小規模校で保護者向けの講演

先日、昨年度まで2年間訪問させていただいた小学校で、保護者向けの講演を行ってきました。山の中の小規模校です。40名余りの児童の保護者が全員参加されました。普通の規模の学校では考えられないことです。学校、子どもへの関心の高さのあらわれだと思います。「小規模校の保護者としての子育てについて」という演題で話をさせていただきました。

小規模校だからといって、子育てが大きく変わるわけではありませんが、1人の子どもに対して教師を含め大人たちがかかわりすぎる傾向があることは注意を要します。特に学校では、個別に対応をする時間を確保しやすいので個別指導に頼りやすくなります。このことや子どもの絶対数が少ないことが原因で、子ども同士のかかわり合いが少ない傾向があります。また、困った時に教師や大人が個別に対応してくれることに慣れてしまい、個人や友だちと相談して解決する力も弱くなりがちです。この学校で初めて授業を見た時に、教師が個別に指導している間、子どもたちが手のつかない状態でじっと順番が来るのを待っていたことが、印象深く思い出されます。先生方が意識をされたので、昨年はずいぶん様子変わってきていましたが、常に気をつけていてほしいことです。このことは家庭でも同様です。子どもを王様にしないこと、家族の一員としてしっかりと役割を持たせてほしいことを強くお願いしました。
また、条件付きで子どもを認めることをしないことも合わせてお願いしました。「あなたがいい子だからうれしい」「勉強でよい成績をとったから、○○を買ってあげる」といった接し方をすると、自分はいい子だから、勉強でよい成績をとったら認めてもらえると思うようになってきます。このことが、「いい子でいろ」「よい成績をとれ」というプレッシャーとなって子どもを苦しめるようになっていくのです。無条件に「あなたがいてくれてうれしい」「あなたが私の子どもでよかった」というメッセージを発し続けてほしいのです。

また、中学校に行くと規模が大きくなりますから、友だちとのかかわりの様相も大きく変わってきます。小規模校の子どもたちはこの差が大きいため、中一ギャップの問題も起きやすくなります。友だち関係の基盤が弱いため、新しい人間関係をうまくつくれなかった時に支えきれないのです。少なくとも、家庭だけは子どもの居場所になっていないと、どこにも行き場がなくなってしまいます。家庭内で自己有用感を持たせることがとても大切になるのです。

最後に、子どもたちとネットの問題についての資料をお渡しして、よく読んでいただくようにお願いしました。人間関係でもまれていないだけに、子ども同士のトラブルも起きやすいでしょうし、日ごろ大人に依存しているだけに、ネットの向こう側にいる大人の悪意に気づけない可能性が高いことが心配されます。ネットのトラブルはほとんどが使い始めて1年以内に起こっています。まだ先のことだとのんびり構えずに、小学生の内から対応を考えてほしいと思います。

保護者だけでなく、手の空いている先生方も参加して熱心に聞いていただけました。少しでも皆さんのお役に立つことができたのであれば幸いです。

講演後、今年度赴任された校長と、教頭を交えていろいろと授業について話をする時間をいただけました。授業改善に対して意欲的な先生方から、とてもよい刺激をいただきました。ありがとうございました。また、機会があればぜひ子どもたちの姿を見せていただきたいと思います。
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