授業の進め方について考えさせられた1日(その1)

先日、小学校で若手中心に4人の授業アドバイスをおこなってきました。市内の全小学校での授業アドバイスの一環です。

5年生の外国語活動の時間は3年目の教師でした。
”How many 〜?”を使った表現の学習時間でした。復習で、フラッシュカードを使って子どもに数を英語で言わせます。1〜10まで、11〜20までをそれぞれ順番に、次に逆順で言わせます。子どもは元気に声を出していますが、授業者が子どもの口元をしっかり見ていないのが気になります。また、常に順番なので数と英語が直接結びついているのか気になります。フラッシュカードをランダムに使えって練習すれば時間もかからずいいのですが、いったん止めてフラッシュカードを黒板に貼りはじめました。それから指さした数の英語を言わせる活動を行いました。カードを黒板に貼っている時間がムダですし、その間子どもたちの集中力が下がっていくのがわかりました。また、ここでも授業者は黒板に貼ったカードばかりを見て、子どもたちを見ることができていませんでした。
子どもたちは、思った通り、数と英語がダイレクトにつながっていません。先ほどと違って素早く反応できません。数と英語が結びつくようになる活動が必要です。ボールやブロックなどの実物を用意して、その数を英語ですぐに言わせる。英語で言った数を指で示すといった活動をもっと行うべきでしょう。
デジタル教材のチャンツを使って“How many 〜?”で数を聞いて答える練習を行います。一通り練習してから、”How many 〜?”の意味を問います。挙手、指名して「いくつ」という日本語を言わせましたが、あまり意味のあることではありません。自信がないのかほとんどの子どもが挙手をしません。答えたのは知識のある子どものようでした。せっかくチャンツを行った後なのですから、具体的な場面で子どもたちに質問して答えさせれば、意味がわかっているかどうかは確認できます。子どもに活動をさせながら、自分でわかったという感覚を持たせたいところです。
授業者、”How” “How”、“many” “many”と区切って読んだ後、”How many” “How many”と言わせるなど、いろいろとリズムを変えて練習します。工夫をしているように見えるのですが、本質がよくわかっていないようです。短く区切るのは、一つひとつの単語の発音を確認するため、連続するのはイデオムとして一続きの言葉と認識させるためです。子どもの反応や口元を見ながらスピードやリズムを変えるのが普通ですが、授業者は子どもを見ずに、なんとなく恣意的にリズムを変化させていたようです。”How many”としっかり言えているのに、また区切って練習させていました。
この日の主活動は、”How many apples?”を使ったビンゴです。悪しきビンゴの活用がこの市では蔓延しているようです。
複数形をまだきちんと学習していなかったのでしょうか。意図的かどうかわかりませんが、授業者は”How many apple?”と”s”を落としていました。ワークシートを配って活動の手順を説明します。自分の決めた数だけ、かごに入ったりんごの絵を赤く塗ります。塗ることの意味が今ひとつわかりません。英語活動の本質に関係ないことに時間を使いすぎているように思います。10までの数と、11〜20までの数の2回ビンゴを行います。授業者は数の表現の練習をたくさんしたかったと言いますが、子どもたちは何度も”How many apple(s)?と同じ質問をし、決まった数を答え続けるだけです。授業者は私に指摘されてこの事実に初めて気づいたようでした。
この時間で授業者が子どもたちを具体的にほめる場面がほとんどありませんでした。私たちが見ているので緊張していたのでしょうか。笑顔もほとんどありません。それでも、子どもたちのよい表情をたくさん見ることができました。休み時間に一緒に遊んだりして、授業以外の場面で子どもたちとのコミュニケーションがとれているようです。このことは決して悪いことではありませんが、授業の中でしっかりとコミュニケーションをとれないと、子どもたちは授業に集中しなくなっていきます。このことを意識してほしいと思いました。

