中学校でいろいろな課題に気づく

中学校で授業アドバイスを行ってきました。この日は、英語と社会の授業研究と学校全体の様子の参観でした。

全体としては落ち着いた状態でしたが、学校に慣れたせいか1年生で子どもたちのテンションが上がりやすくなっているように感じました。よく言えば元気がある、悪く言えば羽目を外すといった感じです。目くじらを立てることのほどではないかもしれませんが、今後授業規律が緩んでくる心配があります。どのように変化するのか見守る必要がありそうです。
2年生は、授業者によって同じ学級でも、とても素晴らしい集中力を見せてくれる時と、そうでない時があります。この差がなかなか埋まらないように感じます。授業者が求めればそれに答えてくれる子どもたちだと思います。子どもたちに今どうなってほしいのかを明確に意識することが必要なようです。
3年生は、修学旅行明けで少し疲れている子どももいるようです。しかし、ほとんどの子どもは学習にしっかりと取り組むことができていました。修学旅行でよい人間関係が築けたのでしょう。今まで以上に子どもたちがかかわり合う姿を見ることができたように思います。関係がよいだけに、その中に入れない子どもに注意が必要です。学級の中で孤立している子どもがいないか、気をつけてほしいと思います。

1年生の女子の体育では、子どもたちが非常によい表情でウォーミングアップをしていました。しっかり声を出しながら、自分たちだけでランニングをやれていました。授業者は準備をしていますが、適宜視線を子どもたちに送っていました。体育の教師としての基本がしっかりできています。子どもたちを座らせて説明しますが、膝を曲げて子どもたちの目線に自分の目線を合わせます。
指示に対して子どもたちが正しく行動できない場面がありました。授業者は子どもを叱らずに、自分の指示が悪かったと言います。その上で、「○○さんが正解」と正しく行動できた子どもをほめます。子どもとの関係をつくる力のある方です。子どもたちの表情のよい理由がわかった気がします。

ベテランの1年生の数学の授業で、机間指導中に子どもたちのテンションが上がりかける場面がありました。授業者はその気配を素早く感じ取り、机間指導を中止して前に立ち、子どもたち作業を止めて集中させました。子どもたちの状況を素早く判断して対応したのはさすがでした。

1年生の英語の授業は、絵の”situation”を表現する場面でした。前時に学習した”this”と”that”の復習でしたが、絵の登場人物の名前を問いかけ、その時学習した文章をそのまま言わせます。これでは、”situation”ベースになっていません。連想記憶です。絵を使うのなら、子どもに登場人物の立場にならせて、それぞれの立場で絵の状況を言わせる必要があります。登場人物が”This is my desk.”と言ったのであれば、もう1人の登場人物になって”That is your desk.”と子どもたち言わせるといった活動にします。絵と文を1対1につなぐ活動ではなく、絵の”situation”を登場人物の視点で表現するような活動にする必要があります。
また、”this”、”that”、”it”などの説明を日本語でします。そうではなく、”situation”の表現から、自分でその言葉の構造を理解させることが大切です。日本語の説明で納得しても、一々その説明を思い出して言葉にしていてはしゃべれるようになりません。紙の試験の対策にしかならないのです。子どもたちが英語を言葉としてつかえるようになることを意識して授業を組み立てほしいと思います。

2年生の若手の数学の授業は、二元一次連立方程式の用語の定義をしていました。しっかりと教材研究をしたのでしょう。まとめてではなく、「二元」「一次」「連立」「解」といった個々の用語をていねいに押さえて、で二元一次連立方程式を定義していました。ただ、具体例が少なかったのが残念でした。数学では抽象と具象を自由に行き来できる力が求められます。抽象的な概念は大切ですが、それが具体的にどういうことを実感する場面が必要です。「これは何元何次方程式?」「この方程式の解はいくつある?」といった質問をして、定義をもとに考えるとよかったでしょう。
同時展開の別の先生の授業では、「答のことを解という」と定義していました。これは「答」が定義されていないので、単なる言い換えです。感覚的な説明であって、数学の定義ではないのです。どのように説明するのかはいろいろな方法がありますが、定義そのものは揺るぎないものにしておく必要あります。

3年生の英語は修学旅行についての英作文の時間でした。使えそうな表現はいくつか与えられていますが、子どもたちは日本語で考えた文章を、辞書などを使って英語に直しています。日本語にこだわらずにできるだけ英語ベースで考えるような習慣をつけさせたいところです。昨年度の3年生の作品があればそれを紹介して、参考にする。英語の質問をたくさん用意してそれに英語で答えることで素材となる文を集め、文と文の間を埋めながら日本語を介さずに文章を構成する。こんなやり方もあるかもしれません。

3年生の若手の国語は、反応する子どもだけで進んでいました。一部の子どもが答えてくれると、それをきっかけに授業者が文章を解説していきます。この文章を理解することではなく、それを通じて読解力をつけることが授業の目的であるはずです。どのようにすれば読解力がつくのかをもっと意識する必要があります。
子どもたちは先生の話が続くので集中力を失くしていきます。一問一答で答を聞いていきますが、なぜそれが正解なのか根拠は示されません。黒板には質問の結果だけが書かれていきます。試験に出る質問の答を覚えることが学習になっています。国語は子どもたちどんな力をつける教科なのかを考え直してほしいと思います。

3年生の数学は展開や因数分解の数の計算への応用でした。整数のかけ算を簡単に計算する方法を考えるものです。35×25であれば、(30+5)(30-5)=302-52と変形するのですが、これを(25+10)×25=252+10×25とすることもできます。変形は何通りでも可能です。簡単になるには、どんな数の計算に変形できればいいのかを子どもたちに考えさせる必要があります。10の倍数や、1ケタの数の式になればいいということを押さえないと、なんとなく変形をして上手くいったということになってしまいます。15×12=15×(2×6)=(15×2)×6といったものも例として挙げておくと、見通しがよくなったと思います。
どんな数をつくればよいかをきちんと押さえていないために、子どもから簡単にならない変形が出てきました。しかし、何らかの公式が使える形に変形できることに気づいたのは立派です。この発言から、変形は何通りでもあることをまず共有したいところでした。その上で、他のやり方と比較して、どれが簡単か、なぜ簡単なのかを考えることで、この学習の本質に気づけたと思います。

3年生の社会科は、子どもたちの発言を活かそうと授業改善に取り組んでいる先生の授業でした。
子どもに考える時間を与え、発表をさせるのですが、どうしてもそこから自分で解説してしまいます。板書を減らすなど工夫はいろいろしているのですが、どうしても最後は自分でまとめなければ不安なようです。子どもたちに任せるというのはある種の勇気がいりますが、子どもたちを信じてほしいと思います。
他の先生の授業を参観するなど、とても素直で前向きな先生です。少し時間がかかるかもしれませんが、きっと自分自身で納得のできる授業ができるようになると思います。

授業研究については、明日の日記で。
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30