子どもをつなぐことが課題の授業(長文)

昨日の日記の続きです。

3年生の授業は「わたしたちの市のようす」でした。この市は、北側、中部、南側で様子が違いますが、この日は南側の様子を考える場面でした。
これまでに学習したことを確認します。全体への問いかけに対して子どもが反応してくれます。しかし、それはあくまでも一部ですので、素早く何人かの子どもを指名して確認したいところです。また、指名した子どもとだけやり取りする傾向があります。他の子どもたちにつなぐことも必要です。
ワークシートを配り名前を書くように指示します。書けた子どもが「書けました」と声を出します。このような単純作業では、声を出させることでまわりへプレッシャーをかけて素早い行動をうながすことは悪いことではありません。しかし、問題を解く時などは、わからない子どもが苦しくなるので注意が必要です。授業者は「早いね」「いいね」と声をかけますが、できれば「○○さん、早いね」と固有名詞でほめたいところです。
一人なかなか授業に参加できない子どもがいました。次に同じような場面でその子が一番に「書けました」とうれしそうに声を上げました。先ほど早く書けた子どもがほめられたのを見て自分もほめられたいと思ったのでしょう。この子どもを授業に引き込むチャンスだったのですが、授業者は無視してしまいました。せめて目を合わせて笑顔を見せるだけでも違ったと思います。残念な場面でした。
子どもたちに土地利用図を見て気づいたことをワークシートに書かせます。作業中にこれまでに気づいたことを思い出して考えさせようと話しかけます。作業中に話しても子どもの耳には届きません。最初の復習の場面で、気づいたことではなく、何に注目して気づいたのか、その視点を全員で共有しておくことが必要でした。授業者は子どもたちから求める答えが出てくることに意識が行っています。そうではなく、気づける力をどのようにしてつけるかにエネルギーを使う必要があります。
子どもたちに気づいたことをたずねますが、挙手が少ないのが気になります。書けているのに、手を挙げない理由はなんでしょう。気づいたことであれば正解かどうかは本来関係ありません。しかし、授業者が期待する答を言わなければいけないという思いがあるのかもしれません。発表しても評価されないから積極的に発表する意味がないのかもしれません。必要なことは先生が板書するので、参加しなくても困らないのかもしれません。子どもが発表しやすい、発表してよかったと思える状況をつくる必要があります。「どんなことを書いたか聞かせてくれる」と言いやすい問いかけをする。発表に対して「なるほど、○○と考えたんだね。同じように考えた人いるかな?」と発言を受容し、他の子どもとつなぎ、認められる場面をつくる。すぐに板書はせずに、必要であれば、あとで聞いていた子どもたちに言わせてそのまま書く。このようなことを意識して行うとよいでしょう。
一人の子どもが「他と比べて・・・」と比較する視点で発表をしました。社会科の資料を見るとてもよい視点ですが、授業者はスルーしてしまいました。ここはきちんと価値づけをして全員に共有したいところでした。
発表をさせても、根拠となることを資料で確認する場面がありません。結論だけが次々発表されます。結局一部の子どもの発言だけで授業が進みます。
南部に大きな工場が多いことをグループで考えさせます。物流といったことを子どもたちはまだ学習していません。そのことに気づくための材料が不足しています。地図を見ながらすぐそばに高速道路があることや大きな船が泊まっていること、海岸線が直線であることなどを先に押さえておきたいところでした。
子どもたちが手詰まりになっていたところで、校外学習で見学した埠頭のことをヒントとして出し、その時の写真を配りました。ヒントが出たので、子どもたちはそのことだけに注目します。その時見た飛行機の話をしたりと、地理的な条件が意識から消えてしまいました。