初任者の算数の授業を見ました。2年生の担任です。
テープ図を使っていくつ数が増えたかを考える場面です。ちょっと緊張気味でしたが、明るく子どもたちと接しています。1人、気になる子どもがいました。授業の最初、体を机の上に投げ出してごそごそしていました。指示されても教科書のページをすぐに開きません。授業者が気づいてページをめくってあげます。また、プリントを配る時におかしな行動をとります。この子どもは自分の分のプリントを取らずに後ろに送ります。授業を拒否しているのかと思いましたが、どうやらそうではありませんでした。あとから、授業者に申し出てプリントをもらっているのです。先生にかまってほしい子どものようです。どこまで授業中にこの子どもとかかわるべきかの判断は個別の状況がわからないので何とも言えませんが、あまりかかわりすぎないように注意をする必要があると思います。
花が昨日は8個、今日が25個咲いていて、何個増えたかという問題を、テープ図を使って解きます。テープの長さをどれだけにするかを子どもたちに確認します。目盛りがついている台紙の上で8の長さはこれでいいかを子どもたちたずねます。長いテープを見せると子どもたちはダメだと言いますが、その理由がわかりません。基準の長さを示していないので判断はできません。子どもたちは台紙の目盛りを元に判断したのでしょう。続いて台紙の4目盛り分の長さを示した時「いいです」「ダメです」に分かれました。しかし、授業者はこれでいいと進めてしまいました。「ダメです」と言った子どもは目盛りの数が違うからそういったのでしょう。算数の指導としての是非はともかく、意見が分かれれば子どもたちに発表させ納得させなければいけません。基本的な姿勢に疑問を感じます。そもそもテープ図に目盛りをつけないのは、目盛りがあればそれを読むことで答を見つけることができてしまうからです。テープの関係に目をつけて、求める部分の長さはどのような演算で求められるかを考えるためのものです。目盛りを使うのであれば、ブロックでよいのです。授業者は、子どもが図を写すための目安として目盛りを用意したのですが、その意図は子どもにはわかるはずはないのです。子どもの混乱を誘発します。
続いて、8の長さを今日のところにそのままおろして書くように指示します。なぜ8をそこに書くのか子どもはわかりません。言われて作業をするだけです。中には、長さがおかしくなっている子どももいます。授業者は教科書の図に8(個)が書きこまれているので、同じ図にするために書かせたのかもしれませんが、思考の過程が全くわかっていません。続いて25を書きこむように指示しましたが、8の横に25としてしまう子どもが出てきます。この間違いは授業者が誘発しています。もし、8個を基準として考えさせるのであれば、「昨日は8個だったんだね。それが1個咲いて9個になって・・・」とテープを伸ばしながら、「・・・どんどん咲いて、何個になったんだっけ?」と問いかけ、「25個」「そう、25個になったんだね」とテープを貼って、「どこからどこまでが25個?」と確認すればいいのです。
または、「今日はいくつ?」と聞いて、昨日の8(個)の下に25の長さのテープを貼って、25(個)とした後、昨日と今日を比べて、「増えたのはどこ?」とたずねて、8個の長さを線で下につなぐか、移動して重ねれば関係はすぐにわかります。1年生でやった「違い」を考える時の発想です。
いずれにしても、1年生で引き算をどのように学習してきたかを踏まえて、授業を組み立てるべきです。しかし、授業者1年生の教科書を見てはいませんでした。経験のあるものでも、どのように学習してきたかを教科書で確認するのは当たり前です。初任者ならなおさらのことです。高いものではないので、小学校の6年分の教科書、できれば中学校の3年分も手元に置いておいてほしいと思います。
机間指導も中途半端なものでした。子どもたちの何を見るのかを自分の中で明確になっていません。自分でポイントを意識していないと漫然と見ることになります。間違えている子どもを見つけると個人指導に入ります。まず、どのくらいの子どもが間違えているかを判断しないと、手が回らなくなってしまいます。
厳しいことを書きましたが、子どもにとっては担任が初任者かどうかは関係ありません。1人の教師として責任を持って指導しなければなりません。授業者は私の指摘を真摯に受け止めてくれたように見えました。もうすぐ夏休みです。気分をリフレッシュさせ、2学期に向けてどのように授業をつくっていけばいいのか、もう一度基本からじっくり考え直してみてほしいと思います。

残り2人ついては、次回の日記で。
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