講談と社会科のコラボ授業

毎年この時期に行われる、講談と社会科のコラボ授業を参観してきました。当初は中学校1校での試みでしたが、近隣の学校も巻き込み、昨年からは1週間かけて3校での実施となりました。この授業のために大阪から毎年旭堂南海師匠においで願っています。

この授業のベーシックな形は、南海師匠が歴史に関する話をして子どもたちがその嘘を見つけて発表するというものです。日ごろ触れることのない講談という大衆芸能に触れ、そこから歴史の面白さを再発見してもらおうというのがねらいです。この授業の成否は子どもたちが話にどれだけ引き込まれるかにかかっているのですが、そこは師匠、毎回子どもたちの反応に合わせて話のテンポや語り口を変え見事に引きつけます。
今回は幕末をテーマに3つの事件や人物についての話でしたが、子どもたちが引き込まれるからこそ、日ごろの授業の課題が浮き彫りになってきました。

授業は単にグループで間違いを指摘するのではなく、その根拠を教科書や資料集に求めるという形で進みます。最初の授業では固有名詞や事実の単純な間違いを中心にしたのですが、子どもたちは資料に基づく話し合いになれているので特に混乱はありません。スムーズに進んでいきます。ところが子どもたちのグループ活動は活発になりません。各自が資料で間違いを確認してそれを互いに発表し合えばそれで終わってしまうからです。

そこで、次は関税自主権や治外法権といった用語の説明、事件が及ぼした影響を間違いに加えました。今度は、教科書の説明と南海さんの話の説明とは逆だときちんと友だちに説明しています。説明が必要になるため、話し合いは最初の授業よりも明らかに活発になりました。子どもたちは単に用語を覚えているだけでなく、きちんとその内容も理解しているようです。
ところが事件の影響の誤りはどのグループもキチンと指摘することができませんでした。「大塩平八郎の乱は1日で鎮圧され、幕府の力を恐れて以後逆らうものが出なくなった」という話の間違いに気づかないのです。教科書には「幕府を驚かせた」という程度の記述なのですが、そこからこの事件の影響を想像できていないのでしょう。
用語や事件の内容は理解できているのですが、点でとらえているため、事件の関連や互いの影響を意識できていないのです。

一連のコラボ授業の結果、子どもたちに歴史の関連性をきちんと考えさせることができていないことが明らかになりました。子どもたちが話に引き込まれ真剣に取り組むからこそ課題が明確になったのです。先生方はこの課題解決のためにこれから授業を工夫していくことと思います。それに伴いこの講談と社会科のコラボ授業もまた進化していくことでしょう。今から来年が楽しみです。
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