研究発表会は分岐点

昨日は来月末に研究発表会が開かれる中学校の現職教育に参加してきました。授業研究とそれに先立つ1時間授業の様子を観察させていただきました。

1年生は子どもと教師の人間関係のよさを感じます。教師の表情が柔らかいとそれに合わせて子どもの表情も柔らかくなります。裏を返せば、教師の表情が厳しい時は子どもの表情も硬くなります。授業者の話もよく聞いているのですが、姿勢がちょっと緩いように思いました。一般的に、子どもたちは話を漫然と聞いている時は体が少し後ろに反り、集中度が上がると身体が前に傾きます。背筋がしっかりと伸びている時は、集中よりは緊張が強い時です。そのいずれとも違い、体が傾いていたり、肘をついていたりといった姿勢が目立つのです。しかし、決して話を聞いていないのではありません。いや、むしろよく集中しているのです。この事実をどう解釈するかは難しいのですが、おそらく、集中するしないとは別に、緊張する場面が学校生活の中にはっきりあるのではないかと思います。子どもと教師の人間関係はよいので、教師が柔らかい表情で接してくれる授業では、緊張が過度に緩んでしまうのではないでしょうか。是非先生方でその答を見つけてほしいと思いました。

2年生は以前と比べて落ち着いているように感じました。子どもと教師の関係はよくなってきていると思います。教師の話を聞く雰囲気が出てきました。しかし、気になることがいくつかあります。研究授業の時間は該当する学級以外は自習なのですが、その最初の様子を見ると授業中よりも集中度が高いぐらいなのです。これもどう解釈すればいいのか悩むところです。先ほど述べたことと矛盾するようですが、まだ教師との人間関係に課題があるのかもしれません。生活面などで子どもが強制されているように感じる指導があるのかもしれません。子どもを認める場面をもっと増やしていくことが必要なのではないかと思いました。というのも、授業者が子どもをよく見ていて、ポジティブに評価し、「ありがとう」の言葉かけをたくさんしている学級では、子どもの集中力が高く雰囲気が違っていたように感じるからです。生活指導上の問題もあるので簡単に論ずることはできませんが、子どもをチェックするのではなく、見守る、育てる姿勢で接すること大切にできるとよいと思います。
もう一つ気になったのが、机に伏せっている子どもが目立ったことです。このこと自体よりも、まわりの子どもがその子どもにかかわろうとしていないことが問題なのです。グループ活動をしている時でも、伏せっている子どもに誰も声をかけないのです。グループ活動そのものを目的とするのではなく、子ども同士の関係をつくることを意識する必要があります。また、こんな場面もありました。指名された子どもが答えられなくて困っている時、ほとんどの子どもが無関心で他人事のような態度を取っていたのです。伏せっている子どもの問題と根っこが同じように思います。

3年生は子どもの表情もよく、意欲的に学習に取り組んでいるのですが、受験に関係のない教科ではちょっとテンションが上がり気味に見えました。子どもたちが教科によって態度を変えてなければよいのですが、どうなのでしょう。もう少し多くの授業を見る必要がありそうです。
ほとんどの子どもたちがよい表情で授業を受けているのにもかかわらず、授業に参加できない子どもがいることが気になりました。やってもダメだとあきらめているように見えます。まわりの子どももその子どもを支え切れなくなっているのでしょうか。難しいことだとはわかっていますが、何とか学級の子どもたちが苦しい子どもを支えられるような関係にもっていってほしいと思います。

全体的に子どもたちと教師の人間関係はよいようです。授業規律もかなり確立できているように思います。ただ、学習課題が子どもにとって必然性のあるものになっていないことが多くあります。教師の説明がまだまだ多すぎると感じる授業が目立ちます。そのため、子どもが受け身になっていると感じることが多いのです。子どもとの関係をさらによくして、子どもの言葉を活かした授業を目指してほしいと思います。そのためには、子どもが安心して発言できる教室をつくり、子どもの発言や反応をポジティブに評価し、子どもの言葉を他の子どもにつないでいくことが大切になります。
学校としてできていることが増えているから、課題もより多く見つかってきます。この課題を一つひとつ丁寧に解決していこうとすることが大きく進歩するきっかけとなります。研究発表会はゴールではなく、学校が進化していく過程のチェックポイントの一つです。これをきっかけにさらに大きく前へ進むか、それともできたことに満足してそのまま停滞するのかの分岐点です。この日の授業研究はまさにそのことを象徴するようなものでした。

授業研究については次回の日記で。
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30