外国活動の課題について考えさせられた授業

昨日の日記の続きです。

6年生の外国語活動は、”can”を使った表現の授業でした。
担任とALTで教室全体に楽しい雰囲気をつくろうとしています。オーバーアクション気味にして、子どもたちのテンションを上げようとしていました。
しかし、曜日や日、天候などを全体に問いかける場面では、口がしっかりと開かない子どもが目につきます。曜日や日は何を言えばいいのかすぐにわかるのでまだ言葉が出やすかったのですが、天候は英語に直す前に状況を判断することが必要になるので、言葉にできる子どもが少なくなってしまいます。ひょっとすると、「曇りだから、曇りは英語で……」と日本語を英語に直しているのかもしれません。この授業では子どもたちは日本語を使わない約束になっていますが、英語の意味を日本語に直して教えているので、窓の外の様子を見て”cloudy”という言葉が直接出てこないのかもしれません。

ペアで交互に”How are you?”と挨拶をしますが、子どもたちの表情は楽しそうではありません。相手の言葉を聞こうという姿勢もあまり感じません。ルーティンワークになってしまっているようです。会話は相手の言葉を聞こう、聞きたいと思うことが大切です。相手の言葉を聞かなければ成り立たないような活動にすることが大切です。
続いて、”When is your birthday?”と前後のペアでやり取りします。今度はテンションが異常に上がります。この表現の練習はまだそれほどやっていないのかもしれません。先ほどの挨拶との違いがとても面白く感じられました。

授業者は、「今日は、どんなことができるか友だちにインタビューをする」と板書します。インタビューの内容をもとにビンゴをする活動です。英語活動ではビンゴを行うことをよく目にします。確かに子どもを活動させるためには有効な方法の一つですが、ゲームとしての目標・評価はあっても、語学的な目標・評価はありません。外国語「活動」なので文句もつけられないのですが、子どもたちの精神年齢よりかなり知的に低い活動です。この授業者の問題ではなく、この学校(市)のカリキュラムの問題ですが、思考をともなわない活動主義には疑問を感じざるを得ません。教科化に伴いどのように変化していくのか、その変化に先生方がどう対応していくのか見守っていく必要を感じました。

ALTが“picture card”を提示しながら、このゲームで使う”swim”、”play the piano”といった動詞(句)を全体で”repeat”させます。笑顔いっぱいで、体全体で楽しい活動になるように表現します。子どもたちの声が出ないものは何度も繰り返すなど、きちんと子どもたちの状況に対応しています。力のある方だと思います。黒板に貼った“picture card”を指さしながら、担任が”repeat”させます。続いて、リズミカルに“picture card”を選んで子どもたちだけで言わせます。よい展開だと思います。子どもたちはしっかりと口を開けることができていました。ただ気になったのは、picture card”に動詞(句)が英語で書かれていたことです。外国語活動では読むことはやっていないので、問題はないかもしれませんが、絵の”situation”を言葉に直すのではなく、文字を読んでしまう可能性があります。文字に慣れさせたいという意図なのかもしれませんが、そのねらいがよくわかりませんでした。

ペアで向き合ってゲームを行います。先ほどの“picture card”と同じ内容のカードを裏返しておいて、動詞(句)を一つ発音します。カードをめくって同じであれば、自分のものになるというゲームです。違っていれば交代です。間違えれば次の人はそのカードをとれますからサクサク進んで行きます。なかなか考えられていると思います。子どもたちは、どの言葉を言おうかと黒板のカードを見ています。真剣にやっているのですが、どうしてもカードを当てることに意識が行ってしまい、発音が雑になってしまいます。ゲームの形をとると必ず起こってしまうことです。ペアが競う相手になっていますが、協力する関係になるとよいと思います。また、単語や句を覚えることが中心の活動ですが、文をつくる活動を大切にできるとよいでしょう。主語となる人のカードと動作を表わすカードを用意して、ペアが言った文をカードでつくるといったことも面白いと思います。その逆にカードから文を言うのもあるでしょう。英語で表現した、伝わったという実感が少しでもてるようにしたいものです。

