松浦克己先生の授業から、子どもの学習意欲の原動力を学ぶ

先日、小牧市立小牧西中学校の松浦克己先生にお願いして、GDMを活用した英語の授業を公開していただきました。私のかかわっている学校や知り合いの先生方に声をかけさせていただいたところ、20人ほどの方が参加してくださいました。

久しぶりに見せていただいた松浦先生の授業は、以前と同じくどの子どもも真剣に集中して授業に参加していました。基本的に”All English”の授業ですが、活動の指示の一部に日本語を使うこともあります。まだ学習していない言葉や言い方を無理に使う必要はないという考えです。大切なのは英語を日本語で理解するのではなく、”situation”で理解することです。”All English”の授業といっても、教え方や内容は従来と全く同じで、指示だけを英語に変えたものとは全く異なる考え方のものです。

松浦先生の授業は、大きく3つで構成されます。最初は実物を使いながら学習するライブです。できるだけ具体的な場面を何度も英語で表現し、その意味するところ、使い方を子どもたちが理解します。続いて、その状況を簡単な絵で表わし、英語で表現する練習をします。理解したことを活用する場面です。最後はワークシートを使って、個人で復習と書く練習です。基本的に、1時間の授業で学習する事項は1つのことです。場面を変えながら同じことを何度も繰り返して学習するのです。
また、GDMの手法を支えているのは、子どもたちが理解できなくても終始笑顔で受容的に接する松浦先生の姿勢と、子ども同士が聞きあい、助け合うことです。教室の中に広がる安心感が子どもたちの学習を下支えしているのです。うっかりすると見逃してしまいますが、GDMといった指導法とは別の、どんな授業にも共通の大切な要素です。

“All English”で、日本語による訳や説明が全くない授業なので、”Slow Lerner”の子どもは学習についていけないように思われがちなのですが、明らかに理解できていないと思える子どもも最後まで頑張っています。子どもたちは、今理解できなくても授業のどこかで理解できる瞬間が必ずくることを信じています。だから、最後まで集中して参加するのです。
子どもたちはわかりたい、できるようになりたいのです。しかし、努力しても結果がでなければ、すぐにあきらめてしまいます。教師が「やればできる」と言っても、その実感がなければ続きません。結果のでる努力をさせる必要があります。松浦先生の授業では、全員同時ではありませんが、どの子どもにも1時間のどこかで「わかる」瞬間が訪れます。そのことを経験的に知っている子どもたちは、学習から脱落しないのです。ですから、”Slow Lerner”の子どもたちにも学力がつくのです。そのことは、データにも表れています。ある年の3年生の標準テストの評定を見ると、3以下の子どもはほんの数人だけです。5の生徒が過半数で、残りが4の生徒です。
子どもたちが自分でわかろうとする意欲を英語の授業で持ち続けることが、他の教科にもよい影響を与えています。やればできるという自信が他の教科の学習意欲にもつながっていくのです。この学校では、他の教科の成績も確実に伸びているようです。

授業後も長時間にわたり参加者からの質問に熱心に答えてくださいました。1度見れば誰でもできるというものではありませんが、その考え方は他教科であってもとても役に立つものです。
松浦先生は、自分が実践の中で培い得てきたものを惜しげもなく提供してくださいます。今回の授業公開にあたってもたくさんの資料を事前に参加者に送ってくださいました。簡単にまねのできる授業ではありませんが、中学校のカリキュラムの中できちんと体系化されています。やる気さえあればだれもが実践できるような材料が用意されています。
今年度いっぱいで退職されるので、このような教室での実践を見せていただく機会はもうないかもしれません。しかし、松浦先生の蒔かれた種は確実に芽吹いています。この芽が大きく育つよう、また、もっともっと広がるようにお手伝いをしたいと思っています。
貴重な時間を割いてたくさんのことを教えていただいたことを感謝します。松浦先生、本当にありがとうございました。
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30