子育て支援地域交流会で講演

先週末に、子育て支援地域交流会で保護者や地域の方向けに「みんなで子どもを育てよう‐子どもの自己有用感を育み居場所をつくる‐」と題した講演を行ってきました。
「家庭で保護者の方に大切にしてほしいこと」と「保護者・地域の方と学校のかかわり方」の大きく2点に分けてお話しさせていただきました。

子どもは保護者だけ育てることはできません。多くの人とかかわることで育っていきます。保護者、地域、学校それぞれに役割があります。保護者にお願いしたいのが、家庭に子どもの居場所をつくることです。そのために、「あなたが私の子どもでよかった」と無条件に子どもを愛していることを伝えてほしいのです。「勉強を頑張った」から、「親の言うことを聞いた」から愛されているのだと子どもが思えば、親の期待に応える「よい子であること」によって親の愛情を得られるのだと思います。自己実現が親の期待に応えることになってしまいます。親の期待に応えられなかったら自分は愛されない、家庭に居場所がなくなると思うのです。
自分の存在が家族にとって意味のあるものだと思えるようにすること、「自己有用感」を持たせることも大切です。小さな子どもでも家族のためにできることがあります。役割を与えることが必要です。茶碗を流しにもっていくだけでもいいのです。お小遣いという対価をあげることはよいことではありません。それよりも、「とても助かったわ。手伝ってくれてありがとう」と家族の役に立って感謝されていると伝えることが大切なのです。家庭の中に自分の居場所ができることで、子どもは安定するのです。
しかり方にも注意が必要です。「だから、あなたは・・・」とYOUメッセージで「子ども」を否定すると自己有用感はなくなってしまいます。否定するのはその「行動」でなければいけません。
また、言葉にも気をつける必要があります。この子はこういう子だとレッテルを貼ってしまうとその言葉に縛られてしまいます。「わがままな子」と言われると本当にわがままな子になってしまうのです。わがままに思える行動にも必ず理由があるはずです。その理由を子どもによりそって考えることが大切です。また、わがままな面があっても、必ずそうでない面もあります。そういった場面を見つけ、そのことをほめて、よい行動を増やすようにするのです。

子育てはチームワークです。家庭は我が子に愛情を注いで育てる場所です。学校は子どもを他者とのかかわりの中で次代の担い手に育てるところです。学力をつけるところでもありますが、社会性を育てるところでもあります。視点が少し違うのです。保護者からすれば自分の子どもが一番大切かもしれませんが、学校はどの子も同じように大切です。また、子どもは子ども同士でかかわり合いながら成長していきます。我が子の成長のためにも他の子どもも成長することがとても重要です。このことを忘れないでほしいと思います。互いが主張し合うのではなく、子どもの成長を願うという思いを共有し、聞き合い、一緒に子どもを育てようとする姿勢が大切です。
PTA活動なども、お願いされたから協力するのではなく、この活動が子どもたちの成長にどう役に立つのかを意識できれば充実感につながるはずです。子どもたちの成長にどのように役立てようとしているのかを伝え、その結果をきちんとフィードバックすることが必要です。

子どもを育てるためには、地域が子どもに場を与えることが大切になります。地域の一員として責任ある役割を持たせ、活躍できるチャンスを与え、地域の大人と子どもが同じ目標に向かって活動することで関係をつくるのです。一緒に活動し責任を持たせるから、大人が子どもを「しかる」ことができるようになります。親や教師でない大人から「ありがとう」と「感謝」の言葉をもらえることで、子どもの「自己有用感」は大きく高まります。一緒に活動するからこそ、「大人のすごさ」を目の当たりします。こんな大人になりたいと「憧れ」を持つことが子どもの成長のエネルギーとなります。
具体例として、ある中学校区の地域フェスティバル(「地域と学校が一体となって子どもを育てる」参照)と学校と家庭が協力して開いた保護者向けのネット講習会(「地域の枠を超える動き」、「PTAや地域と学校の信頼が育つ様子を見る」参照)を取り上げました。これらの例では、学校と保護者・地域との信頼関係があることがうまくいった要因として挙げられます。信頼関係をつくるためには、「学校がネガティブを含めて情報を公開すること」「保護者や地域が本音を伝えること」「学校が前向きに受け止め、たとえできないことでもきちんと理由を伝えること」が大切です。この基本がしっかりできていたのです。

主催者側からすぐにアンケートの結果もお知らせいただけました。その中で、保護者向けのネット講習会の内容をもっと知りたかったという意見がありました。ネットに関する話は今回の講習会の趣旨から外れるので、その内容についてあまり触れませんでしたが、PTAの方がつくられたわかりやすい資料を配布させていただきました。その資料を見てもっと知りたいと思われたのだと思います。この地区でも、ネットに関する講習会が開かれるようになることを期待します。

講演終了後、保護者の方から質問を受けました。保護者向けの講演を行うと必ずと言っていいほど相談を受けます。それだけ、子育てに悩まれる方が多いのでしょう。そういう方のお役に少しでも立つことができたのなら幸いです。
主催者側の細やかな気づかいのおかげでとても気持ちよく講演を行うことができました。とてもよい機会を得られたことに感謝します。
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