中学校で新年度のスタートを見る

昨日は中学校の授業アドバイスをおこなってきました。昨年度に続き多くの方が異動されました。この学校で今まで取り組んできたことを共有することが課題です。今年度の研修の進め方も工夫しなければなりません。この日は、まずは各学年のスタートの状態を学年主任と共に観察しました。

3年生はとてもよい状態でした。どの学級もわかりたい、できるようになりたいという意欲を感じます。子どもたちの視線が教師に集中しています。どの子もあきらめずに授業に参加しているのが印象的でした。学年主任も子どもたちのよい点をたくさん伝えてくれます。子どもたちの関係が良好で、男女を問わずよく話し合ってくれるとうれしそうに話してくれました。
初めて担当する先生に対しては、その先生のやり方を理解して慣れるのに時間がかかるものですが、以前からその先生の授業を受けているような雰囲気に既になっているのが印象的でした。全く初めて担当する先生も、とても素直に反応してくれると言っていました。1年生からずっと担当している先生は、今まで受け持っていなかった子どもも、経験のある友だちに教えてもらったり、助けてもらったりしてすぐに慣れてくれたと、子ども同士の関係のよさを実感していました。子どもたちは、指示待ちの受け身の態度ではなく、次に何をすべきかを意識しています。問題を解き終ってもぼっとしていません。日ごろから何をすればいいのかを指導されているのでしょう。教科書を読んだり、問題集を解いたりしています。指示に対しての反応もとても素早いものでした。話をうかがったどの先生も授業がとてもやりやすいと言っていました。3年生の姿は、この学校の目指す子どもの姿を体現してくれていると思います。これまでの2年間の先生方のかかわりが素晴らしかったのでしょう。とてもよいスタートを切れていると思います。
3年生になるとみんなが頑張るので、努力しても思うように相対的な成績(順位)が上がらず、落ち込む子どもが出てきます。全体がよいスタート切れているので、先生方には少し余裕ができると思います。個を見ることにエネルギーを使ってくださいとお願いしました。

2年生は、集中を見せる時はとてもよい状態でした。作業や課題にも真剣に取り組みます。昨年度末に少し目立ち始めた授業に参加できない生徒があまり気になりません。その一方で、受け身になると直ぐに集中力が切れるという特徴はあまり変わっていませんでした。先生が一方的に話していると、みるみる集中力を失くします。逆に言えば、子どもたちに活動させることを意識すればよい状態で授業が進むということです。担任の先生もかなりの数が入れ替わっているので、子どもたちの気持ちもリフレッシュされているはずです。今がチャンスだと思います。子どもたちの活動量の確保を学年全体で意識すれば、よい状態になっていくはずです。このことを学年主任にお願いしました。
また、若手の先生が時間を見て教育相談(個人面談)を始めていました。学年全体で取り組んでいるのかはわかりませんが、とてもよいことです。この時期は子どもがやる気を出すと同時に環境の変化で不安定になりやすい時でもあります。子どもとの人間関係をつくるためにも個別に話を聞くとよいと思います。忙しい時期ですが、必要な動きができていると思いました。

