「見えない相手とのコミュニケーション」をテーマに介護関係者向けに研修

先日、介護関係者向けのコミュニケーションに関する研修をおこなってきました。

今回は「見えない相手とのコミュニケーション」について、電話応対を例として考えていただきました。
最初に、相手から見えなくてもこちらの態度は伝わることを実感してもらうために、椅子にふんぞり返って謝ってもらいました。申し訳ないと思っている雰囲気を声で伝えようとしても、横柄な態度だとなかなか難しいことがわかります。こちらの態度や様子と声は連動するのです。電話オペレーターの方が鏡を見ながら対応するという話も納得できます。相手にどのような気持ちを伝えたいか、相手の顔が見えないからこそ意識したいものです。
逆に相手の声の調子からだけでは相手の人となりがわからないこともよくあります。とても誠実そうに電話してきた相手が、詐欺師だったということも珍しくもありません。相手の口調に惑わされず、きちんと伝えるべき情報を伝え、得るべき情報を意識して応対することが求められます。
また、きちんとした言葉づかいができなければ、相手に値踏みをされてしまいます。仕事上の電話では、知らない相手ほどその対応でどのような人物か、会社かを知ろうとします。服装や建物といった他の要素がないだけに、話し方から相手に関する情報を得ようとするのです。
結局、見えない相手とのコミュニケーションで意識することは、実は普通のコミュニケーションでも大切なことです。相手にきちんと伝える、相手からきちんと情報を得る。服装や態度と同じように、相手にどのような印象を持たれるか気をつける。ただ、コミュニケーションの手段が電話であれば声だけだったり、メールであれば文章だけだったりと限定的なので、そのことがより強く求められるのです。

電話は突然の対応が求められることがよくあります。とっさのことに、うまく対応できないこともよくあります。電話応対は苦手という人もいるのではないでしょうか。私もかつてそうだったのでよくわかります。電話が鳴ると、誰か出てくれないかとまわりを見たり、それとなく席を立って手洗いに行ったりしたこともありました。しかし、逃げてばかりいても応対は一向に上手くはなりません。経験を積むことが大切です。しかし、自信がなくて電話に出られないから経験が積めないのです。堂々巡りです。私の場合は、頭の中で「今電話がかかってきたらどう応対するか」のシミュレーションをするようにしました。電話をかける時は、まず一連の応対を頭の中で想像してから、受話器を取るようにしました。こういった意識的な訓練が必要だと思います。

最後に苦情電話に対するロールプレイをしていただきました。「デイサービスで送迎の車が予定時刻を過ぎても来ない。仕事があるのに出かけられない」といった状況設定です。皆さんととても一生懸命に取り組んでいただきました。経験豊富な方は、さすがと言う対応をされます。
謝ることも大切ですが、まず相手が困っていることに寄り添うことが求められます。「それはさぞお困りでしょうね」と、相手の気持ちを受け止めることが必要です。その上で、謝罪することよりも、どうすればいいか、どうすれば相手が困っていることを解消できるかを一緒に考えることを第一にすることが求められます。「これこれ、このように対応することでいかがでしょうか」と相手に確認をしてから対応するのです。とはいえ、なかなか簡単なことではありません。自分で対応できないと思えば、すぐに対応できる方と電話を替わることが大切です。対応を間違えてこじらせてからでは、修復は難しいのです。「それはお困りでしょうね。担当のものにすぐに替わりますので、お待ちいただけますか」といった言葉が出るように日ごろから頭の中で訓練しておくとよいでしょう。
私からは、ちょっと難しいですが、「ご連絡いただき、ありがとうございます」とお礼を言う方法もあることを伝えました。「おかげで、他の利用者の方にも連絡を取って対応ができます」といったことを相手に伝えるのです。苦情を言う方も決して喜んで言っているわけではありません。嫌われるのではないかと思いながらも、仕方がないので連絡しているのです。その気持ちを和らげるには、「ありがとうございます」という言葉はとても有効なのです。

今回、グループでの活動を多くしましたが、皆さんの意見を取り上げて、気づきを共有することがあまりできませんでした。見えない相手とのコミュニケーションも、普通のコミュニケーションと基本は同じであることを伝えきれなかったように思います。電話応対の中途半端なノウハウのようになってしまいました。私自身が何を第一に伝えたいかが明確でなく、活動を中心に研修を組み立ててしまったことが原因です。授業と同じですね。

私のいたらなさにもかかわらず、参加された方々はとても熱心に学ぼうとされていました。言い訳になりますが、私からの学びは少なかったかもしれませんが、互いから多くを学んでいただけたのではないかと思います。
次回からは、「介護におけるコミュニケーション」をテーマに研修を行っていきます。私が皆さんからヒアリングしたことをもとに執筆した、介護従事者の方のためのコミュニケーションに関する小冊子をもとに進めていきます。今回の反省をもとに、皆さんに参加してよかったと思っていただける研修を目指したいと思います。
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