手軽なICT活用を提案

小学校の現職教育でICTの活用に関する講演を行いました。私の講演と実物投影機の操作方法、パワーポイントを使ってのスライド作成の2つのワークショップからなります。

講演は、「ICTで授業のどこを変える」という題で手軽なICT活用を提案しました。
たとえICTを使おうが使うまいが大切なのは授業で目指す子どもの姿です。それを手軽に実現する手段としてICTをとらえようというものです。ここで、大切になるのはICT機器の使い方以前の教師の授業力です。
ポイントの1つが、子どもの視線と教師の視線です。ICTを活用した時、子どもたちは電子黒板やプロジェクターの画面を見ます。一方の教師はどこを見るのでしょうか?意外と多いのが教師も子どもたちと同じ画面を見ていることです。子どもたちの様子や反応を見ないと次の授業展開は考えられません。どんな時でも子どもを見ることを意識してほしいと思います。
ICTの活用は、時間の短縮だけでも十分に意味があります。時間を浮かせた分、教師が何をするかを考えればいいのです。例えば子どもに動画を見せている間、教師は何をしているのでしょうか?動画が解説をした後、教師が再度まとめの説明をするのでしょうか?教師の役割は何かを考えてほしいと思います。

具体的な場面で、活用のポイントを説明しました。
教科書を大きく映すことで、子どもの顔が上がります。教科書を音読するのであれば、子どもの口元を見ることができます。
子どもが考えの根拠とした教科書の箇所を、電子黒板で線を引いたり、実物投影機で写している教科書に色の着いた付箋を貼ったりすることで、簡単に根拠を共有できます。
算数のように同じ分野の学習を毎年積み重ねていく教科では、以前の教科書を映すことで、簡単に過去の学習内容を思い出させることができます。

実物を見せたり、実演するのに手元を拡大して見せれば、子どもを前に集めたりしなくても、席から十分見ることができます。時間の節約になるだけでなく、カメラのアングルを変えることで、いろいろな視点で見せることも可能です。また小さな生き物などは、拡大するだけでなく、ボタン一つで動きを止めて見せることができます。
作品の制作などは、途中の様子を記録することで、制作のポイントや工夫を共有することもできます。

ノートを映すことで、板書する時間を短縮できます。面白いものは記録しておけば、他の学級や、次年度以降に「こんな考えの人がいたよ」と場所と時間を越えて共有することができます。また、ノートの後半を隠して映し「こんなことを書いている人がいるよ」とヒントにしたり、一部を隠して「ここに何が書いてあると思う?」と友だちの考えを想像させたりして、思考を共有することもできます。

拡大することで小さな紙に書いた物でも、全体での発表に使えます。大きな紙に発表を書かせると、思った以上に時間がかかるものです。A4の紙に書かせて拡大すればムダな時間を減らすことができます。
考えを付箋紙に書いてグループで整理し、その結果をそのまま拡大するだけで、簡単に全体で共有することもできます。

教師がリアルタイムで書くことに特に意味がない内容であれば、板書する代わりにあらかじめスライドを作成しておけば、時間を大きく節約できます。手順の説明などは、1行ずつ表示することで、余計な情報を見せずに一つひとつの説明に集中させることができます。全部を表示したあとそのままにしておけば、作業中にも簡単に振り返ることができます。大切なポイントを子どもに言わせて、その場で色をつけるといったことも簡単にできます。
何枚かのスライドを準備しようとすれば、授業の流れを整理しなければなりません。自然に教材研究をすることになります。授業の記録として保存しておくことも簡単です。また、自由に変更もできますから、他の教師がつくったものを修正することで、自分に使いやすものにすることができます。互いの教材研究の結果をよい形で蓄積、共有できます。

資料を大きく映して、全員で同じものを見ることで、互いの気づきを共有しやすくなります。「資料のどこを見て、あなたは気づいたの?」と気づいたことではなく、根拠となったところをたずねて、画面で共有するのです。自分で気づくことができなかった子どもは、友だちの気づきを聞いても、結論を知るだけで自分で気づけるようにはなりません。根拠となる部分を共有することで、自分で気づくことができるようになります。教師がどのように働きかけるかが大切です。

動画は、後から振り返りながら内容を深めようとすると、見落としていた子どもは参加できません。根拠となる部分をすぐに確認できるようにしておく必要があります。短めの動画を使い、振り返った後、もう一度見せて確認させるという方法もあります。
動画を見た後で、教師が解説してまとめてくれることを知っていると、子どもにとって動画を見る時はリラックスタイムになります。教師が後からまとめるのではなく、子どもたちにまとめさせたり、見た後の質問内容をあらかじめ伝えたりすることで、効果的に見せることができます。

インターネットで資料を探させる時には、資料の活用の3つのフェイズを意識する必要があります。「必要な資料を見つける」「資料を読み取る」「読み取った内容をもとに考える」です(資料の共有参照)。発表の場面では、特に「必要な資料を見つける」ことを意識して、結論ではなくどのようにして見つけたかを発表させることが大切です。また、調べるのはコンピュータ教室で、発表は教室に戻ってからすることがよくありますが、この時、子どもが発表したページを実際に全体で確認できるような環境を準備しておくことが重要です。その資料を見つけられなかった子どもは、ただ結論を聞かされるだけで、その根拠を共有することが難しくなるからです。

プレゼンテーションソフトのスライドをフラッシュカードとして使うこともできます。紙のものと大きな違いはありませんが、ワイヤレスマウスなどを使うことで、子どもの反応を見ながらテンポを上げたり、前のカードに戻ったりとタイミングを簡単にコントロールすることができます。ちょっとしたことですが、フラッシュカードのよさをより引き出すことができます。

このようなことを話させていただきましたが、思った以上にベテランの方の反応がよかったのが印象的でした。ICTに詳しくなくても、授業のポイントはよくわかっていらっしゃるからでしょう。教師の役割や授業で活かすポイントといったところでしっかりうなずいていただけました。

ワークショップは、研修担当の先生が講師となられて進みましたが、皆さん前向きで、楽しそうに取り組んでいました。2学期以降、ICT機器の活用が進むのではないかと期待できます。先生方の変化を校長から聞かせていただくのが楽しみです。
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