チームで考える英語科

先週、私立の中高等学校で授業アドバイスを行ってきました。

夏休み前ということで、子どもたちの様子が気になります。朝から集中力を失くしている子どもが目立つ学級と、ほぼ全員が集中している学級があります。1年生のように学年全体が比較的よい状態であっても、学級差があるのです。実はこの学級差は教師の差でもあります。授業者が一方的にしゃべっている授業では子どもは厳しい状態です。この学校の子どもたちは、受け身の時間が長いと集中力が持たないのです。国語科の若手がグループを使った授業に挑戦していました。まだ、始めて2回目ということでしたが、子どもたちはよく参加していました。グループ活動の有効性を実感してくれたようです。グループ活動のポイントはまだわかっていませんでしたが、前向きな姿勢が評価できます。ゴールや目標、評価基準を意識し、グループになる必然性のある活動を目指すことで、きっと大きく進歩していくと思います。

気になる子どもが何人かいるために授業が進めにくいという学級を観察しました。確かに目につく子どもがいますが、この日は、たまたま落ち着いていたということで、それほど問題となる状態ではありませんでした。それよりも、意欲のある子どももたくさんいるのに、その子どもたちが活躍する場面があまりないのが気になりました。受け身の時間が続き、次第に集中力が落ちてきます。活動を小刻みにして、作業を適宜入れるといった変化を与えることが、この子どもたちの集中力の持続に効果的だと思います。便覧などを使って活動をさせようと思っても、手元に準備していない子どもがその度にロッカーに取りに行きテンポが悪くなります。実物投影機などを使うことで解決できる問題ではありますが、各教室ですぐに利用できる状況ではないので、なかなか活用が進みません。この点を改善できるように働きかけたいと思います。
気になる子どもは、先生が注意をすると、かえってその後まわりの子どもに声をかけたりしてじゃまをします。ペアレントトレーニングの発想で、気になる行動でも他者に影響を与えないものはできるだけ無視して、その行動が収まった時にほめ言葉をかけることを提案しました。やる気のある子どもがたくさんいる学級なので、その子どもたちにとってよい授業をまず目指すことが大切だと思います。

この日は英語の授業のアドバイスが主目的でした。授業前に英語科の先生からGDMについて質問が出ました。以前に紹介したことがあったのですが、今回は非常に熱心です。学力は全般的に低いのに英語力だけが非常に高い子どもがいて、聞いてみると中学校時代はGDMで学習していたというのです。この子どもにこれだけの力をつけるということは本物だと興味を持ったのです。同じ学校の出身者が何人かいるようですが、英語力はみな高いようです。子どもたちから授業で使っていたワークシートを手に入れたりもしていました。英語科で話を聞きに行きたいと非常に前向きです。先生方は授業スタイルがよくわかっていなかったために、ワークシートが主体だと思われていたようです。私から、授業のスタイルを説明した上で、次回訪問時に資料をお渡しし、概略を理解していただいた上でこの先どうするかを決めることにしました。
高校1年生の授業は、前回私が提案したバディ(相棒)を活用したグループ活動が中心でした。
子どもたちは英語の授業に期待感があるのでしょう。復習問題をやっている時でも、集中力が違います。この日のグループ活動は、友だちのプロフィールを聞きあって、そのプロフィールを元に紹介文をつくるというものです。ペアで会話をし、質問する側の子どものバディはプロフィールを聞き取りメモして渡します。授業者は「しっかりメモしてあげないとバディの人が紹介文をつくれなくて困っちゃうよ」とプレッシャーをかけます。「大変だあ」という声が上がります。子どもたちは決して後ろ向きな姿勢になったわけではないのですが、「しっかり助けてあげてね」といった前向きな表現で伝えたいところです。この活動で気になるのが、プロフィールを質問される子どものバディに明確な役割がないことです。4人のうち1人が手持ち無沙汰になってしまいます。授業者は会話の時の視線や表情などにも注意をするように指示していたので、バディのよかったところを伝えるといった役割を与えるとよかったでしょう。
中には活動にうまくは入れない子どもがいます。授業者はその子どものところに行き声をかけます。ここで意識してほしいことは子ども同士をつなぐことです。参加できない子どもだけに声をかけると、他の子どもたちはその子どもは先生がかかわってくれるから自分たちには関係ないと思う危険性があります。こうならないために、必ず他の子どもにも声をかけ、一緒に活動するように働きかけてほしいと思います。
子どもたちは、積極的に活動しますが、テンションが高めなことが気になります。この活動の評価基準が明確でないため、活動そのものが目的化していることが原因のようです。このことにも注意が必要です。
早く終わっているグループが遊び始めています。授業者はいったん活動を止めて、追加でオリジナルの質問を考えるように指示をしました。ところが、子どもたちはなかなか集中しません。いったん集中が途切れてしまったことと、とりあえずやるべきことは終わっているからと気持ちが弛んでいることが原因です。最初からオリジナルの質問までをゴールにして、進め方を、まず用意された質問をする、次にオリジナルの質問をすると2段階にするとよいでしょう。途中でも第1段階が終わっていれば、紹介文をつくる活動に移ることができます。子どもたちは、遅くても待っていてもらえると安心しているところがあります。そうではなく途中で終わることもあると意識させて、素早く進めなければと集中力をアップさせることも必要なのです。
授業者は、最後に「バディを頑張った人」と聞いて挙手させました。高校生ともなるとなかなか自分で頑張ったとは手を挙げません。ここは、「バディがいて助かった人」と聞きたいところです。この他にも評価の視点をたくさん用意しておいて「バディが○○できていた人」といくつも聞いてあげれば、バディの仕事の必然性も生まれてきます。

空き時間の英語科の先生が何人も参観していました。授業後も手の空いている先生方が集まって一緒にアドバイスを聞こうとしてくれます。この学校の英語の授業をよくしていこうとチームで考えています。これはとても素晴らしいことです。今はグループを活用することで子どもたちの授業への参加を促していますが、一歩を進んで英語力をどうつけていくかに悩んでいます。その突破口としてGDMが使えないかというわけです。GDMが活かせるかどうかは別にして、こういう前向きな姿勢であれば、必ずよいものが生まれてきます。この学校にあった英語の授業メソッドがきっとできることでしょう。私もできるだけのお手伝いをしたいと思っています。
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