子どもたちの発表からは、製造・加工するための材料がいることや、土地の価格の問題が出てきますが、この知識は最初の土地利用図から直接わかることではありません。知識ですので、ていねいに全体で共有する必要があります。しかし、ここでも一部の子どもとのやり取りだけで進んでいきました。最後は、授業者が解説してまとめます。この時間の結論は授業者が用意したまとめの文で、それを穴埋めして終わりました。結局それを覚えればいいのかと子どもは思ってしまいます。結論を教えることよりも、根拠や考え方をきちんと身につけることの方が大切なのです。子どもたちの活動が社会科の力とどう結びついたのかがよくわからないままに終わりました。
授業者は子どもと1対1で受容することができます。子ども同士をつなぎ、全員参加させることが課題です。挙手に頼らない進め方、子ども同士が根拠を持って考え、聞き合う必然性のある課題を考えることが課題です。レベルアップを意識して授業に臨んでほしいと思います。

2年生は国語の授業で、主人公が仲間に教えたことを考える場面でした。
音読を列ごとに役に分けて行います。活動の指示は明確なのですが、目標や評価がはっきりしません。授業者が、列ごとに読み方のよかったところを評価したことはとてもよかったのですが、事前に評価の視点を与えておくともっとよかったでしょう。
主人公のしたこと、言ったことに線を引かせます。子どもの作業速度には差があります。早くできた子どもが手遊びを始めます。次の指示をしておくことが大切です。授業者は机間指導をしているのですが、下を向いたまま移動しています。目の前の子どもしか見ないので、すぐ横で手を挙げている子どもに気づけません。全体を見ることができない机間指導にならないように注意が必要です。机間指導をするなら、移動の時に顔を上げて全体の様子を確認し、できるだけ素早く全員のノートを見ることが大切です。それができる自信がなければ、教室の斜め前方から全体を見ることで支援の必要な子どもを見つけ、その子どもへの対応が終わればまた元の場所に戻って全体を見るようにするといいでしょう。
子どもに発表をさせます。子どもの発言に対して、「つけたし」という声が上がりました。他の賛成の声に紛れたのかもしれませんが、拾うことができませんでした。その子どもの考えを聞きたかったところです。ハンドサインもそうですが、全員の状況を確認して活かすことができないのであれば発言の後に子どもに声を出させるべきではありません。やるからにはきちんと聞き取る、見取ることを意識してほしいと思います。
子どもが友だちの言葉を聞いていないのも気になりました。授業者が板書でまとめてくれることがわかったからかもしれません。同じ所に気づいて線が引けているか、指で確認させるといったことが必要です。結局この場面は数人に発表させて終わりでした。子どもたちが活躍する場面をもう少しつくりたいところでした。
続いてバラバラだった仲間がまとまった理由を問います。主人公が教えて練習したという意見に対して自然な拍手が起こりました。よい場面です。拍手した理由をたずねてそのことを評価したいところです。この場面では、子どもたちが集中して聞いていました。そのことを評価する言葉をかけるとよいでしょう。
よい発言に対して「○○さんがいったことどういうこと?」とつなぎましたが、指名した子どもは答えられません。そこで、もう一度言ってもらいました。今度はしっかり聞いていました。こういったよい対応ができます。しかし、どうしても発表者に視線がいって他の子どもたちの聞いている様子を見ることができません。挙手を中心に進めているので、特に気になります。ペアで答を聞き合うといった活動も取り入れるとよいでしょう。
子どもから「何回も練習して、もっと頑張ろうと言った」という意見が出てきました。本文にはそのような記述がありません。このままでは妄想です。本文のどの表現からそのよう考えたかを子どもに聞くことが必要です。想像することは悪いことではないのですが、その根拠となった記述を問うことが大切です。
次の質問に対して、授業者のねらっている答えが出てきません。「これまでのことを思い出して」「これ以外ないかなー」と何とか引き出そうとします。「前の場面でどうだった?」と問いかけても子どもたちは何を授業者が求めているのだろうという表情です。教師の求める答を考えようとし始めているのです。その中で教科書の前の場面を読んでいる子どもがいました。「○○さん、教科書をもう一度読んでいるね」と評価して、子どもたちを本文に戻すとよかったでしょう。子どもたちが行き詰った時は、本文をもう一度読ませることが大切です。この場面では、誘導するような言葉を使わずに、単純に本文をもう一度読むように指示すればよかったのです。
