研究会で刺激を受ける

先週末は、愛される学校づくり研究会に参加してきました。前半はICTを活用した授業研究、後半は新城市教育委員会教育長和田守功先生の講話でした。

ICTを活用した授業研究は、今年2月の愛される学校づくりフォーラムで使った機器を利用して模擬授業で行いました。教材は中学校数学の「17段目の秘密」です。子ども役の大人でも「あれっ」と考えていしまう教材です。授業者はていねいに指示をして進めていきますが、ちょっとていねい過ぎたようです。課題把握までに時間がかかりすぎました。自由な活動が少なかったので、子ども役からの気づきがあまり出てきません。問題解決のための情報が少ないため子ども役は行き詰まってしまいました。
授業検討法の研究のための模擬授業でしたが、授業検討は行いませんでした。参加者や司会者の技量や経験に左右されない授業検討法を目指しているのですが、司会者が意図的にコントロールしないと本来取り上げるべき場面が浮かび上がらないと判断したからです。その代り、なぜそうなったのか、どうすればいいのかについて話し合いました。デジタルとアナログの違い、ICTを活かすための視点など、たくさんのことがわかりました。この内容については、愛される学校づくり研究会のコラム「楽しく、手軽に授業改善しよう」の第4回で報告する予定です。

和田教育長の講演は「Open the window and look outside.」というタイトルで、今、和田先生が推し進めようとされている小学校英語の強化に関するお話が中心でした。
最初は、最近の教育界の話題についてという私たち会員からのリクエストに応えて、教育委員会制度の改革についお話いただきました。教育長という立場で今回の改革の背景、要点をわかりやすく説明されます。特に、首長、教育長の権限強化に対して、それぞれが暴走しないような歯止めの必要性を説かれました。新城市ではその教育の根源的あり方を規定する教育憲章を制定することで、首長が変わったからといって教育の現場が混乱しないようにするようです。なるほどと思うと同時に、憲法の解釈を簡単に変更しようという昨今の政治を鑑みるとそれでも一抹の不安を感じざるを得ません。この不安が杞憂であることを祈るばかりです。
学校現場に関して校長のやれることは多いはずだということを強く伝えられました。だからこそ、地域住民の意思の反映をしっかりしなければならないという主張です。市の全体の教育を担う立場だからこそ、校長にそのことを強く願うのだと思います。

小学校英語教育の強化の話は、和田節全開でした。新しい城を意味する名前のついた都市で行う「世界新城会議」でのことがきっかけとなって、小学校教育の強化を強く思うようになられたようです。
同行した新城の若者たちが、会議の場で英語を話せない。他国の若者は英語圏でなくても皆話せる。彼らになぜ英語を話せるのかと聞くと、異口同音に「学校で習ったから」と答える。英語を話せるかどうかは学校教育の問題だ。また、新城の若者も自分たちは世界へ出ていくためにはもっと英語力を含めたコミュニケーション力を鍛えなければ、そして自国の文化をもっと知って紹介できるようにならなければと強く思ったようだ。このような話を具体的なエピソードをもとに楽しくまた強く語られました。
私は、今回同行した新城の若者は、今は英語を話せなくても将来きっと話せるようになると思います。自らが英語を必要と感じたからです。大切なのは英語を話せるようになろうという意志です。中高と6年、そして大学でも学ぶはずなのに話せないのは、カリキュラムにも問題があるのかもしれませんが、本当に話せるようになりたいと思っていないからではないでしょうか。漠然と話せればいいと思っているくらいではダメです。そのために相応の努力をし続けることが必要です。学生時代、私とそれほど英語力が変わらなかったエンジニアの友人は、現在TOEICの点数が900を優に超しているそうです。海外で仕事をしなければいけないので、必要に迫られて身につけたのです。
小学校の英語教育に関しては、子どもたちにその必要性を感じさせるような取り組みがなければ単に強制になってしまいます。伝えたい、伝わった、もっと伝え合いたい。そういう気持ちを持たせる環境が大切です。もちろん英語が話せるようになるためのカリキュラムも研究する必要があります。小学校英語の現場で、英語嫌いを量産しているのに出会うこともあります。ALTは英語が話せるだけの人がほとんどです。私たちが外国で日本語を教える力がないのと同じです。そんなALTを活かすには、カリキュラムがよほどしっかりしなければなりません。しかし、このカリキュラムで英語が話せるようになるのなら、べつに学校で習わなくてもだれでも簡単に話せるようになるはずだ。そう思うことも度々です。
小学校英語の強化に頭から反対しているわけではありません。それ相応の準備と努力がなければやるだけムダどころか、かえってマイナスになってしまうと思うのです。
新城市の子どもたちが英語を話せるようにするために、どのような具体的な方策を取られるのかは語られませんでした。具体的な姿が私たちの前に姿を現すのはもう少し先でしょう。パワフルな和田先生のことですから、きっと数々の課題を突破して「おおっ」と言わせてくれることと楽しみにしています。たくさんの刺激をいただけた講演でした。和田先生ありがとうございました。
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