活動と目標や思考の関係を考える

昨日の日記の続きです。

5年生の国語の授業は、インターネットについての説明文で学んだことを活かして、自分の考えを書く場面でした。
前時の復習で、インターネットのメリット、デメリットを子どもたちに問いかけますが、挙手は数人です。しかし、子どもたちはノートを開いて確認しようとします。答えようという意欲を感じます。しかし、授業者はその動きが広がってきたところで、挙手した子どもを指名しました。時間が気になる所だとは思いますが、子どもたちの意欲を認めたいところでした。「見つかった?」と声をかける、隣同士で確認させるといったことをするとよかったと思います。もちろん、最初に手を挙げた子どもに対しても、「○○さんすぐに手を挙げてくれたね。聞かせてくれる」と認める場面をつくることも必要です。
子どもの発表の内容の適否を教師が判断していました。子どもがノートを調べていたので、「○○さん、それでいい?」と子どもに判断させたいところです。
与えられた2つのテーマから1つを選んで自分の考えを150字程度で書かせますが、その目標や評価基準がはっきりしません。子どもたちにわかる形で明確になっていないのです。授業者は読みやすく書けることを意識しているようでしたが、グループでの発表は口頭です。これでは、書くことの評価ははっきりしません。観点を決めて互いに回し読みをして、よいところに線を引いたり、コメントを書いたりするといった活動が必要になります。
伝えることを意識するのであれば、どのように話すのかを意識しなければなりません。しかし、子どもたちはただ書いたものを読んでいます。伝えるということも目標として意識されていませんでした。
書くということを大切にするのであれば、この説明文で筆者がどのような構成で書いていたかを確認し、それをもとに書くといった活動にするとよかったでしょう。構成を意識することで、わかりやすい文をつくることができますし、説明文を読み取る力もつくはずです。
伝わる話し方という視点を大切にするのであれば、相手に伝える時にどのようなことを意識すればよいかを過去の経験から整理しておく、逆にグループでの発表でよかったところを全体で共有するといった活動をするとよいでしょう。
グループの意見をまとめるのですが、グループで1つにまとめるのではなく、一人ひとりが自分の考えでグループの意見をまとめることを課題としていました。このやり方はとてもよいと思います。無理やりグループでまとめてしまうことはよくありません。強い子どもの意見が通ってしまうからです。ただ、まとめたことの評価をどうするかが難しいところです。きちんと伝えるための工夫、伝わったかどうかを評価したいところですが、全員に発表させるのは難しいからです。少々時間はかかりますが、各グループから1名ずつ集めて発表の場をつくるという方法があります。それぞれが自分のグループのまとめを発表して、評価の場とするのです。
ここで紹介した活動をすべて行うことは時間的に不可能です。授業の目標や評価に合わせて、どのような活動をするべきかが決定されます。授業の目的や目標が明確になっている必要があるということです。
子どもたちに発表させますが、その内容を板書しません。子どもたちは、発表を聞きながら手を動かしています。自分で聞いて、必要なことを書いたり自分のまとめと同じところに線を引いたりしているのです。とてもよい姿でした。
発表者と他の子どもがかかわる場面が少なかったことが残念でした。同じようなことを話したグループをつないだりして、子ども同士をつなぐことを意識してほしいと思います。全体追究の場では、発言できる子どもが中心となって進んでいきますが、どの子どもにも発表の機会をつくることや子ども同士をつなぐことが次の課題でしょう。

4年生の国語の授業は、漢字の訓をもとに熟語の意味を考えるものでした。
子どもたちの姿勢はよいのですが、公開授業だったのでやや緊張気味です。気になったのが、背筋は伸びていても、視線が上がっていない子どもがいることでした。一人ひとりと視線を合わせることを意識してほしいと思います。
いくつかの熟語を与えて読みを予想させます。「考えて」という言葉を使いますが、考えるための材料を子どもが持っていないことが問題です。漢字の音、訓を与えていればまだしも、何もなければ知識のある子どもしか答えられません。漢字練習で学習したものだということですが、それならば、練習帳を調べるといったことをした方がよかったでしょう。熟語の読み方は、音読みが基本であることや、重箱読みや湯桶読みといった変則があることを知識として与えてそれを活用する場面にしてもよかったかもしれません。
知識を問う場面で「考えて」と言ってしまうと、子どもたちは知識を覚えること、覚えたことを思いだすことを考えることだと思ってしまいます。根拠を意識した活動と知識を問う活動を区別することが大切です。また、知識を問う場面で時間をかけることにあまり意味はありません。知らなければ答は出せないので、できていないからといって時間を延長したりするのはムダなことです。
熟語の意味を訓から考えることは、その漢字の訓を知らなければ何ともなりません。漢和辞典を引けば読み方はわかりますが、その意味もわかってしまいます。訓から予測する意味はあまりありません。国語辞典を引くことも同様です。この課題では、知らない漢字を使った熟語の場合、意味のある活動ができないのです。したがって扱う漢字は既習のものする必要があります。訓と漢字の意味の関係(もともと中国の表意文字である漢字の意味を日本の言葉に置き換えて読んだ)を押さえた上で、既習の漢字でつくられた熟語の訓を確認して、意味を考えさせるといった活動にするとよいでしょう。
似た意味を持つ漢字、反対の意味を持つ漢字、上の漢字が下の漢字を修飾するといった組み合わせの熟語を穴埋めでつくる課題を与えましたが、その前に、既習の熟語たくさん集めて分類する作業を子どもたちにさせた方がよかったと思います。教師から一方的に成り立ちの情報を示されて穴埋めを考えても、基本的にその熟語を知らないと何ともなりません。
似た漢字でつくる熟語で「○画」とい問題がありました。正解は「絵画」ですが、画の訓「えがく」は押さえていません。また、絵画の場合、訓の動詞ではなく画いた物という名詞で使われていますから、訓から考えるというこの授業のねらいともずれています。漢字の意味から考えるのであれば、訓をたよりに漢字の意味を考えるというステップを明確にして、「漢字の意味をたよりに熟語の意味を考える」という課題にすべきだったでしょう。
逆の発想で、新しい熟語を自分たちでつくるといった活動が面白かったかもしれません。
子どもがわかる瞬間、できるようなるための手段を意識した活動にしないと、単に知識を問うだけ、答を探す、調べるといった活動になってしまいます。授業の構成には、論理の流れ、思考の流れが大切です。教材研究が欠かせないのです。

全体の場では、教師と子どもの関係ができてきたので、授業の中で子どもたちをつなぐことを意識してほしいことを具体例と共にお話ししました。素直な先生方ですので、次の機会には進歩した姿を見せてくださると思います。
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28