若手の授業で考える(その1)

今週の頭に、小学校で若手中心に4人の授業アドバイスをおこなってきました。市内の全小学校での授業アドバイスの一環です。この学校で一巡しました。

2年生の算数の授業は、dLの導入の場面でした。授業者は私たちが見ているのでかなり緊張しているようでした。落ち着かない子どもや支援の必要な子どもがいますが、授業者はこの子どもたちにかなりエネルギーをとられていました。机間指導も気になる子どもたちのところを回って指導をして終わってしまいます。そのため、他の子どもとのかかわる時間が少なくなっていました。
子どもたちが勝手に発言する場面が目につきますが、授業者はその発言をすぐに拾ってしまいます。きちんと全体に対して発言させ、共有することが必要でしょう。
1Lを10に分けた1つ分を1dLと定義します。1Lますに色水を途中まで入れて、目盛りを確認させます。小さくて見にくいので全員を前に並ばせて順番に見せましたが、時間のムダです。実物投影機があるのですから、ここは活用したいところでした。授業者が前に座って○付けをしました。順番待ちの間子どもが落ち着きません。○をもらった後、席のところでごそごそして他の子どもの集中を乱している子どももいます。授業者は○付けに集中して全体を見ることができていないので、適切な指導ができませんでした。教師が全員を回って○付けをするようにした方がよいでしょう。
与えた厚紙を1Lとみて、dL単位の目盛りを書かせるために、目盛りを9個書くように指示しました。子どもから「9目盛り?」という声がでました。納得できる疑問です。しかし、授業者は取り上げませんでした。発言した子ども以外にも同じ疑問を持った子どももいるはずです。子どもたちは指示されたとおりに活動することを求められていると感じてしまいます。これでは、次第に考えることをやめてしまう危険性があります。
1L=10dLとLとdLの関係を確認し、大切だから覚えるように指導しました。1Lを10に分けた1つ分を1dLと定義したのですから、そこから出てくる性質です。定義から導き出すことが必要です。大切だから覚えることではないのです。
授業者は授業後の全体会ではとてもよい表情を見せてくれました。緊張していたためいつものように授業を進められなかったようです。悪い言い方ですが、気になる子どもはちょっと放って置いて、まず大多数の子どもたちとの関係をしっかりつくることをお願いしました。2学期からもう一度関係を作り直すことをしてほしいと思います。

1年生の授業は音楽でした。
授業者はピアノを立って弾くことで、子どもたちの活動をよく見ていました。音楽が専門教科ということですが、納得させられます。
子どもたちはとても楽しそうに集中して活動します。全員がしっかり参加しています。1年生とは思えないほどです。
授業者は前でしゃべらずに子どもの中に入って指示をすることがあります。子どもとの距離を縮めようとしているのでしょう。死角に入る子どもたちは姿勢を変えて授業者を追いかけようとします。ところが、途中で追いきれなくなって集中力をなくします。これに限らず、黒板を向いている時など、授業者が子どもを見ていないと集中力が落ちます。そのため、板書を終わって前を向いた後すぐの活動は、必ずといっていいほど子どもたちがばらばらになります。活動に入る前にちょっと間をおき、集中させる必要があります。教師が見ていないと集中力が落ちるのは、教師がプレッシャーをかけていることが多いのですが、この授業者の場合はそうではありません。子どもは授業者との関係がよいので、見てくれている時に一生懸命に頑張ろうとしています。しっかり集中しているので、その反動で見ていない時は力を抜くのです。このことは悪いことではありません。ずっと集中することは、低学年では無理があります。授業者が理解して適切に対応すればよいのです。
一問一答の場面が多いことが気になりました。子どもたちは指名されたいので一生懸命に手を挙げますが、指名されないとがっかりします。ため息も聞こえてきます。子どもは友だちの発言をあまり聞いてはいません。授業者がすぐに発言を板書するからです。また、板書をしている間は先ほど述べたように集中力が落ちます。他の子どもにつなぎ、発言の内容を全体で共有し、もし板書するならその後にするとよいでしょう。また、たくさんの子どもが挙手をする場面でも1割くらいの子どもは手を挙げません。ここで指名しても数人しか活躍ができませんし、挙手しなかった子どもは参加することはありません。このような時は、隣同士やまわりで確認させるとよいでしょう。子どものしゃべりたいという欲求を満たすことができますし、わからなかった子どもも友だちの答えを聞くことでわかるようになります。
言葉にリズムつける活動で、子どもたちに好きな言葉を選ばせました。テンションが上がります。字数の制限などをつけるとテンションの上がりすぎを抑えることができます。思いつくままの活動はテンションが上がりやすいことに気をつけることが必要です。
リズムを手で打ちながら言葉を言うのですが、友だちの発表がよくわからないことがありました。授業者は「どう」と聞きますが、反応はいまひとつでした。そこで授業者は「タン」「タ」と書いた丸い色紙を言葉の下に貼りました。リズムを視覚化することで子どもたちは一気に集中が戻りました。うまい方法です。
この活動の途中で、支援を必要とする子どもが「言えない」と軽いパニックになりました。これまでは短い言葉だったのでリズムをとって言うことができたのですが、長い言葉になってうまくできなくなったのです。授業者は子どものそばに行って落ち着かせました。あまり長くかかわると他の子どもが嫌になってしまうので、きりをつけて先に進みます。よい判断だと思います。次は今まで練習していたいくつかの言葉を続けてリズムをとる活動です。4つの言葉の順番を子どもに決めさせます。指名した子どもは一番長い言葉を最初にしました。この活動のとき先ほどの子どもは気を取り直して参加しました。一生懸命にリズムを取ろうとしたのですが、長い言葉の途中で挫折してしまいました。結果論ですが、最初は短い言葉から順番に言うように授業者が指示して活動すれば、その子ども最初はうまくやれて気分が変わったかもしれません。支援を要する子どもの対応は難しいのですが、どのような活動なら参加できる、どれくらいまで相手をしなくても我慢ができるかといったことを把握し、学級全体とのバランスを意識してあまりかかわり過ぎないようにすることが大切です。
授業者は子どものつぶやきをうまく拾います。「○○さん、いいことを言った。みんなに言って」と全体に対して言わせます。できれば、「言って」ではなく、「聞かせて」とIメッセージにした上で、「みんなで聞こう」と全体に声をかけたいところでした。
子どもが間違えたことを発言したときに、「ちょっと違う、おしい」とフォローして座らせましたが、発言した子どもの表情は少し暗くなりました。しばらく顔が上がりません。次の問いに移るまでちょっと沈んでいました。こういう場面は、「なるほど、・・・と考えたんだね」と受容して、他の子どもを指名します。子どもの考えを対比して、間違えた子どもに再度確認し本人に修正させるのです。間違えたままにせず、最後は必ず自分で修正したことをほめて終わるようにします。低学年では子どもの立ち直りは早く、この子どもも次の問いには元気よく手を挙げていましたが、自我が発達してくる中学年以降は間違えることを嫌がるようになります。このようなことが続くと積極的に挙手をしなくなるので注意が必要です。
音楽教室からの移動は番号順に整列してから授業者が先導して行います。学校のルールか授業者のルールかわかりませんが、低学年では必要なことだと思いました。
授業者は、経験年数は少ないのですが、基本的なことがよくできていました。その分、指摘すべきことがたくさん見えます。とても前向きな方なので、アドバイスをしっかりと受け止めてくれたように思います。あせらず、できそうなことから試してみてほしいと思います。

残り2人の授業については次回の日記で。
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