介護関係者向けの研修

先週末に、介護関係者向けのコミュニケーションに関する研修をおこなってきました。今回は、「利用者と接する姿勢」をテーマに行いました。具体的な場面に即して、どのような対応をすればよいのか、参加者の皆さんと一緒に考えるというのがこの研修の基本的なスタンスです。これが正解と言えるものはありません。同じような状況でも相手によって何がよいかは変わってきます。グループでの活動を中心に、いろいろな考えに触れることで、参加者の対応の幅が広がることをねらっています。

利用者と接する姿勢には、「してあげる」「させていただく」「いっしょに」の3つが考えられます。「してあげる」というのは上から目線で相手のプライドを傷つけます。「させていただく」というのは、接客業の視点です。自分のことを考えてくれているようには感じません。「いっしょに」というのは、相手に「寄り添う」姿勢です。この「寄り添う」という視点を大切にする必要があります。
具体的な介護の場面では「サポート」と「ヘルプ」という2つの視点を意識する必要があります。「サポート」は「本人のしたいことを一緒になってできるようにお手伝いする」、「ヘルプ」は「本人のしたいことを代わりにする」ことです。介護では、その人がその人らしく生きる「お手伝い」をするという姿勢が大切です。利用者ができることは本人にやってもらうことが前提であるべきでしょう。一人ではできないことを一緒に解決するという「サポート」の視点です。とはいえ、できないことは「ヘルプ」しなければいけません。相手がしてもらいたいことは何か理解する、何をするか「一緒に」考えることが大切です。自分がどうするかではなく、あくまでも利用者に「代わって」実行するという姿勢が求められます。

利用者と接するうえで大切になるのが表情です。人は、自分に負い目があると表情に敏感(過敏?!)になります。体が不自由になり、ちょっとしたことで失敗をしたりすると、とても情けなく思います。そのような気持ちの時には、相手のかたい表情が、非難したり、ばかにしたりしているように思えるものです。そのために、常に笑顔を意識することが大切になります。しかし、相手が何か失敗したり、思わぬことをした時、困ったり、戸惑った時に笑顔はでてきません。このような時に笑顔になるには、意識して笑顔をつくる「訓練」が日ごろから必要なのです。笑顔になれば、自然に口調が優しくなります。相手も優しい気持ちなります。笑顔になることでこちらの気持ちに余裕ができます。相手も安心して余裕がでてきます。利用者と接する時の基本の表情は笑顔なのです。

具体的な場面を設定して、どのように対応するかを考えてもらったり、実演したりしていただきました。現場経験が豊富な方たちですので、どの対応も納得させられるものばかりでした。私もたくさんのことを学ばせていただきました。
挨拶の時の笑顔がとても素晴らしい方がいらっしゃいました。笑顔で挨拶することを意識すると、笑顔をつくって頭を下げます。しかし、顔を上げた時には表情が戻っていることが多いのではないでしょうか。相手からはその笑顔が見えません。その方は、顔を上げた時に笑顔をつくられました。なるほど、これならばきちんと笑顔が相手に伝わります。ちょっとしたことですが、とても大切な視点だと思いました。

日ごろは子どもの教育という視点でコミュニケーションを考えているのですが、介護という別の視点から見ることで気づかされることがたくさんあります。また、あらためてコミュニケーションの基本は何かに気づかされることもあります。利用者の自立を支援するという、介護における「サポート」の姿勢は、子どもたちの教育にも通じます。介護に従事する方々と接することで、多くのことを学ぶことができます。介護関係者向けの研修をさせていただくことは、私にとってとても有意義なものです。このような機会をいただけたことに感謝です。
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