子どもの姿を想像してワクワクする指導案検討

昨日は指導案作成のアドバイスをおこないました。前回(数学の課題のアイデア検討)のアイデアをもとに、授業者が用意した指導案を具体的に検討しました。

課題は教科書の姉が駅に向かう弟を追いかける問題に、電車の発車時刻を条件に加え、追いつく時刻と駅までの距離をもとに方程式の解を吟味させるものでした。数値の設定をどうするか、何をもとに解を吟味させるか、時間をかけて考えて来たことがよくわかるものでした。

話をしたのは、大きくは2つの点です。
1つは、問題を把握して式を立てるための手立てを子どもたちに考えさせる場面の進め方です。
授業者は線分図を使って自分で説明するつもりでした。文章題でつまずく子どもは、最初の一手がわかりません。何をすればよいかを、子どもたちの口から引き出すことをお願いしました。

そのためには、

「線分図に何を書き込む」「弟はどこにいる」「姉はどこにいる」といった問いかけを活用する。
一つの線分図に無駄なく書き込もうとするのではなく、出発後何分たったかわからないと位置を図に書けないことに気づかせる。
時間の要素を意識することで、時刻ごとの線分図を書いてみる。
追いついたときは短絡的に姉と弟の「距離」が等しいとするのではなく、まず「位置」が等しいことを押さえる。
位置を指定するのに「家から」何メートルと「起点」を問う。
2人とも家を起点にして位置が考えられるので、追いつた時は「家からの距離」が等しいことを利用する。

このようなことを話し合いました。

2つ目は課題で何を問うかです。
授業者は、何分後に追いつけるかを問い、姉の出発時間を5分後、10分後、15分後、20分後と4つ用意し、グループで分担して解かせるつもりでした。
しかし、塾等で解の吟味を経験していない子どもには、吟味する必然性はありません。また、弟は駅につけば発車まで電車を待っているということにも、意識が向きにくい問いかけです。何分後に追いつくかは、方程式の未知数を何にするかわかりやすくするためのこちら側の意図であり、現実にはあまり意味のある問いかけではないのです。
教師の多くは、「知りたいもの、求める物をxとおく」と教えますが、その前にもう一つ大切なことがあるのです。「何が分かれば、問題が解決するのか」です。この発想が実はもっと大切なのです。

この課題では、本来の目的である、「忘れ物を渡せるか」が問いであるべきです。解決するためには何分後に追いつくのか知ればわかりそうだ。そして、その結果をもとに渡せたかどうかを判断する。こういうプロセスをたどることで、方程式を利用して問題を解決するには、解の吟味が必要なことに子どもたち自身で気づきやすくなります。

姉の出発時刻も、教師が用意するのではなく、子どもたちに考えさせる方法もあります。「いつまでに出発すれば忘れ物を渡せる」という発問にすれば、子どもが出発時刻を変化させながら方程式を解くはずです。
電車の発車時刻より後の出発では間に合わないことにもすぐに気づくはずです。自然に解の吟味を意識するでしょう。
また、正確にいつまでに出発すれば間に合うかどうかを意識した子どもは、時刻を細かく変化させるはずです。そうすることで、関数としての視点も生まれてくるはずです。

同じ課題でも、どう問いかけるかで子どもの動きが大きく変わってきます。授業者そのことに気づいてくれたようです。どのような問いかけにするか、もう一度考えるようです。話し合っていて、子どもがどんな活動をするだろうか、どんな考えが出るだろうか、ワクワクしてきました。10月の授業がますます楽しみになってきました。
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