子どもが育っているからこそ、課題が見つかる

昨日は中学校の社会科の授業研究に参加してきました。

授業者は小学校から転勤してきたばかりの若手の先生です。まだ中学校で教え始めて3か月もたたないこの時期に研究授業をおこなうチャレンジ精神が素晴らしいと思いました。
小学校で授業力を鍛えてきたことが子どもたちの姿からもよくわかります。先生の話を聞く姿勢、作業が遅い子どもを待つ様子、課題に取り組む素早い動きから、授業者がこのこと意識して指導していることがとてもよくわかります。授業者の表情も柔らかく、当然子どもたちの表情もにこやかです。子どもたちが安心して授業に参加していることがよくわかります。先生と子どもの関係もとてもよいのです。
実は、こういう先生と子どもたちの関係がよい状態での授業は、課題もたくさん見つかること多いのです。目の前の事実の原因から教師と子どもの人間関係を除外できるからです。

子どもたちが課題に取り組む様子は、多くのグループで一人の子が仕切って、その指示で作業をしている姿が見られました。答えを見つける過程で、一人ひとりが考えたこと、個人が持っている情報を共有する場面がありませんでした。
この原因は、

・グループ編成時に学習面でリーダーの役割をする子を必ず入れるようにしている。
・一人ひとりの答えを持つのではなく、グループで一つの答えを出すようにしている。
・正解を共有することが中心で、どのように考えたか、その理由は何かといった過程や根拠を活動の途中や活動後共有することをしていない。

などが考えられました。
子ども同士の関係がよく、互いに協力しようとしているからこそ、このことがよくわかります。

また、資料を使って考える場面では、手がつく子どもと、全く手がつかない子に分かれてしまいました。手がつかない子はやる気がなかったのではないことは、何度も鉛筆を持ち資料を読んでいることからわかります。資料の中の正解となる用語の意味が子どもたちにはわからないようでした。資料を読み取る場面を設定しなかった、用語の意味を知るための手立てを与えていなかったため、子どもたちはわからないまま資料に向かっていたのでした。答えを見つけた子どもも、根拠は教師のヒントと資料の言葉からの類推で、正解となる用語を示せてもその意味はわかっていませんでした。
手がつくつかないの差は、わからないことをいったん棚上げして考えることができるか、そこに引っかかって先に進めないかの差だったようです。

このように子どもの状況をつくる原因が見えてくれば、その改善方法も明確になってきます。授業者は経験を積むことで、急速に進歩すると思います。ベースとなるものがしっかりあれば、その上に多くの物が積み上がっていきます。素直で学ぶ意欲の旺盛な先生です。次に授業を見るときには、きっと見違えるようになっていることと思います。私もこの授業からとても多くのことを学べました。次の機会がとても楽しみです。
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