模擬授業と学び合いを支える授業技術

昨日の日記の続きです。

社会科の模擬授業は地理の寒帯に住む人々の暮らしを考える場面で行いました。人間は環境に適応するために、いろいろな工夫をしていることに気づかせることをねらいにしました。

まず Google Earth で会場の場所を見せておいて、「今日はこの地方の話です」とカナダ北部に移動します。この衛星写真が8月のものであることを押さえて、白い部分が何かをたずねました。「雪」「氷」といった声がでます。「8月でも雪や氷があるんだね」と言って教科書から選んだ2枚の写真を見せました。イヌイットがスノーモービルに乗っている写真と犬ぞりに乗っている写真です。
ここで、資料を見る時にどんな情報に注意をするかをまわりと確認させました。いつのものか、どこか、何かといったことの確認が必要なことを押さえました。スノーモービルや犬ぞりについて簡単に説明した後、いつの写真かに話題を写しました。スノーモービルの写真が2009年であることを言って、犬ぞりの写真はいつごろの写真かを聞いてみました。明確な根拠を持って答えられる質問ではありませんから、すぐに答を私が与えます。2008年です。子ども役はちょっと驚いたようでした。「まだ犬ぞりを使っているのかな、どうかな?」と振ってから、「じゃあ、それぞれのよさをできるだけたくさん考えてみよう」とグループで考えさせました。
発表は、まずスノーモービルのよさからです。「速い」「便利(すぐ走れる)」「小回りが利く(機動性)」と出ましたが、それ以上は出てきませんでした。次に犬ぞりのよさを聞きます。こちらは面白い言葉が出てきます。「エコ(石油を使わない)」「クマに襲われたら助けてくれそう」「水に落ちたら引き上げてくれそう」と人間との関係に注目しています。エコということは、燃料がなくても食料があれば大丈夫ということです。水に落ちたら引き上げてくれるという意見は、トラブルがあった時のことを考えています。犬ぞりはそういったことにも対処できる優れた生活の道具であることに気づいてくれたと思います。このことを時間をかけて掘り下げることもできますが、今回はすぐに次の質問に移りました。「みんなはスノーモービルと犬ぞりのどちらを使いたい?」です。全員スノーモービルでした。みんながよさをたくさん出してくれた犬ぞりですが、やはりスノーモービルの便利さを選んだようです。ここで、実際にイヌイットたちがどちらを選んでいるかについては、自分たちで調べて見てほしいとして、模擬授業を終わりました。
環境に適応して暮らしていることと、機械化を含めた環境の変化が今までの生活を変えていくことに気づいてもらえばいいので、あえて解説しないことを選びました。
参加者の方が消化不良になるといけないので、私の調べたところをお話ししました。現在では観光以外ではほとんど犬ぞりは使われていないようです。最近は犬ぞり用ではなく愛玩犬として飼うのがブームのようです。ただ、グリーランドなどでは今でも使われているようです。スノーモービルでは氷の割れ目などが見えなくて落ちてしまうことがあるそうですが、犬ぞりでは先頭の犬が先に落ちることで危険を察知でき、他の犬や人間が落ちることを避けられるからのようです。

進行担当の先生のコメントは、考えさせるための発問や授業の組み立てが工夫されているというものでした。私が意識したことを指摘してくれました。客観的によく授業を観察していたと思います。

2つの模擬授業を通じてどんなことを感じたか、考えたかをそれぞれのグループで話し合ってもらいました。初任者は子ども役を通じて感じたことを多く話してくれました。「話し合うことが楽しかった」というように、かかわり合うことのよさに気づいてくれたようです。他の参加者からは、子どもの言葉をできるだけ活かすといった、授業の進め方についての感想が多く出ました。

最後に、学び合いを支える授業技術についてお話ししました。
基本は聞くことを大切にすることです。教師が子どもの話を聞く。子どもが教師の話を聞く。そして子どもが子どもの話を聞くことです。
子どもが安心して話をできる雰囲気をつくることも大切です。教師が子どもの言葉を受容すること。たとえ間違えても、最後はほめて終わることを意識することが大切です。
最近研修で特にお願いしているのが、全員参加の授業を目指すことです。わかった人と聞けば、わかった子ども、できた子どもしか参加できません。「困ったことはない」と問いかけ、子どもの困った感に寄り添い、たとえわからなくても聞いていれば、わかる、活躍できるようにすればどの子も授業に参加できます。もちろんわかる子ども、できる子どもの活躍場面も意識する必要があります。彼らには答を言わせるのではなく、友だちの考えを代わりに説明したり、ヒントを言わせたりと友だちを助けることで活躍させたいところです。
このようなことを、模擬授業の場面も例にしながら説明しました。

模擬授業を自分で行なうという、いつもとは違う研修でしたが、とても素直に反応してくれる参加者と進行担当の先生の事前の準備のおかげでとても快適かつ楽しく進めることができました。私のパフォーマンスの幅が少し広がった気がします。このような機会が持てたことに感謝です。
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