子どもたちの変化を感じた訪問

昨日は中学校で授業アドバイスをおこなってきました。初任者の社会科と若手(2年目)の数学のTTでの授業、全体のようすを見てきました。

この学校にかかわらせていただいて4年目ですが、昨年度の終わりと比べて子どものようすにいくつかの変化が見られました。

3年生は、1年生のときにベテランの担任と若手がうまくかみ合い、子ども同士がかかわりあえる落ち着いた学年でした。2年生になって中心となる先生が異動になった後も若手が頑張ってとてもよい状態でした。今回感じたのは、子どもたちの緊張感が緩んでいるということです。明るくよい表情なのですが、行動が緩慢であったり、すぐに集中しない場面があったりと、3年生のこの時期としては少し気になる状態です。進路意識を高めるなどして、今は何に集中すべき時期なのか考えさせることが必要なのかもしれません。

2年生も昨年は落ち着いて学習に集中していましたが、授業によって学習態度の違いが目につくようになりました。子どもの活動が少なく、教師がしゃべる時間が長い授業ほどにその傾向が強くなっています。研究指定の2年間を含む3年間でこの学校に定着してきた、子どもの活動を大切にする授業スタイルが崩れかけているように感じます。人事異動や講師の増加で今までつくり上げてきたことの継承が難しくなっているのでしょう。

このことは1年生の状況にも現れていると思います。子どもたちはとてもよいのですが、授業規律を含め、話し合ったり、かかわり合ったりという基本が、この時期になってもまだうまくできていないのです。先生方の授業スタイルのばらつきの大きさがその一因であるようです。学年として、押さえるべきことをきちんと共有することが求められているように思います。

初任者の社会科の授業は、子どもたちとの関係もよく、明るく進んでいました。しかし、どうしてもテンションが高くなる傾向がありました。他の先生の授業を一緒に見ることで、子どもたちが考えている、集中しているときはテンションが低めであることを伝えました。また、子どもたちへの指示が徹底できないていないので、まず、指示の内容をきちんと整理することを話しました。特に、求めるものは何か、子ども自身ができたと自己評価できる基準は何かを明確にしておかないと、話し合っても共通の評価基準や根拠がないため言いっぱなしで終わってしまうことを強調しました。それに足して、指示をしただけでは伝わったかどうかはわからないので、確認の必要性も伝えました。具体的には、例を1つ全体でやってみる、子どもに指示の内容を復唱させるなどです。復唱させて言えなかったときは、教師がもう1度言うのではなく、他の子どもに言わせるようにすることも注意しました。そうしないと、聞いていなくても教師がまた言ってくれると思ったり、聞いていた子どもは聞いていた意味がなくなって逆に聞かなくなってしまったりするからです。
もう一つ強調したのが子どもの目線で言葉を選ぶことです。教師は無意識のうちに自分の言葉でしゃべります。たとえばこの授業では、「気候」という言葉を教師が使いましたが、この言葉の意味を確認したり、説明したりする場面はありませんでした。教師にとっては当たり前の社会科用語ですが、子どもにとってはきちんと理解している言葉ではないのです。子どもの発する日常の用語を大切にしながら、教科の言葉に高めていくことが大切です。そのためには、教師は自分の発する言葉が子どもにはどう理解されるのかを常に意識して、日常用語や教科の用語を使い分けることが必要なのです。

数学の授業は、笑顔で子どもをほめることができ、教室の雰囲気も明るいものでした。しかし、常にわかった人に聞く、正解だけを黒板に書いていくため、つまずいている子どもが置いていかれる危険性のあるものでした。たとえば、入れ子になったカッコを使った式の計算の説明では、「最初に計算するのはどこ」という発問に対し、子どもが正解を言ったあと、そのまま計算して答をだしました。その後に「カッコを先に計算する」というルールを確認してすぐに問題演習に入りました。カッコを先に計算するというルールを知っていても、実際にどのカッコが先なのかわからない子どもは、説明がないためわからないままです。過程がすっぽり抜け落ちているのです。教師にとってその過程が当たり前すぎたのです。中学時代にわからない経験をほとんどしていないために、子どものつまずきが見えないのです。正解で授業を進めるのではなく、子どものつまずきから進めることの大切さを話しました。
あと、TTを活かすために、授業の中に○つけの時間を入れることを提案しました。2人であれば○つけの時間を短縮できるのでとても有効です。志水廣先生の提案する○つけ法について簡単に説明しました。自分たちでより深く勉強してくれることを期待しています。

この日うれしいことが2つありました。1つはこの学校で3年講師を務めている先生の授業がずいぶんと進化していたことです。少しの時間しか見ることができませんでしたが、努力の跡がよくわかります。子どもが集中して友だちの発言を聞いていますし、まわりと相談するときの姿勢や表情もとてもよいのです。
もう1つは、教育実習生が数学の授業についての先生方との検討の場面に自主的に参加してくれたことです。教育実習生が自分から参加させてほしいと申し出ることはなかなか勇気のいることです。その積極性に感心しました。また実習生と話をしていて、以前私が司会をした研究会に参加していたことがわかり、その偶然もうれしい驚きでした。

今回、忙しい中、教務主任、研修担当者がそれぞれ1時間ずつ一緒に校内をまわってくださいました。学校の現状について意見を交換することで、現状の認識を共有化でき考えを深めることができました。彼らが中心となってこの学校をよりよい方向に持っていってくださることと思います。今後の学校の変化が楽しみです。
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