PTAや地域と学校の信頼が育つ様子を見る

先日、保護者向けのネット講習会の講師養成講座に参加しました。地域の保護者に子どもたちのネット利用の問題を考えてもらう講習会の講師を養成する講座です。この企画は保護者、地域コーディネーター、学校が力を合わせて地域の子どもを守り育てていこうというものです。

その前の仕事が押していたため15分ほど遅刻してしまいました。会場に入って驚いたのが、参加者の多さです。講習会は市内全部の中学校を会場にしておこなうのですが、会場ごとにその地区の方と学校が中心となって運営します。地区ごとに講師が必要となるので参加者が多いのです。それだけではありません、この市以外からも多くの学校の先生が特別参加されています。子どもたちのスマホやSNSなどのネット利用の問題が深刻であり、また有効な対策が打てていないことの表れだと思います。もちろん、この市の学校の先生もたくさん参加されていますが、管理職の方が少ないように思いました。管理職の方が忙しいのはよくわかりますが、他地区からの参加者は管理職の割合が多かったのと対照的でした。

途中から参加したため、講師の大学の先生の話が、当日の講習をなぞっているのか、講習をするための基礎知識を話しているのかよくわかりません。ちょうど良いタイミングで、主催している学校の校長が割って入って、ここまでの説明の位置づけを確認してくれました。この後も程よいタイミングで介入して、整理し、まとめてくれるので参加者はとても助かったことと思います。

本番の講習会と同じようにグループで子どものネット利用に関する問題点や見聞きしたこと、どうすればいいのかを話し合います。私のグループはほとんどが先生でしたが、その知識や問題点の認識にはかなりの差がありました。スマホや携帯電話でなくても、ネットにつながる携帯音楽プレーヤーや携帯ゲーム機を使えば電話機能やSNSを利用可能で、小学生のトラブルが急増しています。この実感があまりない方もいらっしゃいました。
講師の先生から示された、「18歳未満の子どもたちがネットで被害にあった時期は、スマホなどを持ち始めて1年未満が約3/4」という資料は、私にとっても少なからずショックなものでした。ネットに関する教育は、「ぼつぼつしていけばいい」では手遅れなのです。情報端末を与える前にしておくことが大切です。とはいえ、ほとんどの子どもは携帯ゲーム機などの端末をすでに持っています。すぐにでも対応していくことが求められます。この危機感をすべての学校で共有してほしいと思います。今回参加した他地区の学校もきっとすぐに何らかの動きをしてくれることと思います。

会を締める最後のあいさつは、地域コーディネーターの方でした。学校長ではありません。このことがこの会の性格を表わしています。学校に頼まれたから協力しているのではなく、地域が主体的にかかわっているのです。そのことは、挨拶の文言からも伝わります。講習会の内容もそうですが、そこに参加された方々の子どもたちのために何かをしようとするエネルギーに触れることができたことが何よりの収穫でした。

主催している学校の校長から、講座終了後に行われた、本番に向けての打ち合わせに誘っていただけました。今回の講座の内容を聞いて参加された方がすぐに講師ができるか疑問を感じていたことと、何よりこの企画を立案実行しているメンバーの方々に興味があったので、渡りに船でした。
打合せは、本番の流れの確認をしながら、誰がどの部分を担当するかを決めていきます。PTAや地域の方はこういった講師には慣れていません。不安もたくさんあると思いますが、それよりも自分たちで何かを創りだすことに挑戦する楽しみが勝っているように見えました。積極的に考えを述べていきます。決して受け身ではありません。そのエネルギーがあってこそ、市全体を巻き込む企画となったのだと思います。
会場から出た意見をつないでいくのは、プロでなければできないと校長は教師に割り振ります。さり気なくプレッシャーをかけながら、教師の活躍の場も用意します。ここで、「さすが先生は違う」と言われるようでなければいけません。割り振られた先生からは、期待に応えようという気持ちを感じることができました。

私からは、次のことを参加者の皆さんに気づいてもらう、お伝えするようにお願いしました。

家庭でルールをつくるといっても、親子が日ごろから話し合える関係がなければそれもかないません。また、ネットに関する知識を伝えることは大切ですが、この分野の進歩、変化は激しく、すぐに陳腐化してしまいます。常に新しい情報を手に入れ続けなければ対応できません。しかし、どのように環境が変化しても、親子で一緒に話し合い考えることができればトラブルに対応できます。被害にあった子どもの多くはまわりの大人に相談できずに、問題が深刻化していると聞きます。そういう点からも、子どもをネットのトラブルから守るためには親子が話し合える関係をつくることが一番なのです。

最終的に、スライドの順番を入れ替えたり、内容を精選したりと大きくブラッシュアップすることになりました。他の地区の講師のことを考えても、しっかりした台本が求められます。その台本をつくるという一番大変な作業は、もちろん校長の仕事です。PTAと地域の方が、翌日は県外に出張して時間がないという校長に、往復の新幹線で原稿を書くと宣言させました。「新幹線では眠ってしまうのではないですか」と明るく校長をからかう姿に、PTAや地域と学校の関係のよさを感じました。学校の活動を力強くバックアップし、また自分たちの考えもしっかり伝える。学校もそれにしっかりと応える。互いに信頼し、協力し合う関係をうらやましく思いました。

もちろん台本は、新幹線の中で書き上げられ…ることはなく、翌日朝までかかってやっと完成されたようです。その台本を私もいただくことができましたが、さすがに素晴らしいものになっていました。これならば、きっとどの会場でも中身の濃いものになると思います。私も大いに参考にさせていただきます。

打合せ終了後、先生方が真剣に自分たちの担当部分をどうするか話し合っていました。校長のプレッシャーが効いたようです。先生方の担当部分もきっと素晴らしいものになるでしょう。こういう姿をPTAや地域の方が見ることが、学校への信頼も増すことにつながります。
PTAや地域と学校が一緒になって一つの企画を実現していくことで互いの信頼が育っていく様子を間近に見ることができました。私にとってはこのことが一番勉強になりました。みなさん、ありがとうございました。
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