かい活動にも言えることです。活動に対して、評価場面を必ずつくることが重要なのです。
子どもとの人間関係は、上手くいっていると思います。授業規律や全員参加も意識できています。次の課題は、活動の目標と評価を意識して授業を組み立てることだと思います。次回どのように授業が変わっているか楽しみにしたいと思います。

残り2人の授業については明日の日記で。
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