法的リスクマネジメントを考える

介護関係者向けの研修の打ち合わせを行いました。テーマは「法的リスクマネジメント」です。介護の現場では、いろいろなリスクがあります。何か事故があれば、その責任を必ず問われます。賠償問題などが起こったときには過失の有無や、予防措置を取っていたかなどが法廷で争われることもあります。私が担当しているこの研修も、事故の予防措置の一環として法的なリスクを回避するという側面もあります。訴えられた時に、会社としてきちんと研修を通じて事故の予防措置をしていると主張できるからです。しかし、見方を変えれば事故の責任を利用者や従業員にあるとするということにもなります。そうではなく、利用者も従業員も会社も、関係者すべてのリスクを軽減するものにする必要があります。

学校で起こる法的リスクの問題も同様だと思います。例えばテストの採点のために自宅に答案を持って帰ることを考えてみましょう。最近では校長の許可を得ないと持ち帰れないとする学校がほとんどだと思います。忙しい先生方に答案を持ち帰るなと言うことは現実的でないことはよくわかっているはずです。それなのに面倒な手続き取らせるのは、現実を無視した、管理的な発想にも見えます。しかし、決してそうではないのです。わざわざ答案を持ち帰る許可を取ったとすれば、そのこと意識していますので、帰りに寄り道をするといったことはしないと思います。時々新聞紙上で目にする、パチンコをしていて盗まれたといった問題は起きにくくなるはずです。また、ルールを守っていて紛失等の事故があったとしても、然るべき手続きを踏んでいたのですから組織のルールの問題となります。結果として個人を守ることになります。それに対して明確なルールがなく、個人の判断で持ち帰って事故が起こった場合、その責任がより大きくなると考えられます。面倒でもこういった手続きをルール化するのは、事故防止と事故が起こった場合の個人の責任を軽減するという効果があるのです。

法的リスクマネジメントを考えるにあたって、誰かの責任を回避するという発想ではなく、関係者全員にとってのリスクを軽減させるような仕組みを考えることが大切です。このことを改めて考えさせられました。
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