子どもたちが積極的に学ぶようにする授業をどうつくる

中学校の現職教育で、子どもたちが積極的に学ぶようにする授業をどうつくるかについてお話ししました。

子どもの姿が「課題の答を求めている」「過程よりも結果を欲しがる」「授業者のまとめを写す」から、「わかりたい、できるようになりたい」「『教えて』と友だちに聞ける」という、「考えようとする」「わかろうとする」ものになることがその基本です。
その上で、子どもが興味を持って主体的に学ぼうとするような課題を提示することが大切になります。先生が「今日はこの問題を解いてもらいます」と天下りで提示すのではなく、子ども自身が疑問を持つ、解決したいと思うような課題にすることが求められます。例えば、酸性やアルカリ性といった水溶液の性質や消化について考えるのであれば、「胃で溶ける薬と腸で溶ける薬はどこが違う?」といった身近なことから疑問を持たせるといったことも大切です。子どもから、「あれっ」「えっ」「どういうこと」といった言葉を引き出すことを意識してほしいと思います。
子どもが興味関心を持っても、どこから手を付けてよいかわからなければすぐに意欲を失くしてしまいます。何をすればよいのか、どうすれば解決できそうかといった見通しを持たせることが大切になります。

課題に取り組むのに、個人で考えさせるのか、ペアやグループを活用するのかも大切な要素です。まずは一人という考えもありますが、一人にこだわると、苦しくなると集中力が切れてしまいます。その後でグループにしても、意欲を失くしてしまっていることがあります。例え個人で考える場面でも、「苦しくなったら、まわりと相談してもいい」と、友だちと相談することを許すことも必要です。「教えて」と言える子どもに育てることが大切なのです。その一方で、「教えて」と言われないのにこちらから勝手に教えようとはしないようにすることもきちんと押さえておきたいところです。
グループでは考えを一つにまとめないということが原則になります。一つにまとめようとすると、どうしても強い子どもの意見が通ってしまいます。まとめるのではなく、友だちの考えを聞くことで、自分の考えを深めることをねらいとします。自分の考えを主張することよりも、他者の考えを聞いて自分に取り入れることを大切にするのです。「話し合い」ではなく、「聞き合い」という言葉を使うようにするとよいと思います。

先生は子どもたち全員が答を出せるまでできるだけ待とうとする傾向があります。自分の答が持てないとその後の全体追求に参加できないと思うからです。その結果、時間ばかりが過ぎていき、全体で考えを深める時間が取れず、正解の子どもが発表して終わることになってしまいます。答を発表させようとするから上手くいかないのです。子どもたちの思考が止まっていると感じたら、ヒントなどを出さずに早めに一度活動を止めます。答ではなく、どこで困っているのかを共有し、何をすればよさそうかを考え、足場となるものをつくるのです。新たな見通しが持てれば、子どもたちは早く解きたいと意欲的なります。そこで、もう一度取り組ませれば、再び活発に動き出すのです。

全体追求の場では、「どんなことをやった?」「一番いいと思った意見は何?」と、結論ではなくその過程を共有することが大切になります。また、同じ結論になっても、根拠が異なる、やり方が異なることもよくあります。その課程の違いを明確にして考えさせることが大切です。反対に、同じことを根拠にしても結論が異なることもあります。そういったことを焦点化し疑問が生まれてくることで、子どもたちの考えが深まっていくのです。正解が出せなくても、参加できる、活躍できるような場にすることが大切です。

最後のまとめは、子どもたちに自身ですることが大切です。先生がまとめるのなら、それを写せばよいと思う子どもが出てきます。考えようとしなくなるのです。中には「先生のまとめを板書してくれないと困る」と文句を言う子どももいたりします。そうではなく、自分でまとめることで、学びが確かなものとなっていくのです。どうしても、板書しなければ困るというのであれば、子どもに言わせた言葉をそのまま書けばよいのです。足りないことは、他の子どもに言わせて書き足していけば、それで十分なまとめになります。板書する時間がもったいなければ、あとで子どもたちの書いたものを印刷して配ってもよいでしょう。

積極的に学ぶ子どもをつくるためには、子ども自身が活躍できたと思うことが大切です。それには、例え答を出せなくても、その過程にかかわることで参加できた、活躍できたと思えるような場面をつくることが重要になります。自分で納得できた、理解できたと思うことが大切なのです。
そういう場面をつくることを意識して授業を組み立てていただきたいと思います。

子どもの積極性を引き出すには、多くの要素が必要になります。毎日の授業の中でいろいろと工夫をして見てほしいと思います。
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