「本文の○ページの○行目の・・・」と根拠となる部分を明確に示して説明する発言が出ました。授業者はそのことを価値づけしませんでした。これ以外にも子どもたちからよい発言が出ています。よいものを子どもたちに広げることを常に意識して、それらを価値づけしていってほしいと思います。
次第に意見が出始めるのですが、ついていけない子どもが出始めています。一生懸命に参加していても、一部の子どもの意見だけで進むとついていけなくなるのです。せっかく集中していたのですが、緩みだしました。一部でも子どもが動けているのですから、ここはまわりと相談させたりすれば、どの子どもも集中を切らさず参加できたと思います。
ここで、最後の課題です。主人公は仲間にどんなことを教えてくれたのかを考えさせます。
授業者は「みんなの想像でもいい」と言いますが、本文の読み取りですから、ただ「想像」では困ります。しかし、かなりの子どもたちは本文を見ながら書いています。普段の授業では、本文を根拠にして書くように指導されているのでしょう。だからあえて「想像でもいい」といったのかもしれません。ここは「想像」という言葉を使わずに、「主人公が○○をしたから、仲間は○○がわかった」「主人公が○○をしたことから、仲間は○○を教わった」といった形で書くように指示してもよかったかもしれません。
「もっと深いことを教えてくれたんじゃないかなあ」と個別に指導していました。国語の読み取りというよりも、道徳に近くなります。根拠としている本文がよければ、「いいところに気づいているね。それって別の言葉で言うとどういうことかな?」ともう少し考えさせる。根拠がずれていれば、「なるほど、いいね。もっと見つけてくれるかな?」と別の根拠となる本文を探させる。こういった対応も視野に入れるとよいでしょう。
書き終った子への指示がないので、手持ち無沙汰な子どもがいます。また、ただ答を書くだけでは、なんとなく書いて終わってしまいます。この後、ペアで「話し合い」ましたが、子どもたちは目指すものがよくわからないので、互いに自分の書いた文を「読み合って」終わっていました。「なんで?」と理由を聞くことを指示しましたが、ここまで、「想像でもいい」とは言っていますが、「理由」を意識させることはしていません。ここで理由を聞かれても子どもは困ってしまいます。最初に「相手になるほどと納得してもらえる理由を書こう」といった目標を与えておきたいところでした。
全体での発表では、子どもの発言から自分に都合のいいところだけを抜き出していました。時間もなかったのでしょうが、「同じようなことを考えた人?」とつなぎ、考えの同じところを共有することで、自然に授業者のねらうところに収束していったのではないかと思います。とはいえ、子どもの言葉をつなぎながら焦点化するのは難しいことは間違いありません。
この課題であれば、主人公が言ったこと、したことを確認しておいて、仲間たちがその前と後で何が変わったかを本文の記述をもとに対比させるとよかったでしょう。こうすることで、主人公が教えたことを本文の記述をもとに明確にできるはずです。登場人物の事件の前後の変化を対比させることが読み取りの大切な方法です。こういったメタな知識を身につけさせることで、読み取りの力がつくのです。
授業者は明るい表情で子どもたちと接することができます。学級の雰囲気もよかったです。この授業者も、子ども同士をどうつないで考えを深めていくかが次の課題です。個々の子どもとの関係をつくる以上に難しいことですが、挑戦してほしいと思います。

いつも感じることですが、基本的なことができるようになればなるほど、新しくより難しい課題が見えてきます。授業力向上への道のりは長いものです。しかし、毎日の授業に真摯に取り組めば、必ずそれに見合った向上が見られます。焦らず、一歩一歩前へ進んでほしいと思います。
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