「コミュニケーションを意識した授業づくり」について講演

一昨日は小学校の現職教育で講演をしてきました。「コミュニケーションを意識した授業づくり」と題して、授業を進めるポイントをできるだけ具体的に話をさせていただきました。

教師と子どものコミュニケーションについては、教師が受容することを第一にするようお願いしました。間違った答でもちゃんと受け止めて聞いてもらえる、先生がいつも見守ってくれている。こういった安心感を持たせることで、初めてコミュニケーションが成り立ちます。言葉を交わさなくても、一人ひとりの子どもを笑顔で見るだけでもコミュニケーションの基本となる人間関係をつくることができます。コミュニケーションを意識した時、子どもに外化を求めることが重要になりますが、こういった関係をまずつくることが求められます。発言をすることに対するハードルの高い子どもはたくさんいます。学年が上がれば自信がないとなかなか発言できません。うなずく、首をかしげる、そんなちょっとした動作をとらえてポジティブに評価することが大切になります。教師が子どもたちをどれだけ見ているかが勝負です。

子ども同士のコミュニケーションを考える時に基本となることは、友だちの発言を聞くことに価値を与えることです。友だちの発言に対してどう思ったか、どう考えるかといったことを常に問いかける必要があります。また、教師の話を聞いて理解することが学習ではなく、自分で考える、自分たちで話し合って答を見つけることが学習であるという価値観を持たせる必要もあります。「わからなければ聞けばいい」とわからないことを聞ける子どもに育てることが大切です。
よくできる子どもは、自分はできたからいいと友だちの発言を聞かないこともよくあります。自分の考えを発表させるのではなく、友だちの考えを代わり説明することを求めることでかかわりを持てるようになります。他者の考えを理解することを評価することで、コミュニケーションが活性化するのです。

子どもたちの活動量を増やすためにも、ペア活動やグループ活動は有効です。ペア活動では聞く側に役割を持たせることが大切です。自分が他者とかかわって役に立ったという自己有用感を持つことで、コミュニケーションを取ろうとする子どもに育っていきます。
グループ活動では、話すことよりも聞くことを大切にしてほしいと思います。自分の考えを持てていなくても、友だちの考えを聞いて自分のものとすることができれば充分です。友だちの考えの中から、自分でこれがいいと選ぶことができればそれも立派な自分の考えを持つことです。こういった評価をしてほしいのです。グループで答を一つにまとめるのではなく、友だちの意見を聞くことで自分の考えをまとめることを大切にしてほしいとお願いしました。

最初のうち少しかたい先生もいらっしゃいましたが、次第によく反応してくださるようになりました。子どもへの指導の具体例を問いかけた時、Iメッセージでほめるやり方を答えてくださる方もいました。素敵な先生がたくさんいそうな学校でした。

若い先生から子どもたちに自由に聞きに行かせるやり方について質問が出ました。聞きやすい友だちに教えてもらうことで、動きが活発になるからでしょう。よい質問だと思いました。このやり方だと一見活性化しますが、テンションが上がってムダ話になる危険性もあります。何より問題なのは、授業での人間関係ではなく、日頃の生活での人間関係で活動が決まることです。生活の場だけでなく授業中でも居場所のない子どもが出てくることが予想されます。固定化された人間でなく、誰にでも聞ける、誰とでもかかわれることが大切です。生活の場で仲のよい子と話をすることは自然なことですが、授業の場にそれを持ち込んではいけないのです。子どもたちの聞き合う活動が活性化しないのであれば、そのための手立てをする必要があります。子ども同士の人間関係に問題があるのであれば、ソーシャルスキルやエンカウンターの時間を取ることもその一つでしょう。教師が子ども同士をつなぐように働きかけることも大切です。授業の中で人間関係をつくることをお願いしました。

研修終了後も個別に相談に来て下さる先生が何人かいらっしゃいました。通級指導教室の担当の方は、非常に具体的な場面での対応についていくつか質問してくださいました。その対応を一緒に考えることで私もとてもよい勉強をさせていただきました。
自分の感情を上手く表現できない子どもが、何を聞いても「ふつう」としか答えないので、こちらから「うれしかった?」と聞いて、言葉を出させようとしたそうです。こちらから強要しているようで引っかかっているといった質問から、子どもたちと真剣に向き合っていることがよく伝わってきます。私にも何が正解かはわかりませんが、「今、うれしそうに見えたよ」と、相手に聞くのではなくこちらか伝えるという視点で接することを提案しました。先生も、表情豊かに自身の感情を表現することを心がけることでこの子どもに変化が出てくるのではないかと思いました。この後どのようになったか聞くのがとても楽しみです。

次回は、実際に授業を見せていただいてお話をすることになります。素直な先生方が多いように感じる学校ですので、きっとよい方向に変わっていくと思います。今からとても楽しみです。
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