1年生の第一印象は小学生、それも中学年のような姿だということです。授業規律がまだきちんとできていません。授業を受けている子どもたちの姿を見るとバラバラです。出身小学校での様子をそのまま引きずっているようにも思います。例えば友だちの発言をその子の方をきちんと向いて聞く子どもがどの学級にも1/4から1/3くらいはいます。しかし、他の子どもは前を向いたままなのです。このこと自体は大した問題ではありません。この時、授業者が友だちを見ている子どもを評価しないのが問題です。また、友だちの発言をつなぐこともしません。せっかくよい文化を持ってきてくれている子どもたちがいるのに、これではすぐに消えていってしまいます。
これに限らず、先生方が子どもたちへの指示が通るまで待てていません。子どもたちの行動が遅いため待ちきれないのです。このような時は、指示に対する評価をスモールステップで行うとよいでしょう。「教科書の○○ページを開いて」という指示であれば、「教科書を出す」「開く」「目的のページを見つける」それぞれの段階をほめるのです。「○○さん、もう教科書を出しているね。素早い行動だね。うれしいね」「おっ教科書を開こうとしているね。早い、早い」「△△さん、もう○○ページを開いているね」というようにすれば、動きの遅い子どもたちでもほめることができます。教師が子どもたちの素早い行動を望んでいることをほめることで伝えるようにすることが大切です。全体に、挙手や発言、課題に取り組む様子などの子どもたちの外化を評価していません。そのためよい行動があっても、広げることができていないのです。固有名詞でほめることが大切です。
1年生の先生方に対して総じて感じたのが、余裕がないということです。異動したばかり、初めて担任をもった、そういう方が多いので仕方がないと思いますが、この時期に押さえるべきことは少し時間がかかってもしっかりとしておく必要があります。学年主任にはこのことをお願いしました。

今年度新しく研修主任になった方と打ち合わせをおこないました。異動したばかりで学校のことがよくわからない中での担当で、戸惑いもあるようでした。3年生の担当で、子どもたちのよさに気づいています。単に子どもたちがよいのではなく、このように育てるにはこれまでにやってきたことがあるはずだとわかっておられます。これはとてもよいチャンスだと思いました。以前からいる方にとっては当たり前のこととして意識されていない子どもたちへのよいかかわりを明確にすることができるからです。新しく来られた方の視線でこの学校の取り組みを見直すことで、どのようなかかわりが子どもたちを育てているのかを具体的にすることができるはずです。1年間の研修を通じて、この先生の視点でこの学校のスタンダードというべきものをまとめて提案していただくことをお願いしました。経験も豊富で授業に対する感覚もとても素晴らしい方なので期待できそうです。

今年初めて担任を持った先生に少し時間を取ってもらい話をしました。余裕のない状態であることはわかっていますが、「笑顔を忘れずに授業規律、学級規律を確立することを大切にしてほしいこと」「わからないことはあって当たり前だから、臆せずに先輩に聞くこと」、そして、忙しいことはわかるが、「朝少し早く来て教室で登校してくる子どもたちを見ること、雑談をすること」「帰りの会が終わったあと教室に少し残って子どもたちがすぐに部活動に向かうかを確認すること、机の中などの個人スペースの様子を見ること」。こういったことをお願いしました。何をすればよいか、どこから始めたらよいかわからない状態だとは思いますが、優先順位を子どもたちと接することにおいて行動してほしいと思います。

予定していなかった若い先生が2人相談に来られました。「よいスタートを切れていると感じているが、これでよいのか」と確認を求める方。6年目という次は原則異動の年なので、恥ずかしくないだけの教科力を身につけたいと、授業に関して悩んでいることを質問してくれた方。私にとっても刺激となるよい話をたくさん聞くことができました。彼らの成長を感じることができるとても幸せな時間でした。
また、数学科に関してはベテランがほとんどいなくなったので、彼らの教科力をアップするために勉強会を開くことを提案しました。玉置崇先生編著の「中学校数学授業のネタ100(1年〜3年)」(明治図書)(数学の授業アドバイスを助けてくれる本参照)の読書会です。次に指導する単元を有志で勉強するのです。うれしいことにすぐに前向きな答が返ってきました。この学校に訪問する楽しみがまた一つ増えました。

今年度転任されてきた校長からたくさんのお話を聞くことができました。異動したばかりにかかわらず、子どもたちの様子をとてもよく把握されています。時間をつくっては教室を見回っていることがよくわかります。授業をとても大切にされている方です。前任校での取り組みなど、参考になるお話をたくさん聞くことができました。とても楽しい時間を過ごすことができました。よい出会いに感謝です。

この学校のよい点を再確認するとともに、新たな課題も見つかりました。この1年で子どもたちと先生方がどのように成長していくかとても楽しみです。先生方と共に私も成長できるように頑張りたいと思います。
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