学校努力点の取り組みへのアドバイス

中学校の現職教育に助言者として参加しました。学校努力点中間まとめの発表会です。各教科からの取り組みの発表に対して、私からアドバイスをさせていただきました。

この学校に訪問するようになって3年目です。今回のまとめは事前に送付いただいたので、各教科へのコメントは簡単な文書にしてお渡ししました。以前と比べて子どもを主体した授業へ取り組もうという姿勢が感じられるようになったのがうれしいことです。ただ、取り組みが、特定の単元、教材に留まっていることも多く、他の単元に広げてほしいと思います。担当者や教科を超えて学校全体として共通に取り組む具体的な形ができてくると、大きく飛躍することでしょう。点から線、線から面を意識してほしいと思います。

アドバイスは全体に共通してお願いしたい3点に絞ってお話ししました。
1つは、どのような子どもに育てたいのかを明確にすることです。
「考える子ども」と「機械的に学習する子ども」のどちらなのかです。こう書けば、皆さん「考える子ども」と答えるはずです。しかし、「機械的に学習する子ども」の「勉強=覚えること」「答を早く欲しがる」「勉強を量や時間で測る」という姿は、教師が求めている姿の投影であるようにも思います。試験に出るから「覚えなさい」と言う。子どもから考えが出てくるのを「待ちきれず」、教師が説明してしまう。宿題を課して、「課題をどれだけこなしたか」で評価する。こういう教師の言動と無縁ではないように思います。「考える子ども」を目指しているのであれば、考える意味を大切にし、考える必然性のある課題を与えることが求められます。答ではなくそこに至る過程を大切にし、解答の行間を埋めることが必要です。その問題、教材だけに通用する解法ではなく、他の場面でも活用できる、再現性のある思考を意識した質の高い授業を追究することが大切です。原点に戻って、このことを確認してほしいのです。

2つ目は、課題の考え方です。
「○○について考えなさい」「△△しましょう」と教師主導で与える「受け身の課題」と自分たちの疑問から出発する「必然性のある課題」があります。どちらかが正解というのではありません。この2つを意識して課題を設定してほしいのです。子どもに意欲的に取り組ませるためには、「子どもたちに気づかせる」、どうしてそうなるんだろうという「子どもの疑問」を大切にすることが必要です。
この学校では言語活動を大切にしているので、

「根拠を問う(過程を大切にする)」
「説得する課題(論破)」
「個人ではなかなか解けない課題(グループにする必然性)」
「友だちの代わりに説明する(相手の考えをわかろうとする)」
「かかわり合い(アドバイス、よいとこ見つけ)」

といった、言語活動の必然性のある発問・課題・活動の例を伝えました。

最後に、この学校でも取り組みが増えてきた、ペア活動とグループ活動のポイントをまとめました。
ペア活動では、

「受け手に役割をもたせる」
「相手の役に立つ実感を持たせる」
「相手の反応で対応が変わる活動」

グループ活動では、

「男女混合4人組・市松の座席(自然にかかわり合える)」
「リーダーや司会は必要ない(誰とでもかかわりあえることが大切)」
「グループで結論を1つにまとめない(あくまでも自分の考え持つ、深めるための手段)」
「教え合いではない(聞かれないのに教えない、友だちの考えを自分の考えに付加する)」
「全体が見える位置でグループの活動を見る(中に深く入りすぎない)」
「つなぐことに徹する(参加できない子どもと他の子どもをつなぐ)」
「いつ止めるかを意識する(活動が止まっているグループが出てくれば、いったん止める)」
「戻す(結論ではなく過程を共有した後で、グループにもどす)」

といったことを意識するとよいことをお伝えしました。

今回で一区切りつきましたが、先生方に変化の兆しが出てきたことをうれしく思いました。次のステップへもう一歩踏み出してくれることを期待しています。
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