インターンシップで貴重な経験をする

先週末は企業のインターンシップのお手伝いをしました。学校ホームページのコンサルティングを経験するというプログラムです。午前中は専門家による講義でした。

最初の講義は、大学の先生による学校ホームページのコンサルに必要な知識や考え方についてのお話しです。参加した学生の様子を観察していると面白いことに気づきます。大学で講義を受ける時と同じなのでしょう。話を聞きながらメモを取るのですが、結論的なことやまとめの説明の時にメモをするのです。私からすれば、今回の話の価値は結論ではなくその根拠となる資料、データにあります。ここが説得力のポイントです。もしコンサルするとなれば、こういった根拠が説得の決め手です。学生にはその価値がわかりません。自分で価値を判断できないので、大切そうに思える結論やまとめをメモするのです。昼食時にどんなことをメモするか聞いたところ、講師が何度も話したこと、スライドで文字の色が変わっているところといった答が返ってきます。これは、話し手が大切だと考えていることです。その価値観をそのまま受け入れるのです。自分でメモしていても受け身だということです。自分にとって役に立つこと、大切なことは何かを考える力をつけることが大切だと改めて思いました。
私は講演をする時、使用するスライドを事前に配布しておきます。こうすることでスライドの内容をメモする必要がなくなります。すると参加者がメモするのはスライドの内容ではなく、私の話で大切だと思ったところです。その反応を見て話す内容を調整することができるのです。

続いてデザイナーによる、わかりやすいホームページのデザインについての話です。ユニバーサルデザインの視点で、具体例で話されます。面白い話なのでしっかり聞いているのですが、具体例では手が動きません。まとめ的な話で手が動きます。しかし、改善すべきことがわかっても、具体的にどのようにすれば解決できるのかを知らなければどうにもなりません。具体例を通じてそのことも話されているのですが、メモできないのです。経験がないから当然ですが、課題解決という視点が育っていないようです。午後は具体的に学校ホームページのコンサルティングを経験してもらうことになっているのですが、かなり難航しそうです。

学校ホームページのコンサルティングをするためには、まず学校が誰に対してどのようになってもらいたいと考えているのかをその学校のホームページから知ることが必要です。午前の講義でそのことには触れられていますが、ちゃんと理解しているかどうか不安です。そこで、コンサルティングにあたって最初に何をするのかという質問をしました。それに対して、まず校長に話を聞くという答が出てきました。他の学生に聞いても同じです。何を聞くのかというと、課題を聞くといった答です。やはり、不安は的中しました。それが明確でないからコンサルティングが必要なのです。そのことに気づかせると、今度はホームページが更新されていないからもっと更新するようにといった課題を伝えるというのです。午前中の話がまったく活きていません。そこで、「何を知るために」学校ホームページの「どこを見るか」について、日に何千ものアクセスのある学校を指定して、そのホームページを見て考えるという課題を与えました。学校ホームページに学校の伝えたいことが表れていることに気づいてもらいたいからです。
あまりグループ活動の経験がないようです。個人でホームページの記事を見ています。何を答えていいかわからないので、困って相談をします。少し意見を交換するとまた個人作業に戻ってしまいます。すぐに行き詰まるようです。午前中にあれだけメモしたのですが、だれもメモを見ません。メモは何かを解決するための材料ではなく、安心ためのもののようです。少し話し合って、また個人作業に戻ることが何回も繰り返されます。その中で1人の学生がほとんど話し合いに参加していないことが気になりました。ところが、その学生が何かを話し始めました。話が終わったところで、グループ活動を止めてどんなことを話していたかたずねました。それまで、改善点を見つけることを話していたが、その学生が改善点以外も知るものがあるのではないかという意見を出したということです。他の学生になるほどと思ったかを聞きました。なるほどと納得したと答えます。そこで、改善点以外に何があるかを聞いたところ、「誰が見る」「誰にとって」という言葉が出てきたので、もう一度その視点で見るようにとグループ活動に戻しました。他の学生に受け入れられたので、先ほどの学生は積極的に発言するようになりました。学生同士のかかわりが出てきました。
一度、出てきた言葉を整理してみます。「保護者が知りたいことを知らせる」という言葉に対して、「保護者が知りたいことを知らせればいいんだ」と返して、「保護差者に知らせたいことを知らせる」という言葉を引き出しました。ここでいったん休息をとりました。学校がホームページで伝えたいことがあることを実感したようです。午前中の講義がやっと今の活動につながってきました。興味が出てきたようです。何も言わないのに休息時間中に出身校のホームページを見ています。笑顔でかかわり合っていました。

先ほどでてきた、「知らせたいことがある」をキーワードにして、具体的にそれぞれの記事が何を知らせようとしているのかをグループで考えてもらいました。最初のころと比べてずいぶんかかわり合えるようになりました。
発表は、1人あたり何回も指名しましたが、その都度、何か異なったことを答えようとしてくれました。思ったよりたくさんのことに気づけました。しかし、「授業の様子を知らせる」「具体的な行事の様子を知らせる」といった、記事の表面的な内容の発表が多く、学校の「思い」までにはなかなか気づけません。ここで、あらかじめその学校の校長にお願いして撮影しておいた、ホームページへの思いと今考えている課題についてのビデオを見てもらいました。とても真剣に見ているのが、体が前のめりなことからもわかります。
感想を聞くと自分で考えてから聞いたので、よく理解できたという言葉が出てきました。「この記事にはこんな意味があったのか」「記事をもっとしっかり見ていたら学校の思いに気づけていた」「記事をさっと読んだだけでは思いに気づけなかった」と、自分たちのいたらないところにも気づいてくれたようです。いきなり校長に聞きに行っても、話を理解することができないことが実感できたのではないでしょうか。

本当は、この学校の校長が考える課題を解決しようというのが最後の課題だったのですが、今回の学生にはハードルが高すぎるので、先ほど休み時間に見て、全然更新されていないとその差にびっくりしていた出身校のホームページを題材にすることにしました。同窓会で出身校の校長にOBとしてホームページの改善について一言話すというものです。個別の課題ですが、もちろんグループで相談してもOKです。全員出身校が違うのですが、笑顔でよく話し合っています。このプログラムを通じて相談することのよさを知ってくれたようです。どの学生も、学校側にも事情があることを意識して、決して非難するような言葉は使いません。最初に更新していないと伝えると言ったときの口調と全く違います。そして、具体的にどのようにすればいいかということを、押しつけがましくなく提案します。今回の一連のプログラムがつながっています。ポジティブな提案ができていることに感心しました。たった1日でも進歩を見ることができました。

最後に振り返りを聞きました。「今までホームページを自分の視点でしか見たことがなかったが、今回、誰が見るかという視点や発信側の視点に気づけた。これからそんな視点も意識してホームページを見ようと思う」「とてもよく考えた。考えなければ(答や解説を聞いても)わからないことがよくわかった」といった言葉を聞くことができました。1日のプログラムとしては満足できるものになったと思います。

学生の様子を見ながらリアルタイムで課題を考えるという、緊張感のあるプログラムとなりました。インターンシップは私にとっても初めての経験だったので、とてもいろいろなことに気づくことができました。9月にもう一度別会場で行います。学生が変われば、様子が変わると思います。おそらく今回と同じ課題ということにはならないのではないかと思います。どのようなことが起こるか、とても楽しみです。貴重な経験をさせてくれた学生とこのような機会をくださった企業に感謝です。
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