学校事務職員の方のエネルギーに触れる

学校事務職員対象の研修会のファシリテーター育成のための研修でアドバイスを行ってきました。
チーム学校が言われ、学校事務職の役割も広がりつつあります。それに対応すべく、事務職員の研究会で新たな研修プログラムが作成され、その発表を見せていただく機会がありました。非常にリアリティのある事例をもとに、参加者が考え、ロールプレイをするというものです。充実したプログラムがつくられていることにとても感心しました。その一方で、日ごろ研修を企画、実施している立場から、この研修ではファシリテーターの役割がとても重要だと思いました。そのことをお伝えしたところ、やはり研究会の方も同じようにファシリテーターを育てることがキーとなると感じておられました。私自身とても興味を持ちましたので、機会があればぜひ研修を見せていただきたいとお願いしたところ、今回の研修会にアドバイザーとして参加させていただくことになりました。とても幸運なことです。

研修は、全国各地の事務職員の代表の方が参加され、前半は実際の受講者の立場で研修を受け、後半はその経験をもとにファシリテーターとしてどのようなことが大切かを考えるというものです。私は主に後半のプログラムを担当させていただきました。
前半のプログラムでは、仮想の学校の地域連携に関して校長、教頭、教員、PTA、地域住民それぞれの立場でロールプレイを行い、事務職員としての役割や機能を考えるというものです。研修プログラム作成の中心となった方の一人が講師役を務めました。

この活動の舞台となる学校の状況説明をていねいに行いますが、手元に資料があるのでどうしても参加者の視線は上がりません。大人なので問題ないように思えますが、見ているところが人によって異なることが気になります。また、細かい情報がたくさんあるので、どうしても時間がかかってしまいます。受け身の時間が長くなると集中力が落ち、せっかくの意欲も減退してしまいます。スライドなどを使ってポイントを絞って説明をし、早く活動を始めることが重要です。参加者は地域との協議会のロールプレイでそれぞれの役割を演じますが、自分の役割に応じて必然的に資料を読み込むので、講師が一字一句細かい解説する必要はないと思います。
また、研修に参加する前に予習をさせておくというやり方もあります。こうすることで時間を節約できます。もし、そうであれば「校長はどんな人物で学校をどうしたいと思っているのだろう」「保護者はどんなイメージだろう」といったことを、アイスブレイクも兼ねて、課題に取り組む前にグループで話し合わせるとよいでしょう。

それぞれの役割を決めてロールプレイに取り組みます。どう演じるかを資料に基づいて考えますが、ロールプレイを進めていても資料を見ながら話しています。顔の上がらない会議になってしまいました。これでは、ただの読み合わせになってしまいます。自分がその役になりきって考えることができていません。まず、この学校の状況はどのようなものかを、グループ全体で話し合わせた上で、それぞれの役割に応じて自分はこの会議を通じて学校をどうしたいのかを考えてもらうことが必要です。方向性が見えれば資料を見なくても、その人物の気持ちになって話すことができるからです。
このことを途中で講師役の方にお伝えしたところ、すぐにやり直しをされました。とても柔軟な対応です。グループで学校の状況を話し合わせ、それぞれの立場を考えてから再度ロールプレイに取り組むと、もう資料を見ている人はいません。今度はリアリティのある会議となりました。

事務職員の方は、教職員だけでなく学校を訪れる人をよく観察していることがわかります。自分の立ち位置を決めると、見事にその役をこなします。傍から観察していると、「あるある」とうなずく場面が多々ありました。参加者もとても楽しそうにしています。
ただ、このロールプレイを通じて具体的に何を考えればいいのかがはっきりとしていなかったように思います。役割ごとに感じたことを考えたことを振り返るのですが、それが何のためのものかがよくわからないのです。
このプログラムでは、校長の経営ビジョンの実現に向けて「事務職員としてどんな役割を果たせばよいのか、果たせるのか」と学校側から考えることと、地域の思いを受けて「どう協働していけばよいのか」という地域と学校の協働を考えることの2つの視点があります。このことを考えることがゴールであることを、ロールプレイの前にはっきりと示しておくとよかったと思います。

また、詳細な地域との連携を考えるための詳細な分析シートがありました。これを個人で埋める場面では参加者の手が止まり、なかなか進みませんでした。たくさんの書き込みをしなければいけないと思うと、それだけで手が動かないものです。いくつかに絞って書き込むとか、グループ全体でワイワイとやりながら埋めていくということも考える必要があります。
参加者は実際の受講者の気持ちになることで、どんなことが大切かに気づかれたと思います。

後半は、私が中心となって進めました。参加者と前半の研修の振り返りをすることで、ファシリテーターとして必要なことは何かに気づいてもらうものです。
最初のロールプレイと2回目のロールプレイの違いについて問いかけました。出てくる考えを受容し、価値付け、焦点化して再び考えてもらう。実際にこのプロセスをその場で体験してもらうことで、こちらから教えるのではなく参加者の気づきをうながすためには、どういうことが必要かを知ってもらいました。
参加者自身で気づくためには、安心して話せるような雰囲気づくりも大切です。笑顔でうなずき、常に相手を受容する姿勢を維持することを意識することをお願いしました。
参加者からは、「ファシリテーターに関する本を読んで勉強していたが、今回の研修でそれがどのようなものが具体的にイメージすることができた」といううれしい感想もいただけました。現場に戻れば自分が中心になって研修会を取りまわす立場の方々です。意識も高く、エネルギーを感じる研修会でした。きっと各地で、素晴らしい研修会が開かれることと思います。

学校に出入りはしていてもかかわることの少ない事務職の方ですが、その熱気に触れることができ、とてもよい時間を過ごすことができました。このような機会を得ることができたことに感謝します。
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31