活動が終わると何枚とったかをたずねます。ゲームですので、勝ち負けといったことは大切になりますが、あまりテンションを上げないようにすることが大切です。授業者は単純に何枚かを聞いて手を挙げさせるだけなので、子どもたちのテンションは上がりません。最後に全体で”Good job.”と拍手をして終わりました。なかなかよい対応だと思います。

「できるは英語で何と言うか」「できないは英語で何というか」と日本語で確認をします。「できる」=”can”という一対一対応になっていますが、できればそのような形はとりたくありません。たとえば、この先”Can I 〜 ?“が出てくると、今度は「許可」になると説明され、それを覚えることになります。”root sense”と”situation”から理解していくようにしたいところです。
「聞く時は?」と問いかけますが、子どもたちからはあまり声が上がりません。「”Can you 〜 ?”だったね」と授業者が説明をします。子どもたちからは「英語を身につけて使えるようになりたい」というエネルギーが感じられません。この日の活動に必要な情報を得ればよいと思っているように見えました。英語「活動」の問題点がここにあるように思います。
担任が指さした”picture card”をもとにALTが”Can you 〜 ?”と疑問文にし、子どもたちが”repeat”します。主語になるカード、できることを意味するカードも合わせて使いたいところです。”repeat”だけでこの活動は終わりましたが、先ほどと同じように子どもたちだけで発音する場面をつくりたいところでした。
ちょっと難しいかもしれませんが、”Can you swim?”と子どもを指名して、”Yes, I can.”に対して、”Oh,○○san can swim.”と全体で返すといった活動を入れるとよいと思います。

次の活動はカードを持って、互いに質問し合うゲームです。”Can you 〜 ?”と質問して、そのカードを持っていれば”Yes, I can.”と言って相手に渡し、なければ”No, I can’t.”と言って終わります。起立して隣同士で1ターン行い、終われば席に着きます。次に、一方の列の子どもが席を前に移動し、先頭の子どもは最後尾に移ってゲームをすることを繰り返します。
先攻後攻を決めるじゃんけんでテンションが上がります。ゲームは先攻後攻で有利不利があることもあり、じゃんけんをすることが多いのですが、基本的にじゃんけんはテンションが上がります。席を立つときに椅子を引く音も結構大きく、ざわつきやすくなりました。
3ターン終了後、「聞き取れなかったら、”Pardon?”とか”I’m sorry.”を使ってください」と確認します。おそらくこういった聞き合う活動は5年生からやってきているので、定着しているはずだと思いますが、子どもたちからは、これまでこの言葉は聞こえてきませんでした。決まった言葉しか出てこないので、一部が聞き取れれば想像がつきます。聞き返す必要性をあまり感じていなかったのかもしれません。
再開後、集中力が落ちて動きも遅くなり、騒がしくなってきました。子どもたちにとって、この活動はあまり魅力がなかったのでしょうか。全員が終わるの待ってから移動をするのでムダな時間も多く、英語の活動量が時間に対して少ない、効率の悪い活動になっていました。
また、動詞句には、スポーツと楽器の演奏が混ざっています。以前に説明し、注意はしたのかもしれませんが、”Can you play the soccer?”と間違えている子どももいます。しかし、”soccer”がわかればゲームには支障ありませんから、相手の子どもは訂正しません。こういったところも課題です。

最後にビンゴゲームを行います。子どもたちはビンゴのマスに”Can you 〜 ?”で質問するカードのシールを貼っていきます。こういった作業は子どもにとって楽しいものなのですが、英語の活動には直接つながりません。これにかなりの時間を使っていました。また、このビンゴカード自体が質問を考えるためのヒントになります。活動をさせるためにはよい仕組みなのですが、会話にはなりにくくなります。
相手の答が、”Yes, I can.”であれば、カードにサインをしてもらいます。”Sign please.”と相手にサインを求め、”Sure.”とサインをします。会話として成立することが意識されています。この他にも、”Really?”、”Wow.”、”That’s great.”、”I see.”といった会話になるような言葉を紹介して使うことをうながします。
しかし、ビンゴはそろえることが目的なので、どうしても”yes”か”no”かだけに意識が行ってしまいます。答がわかれば、早く次の相手を見つけようとして、会話にはならないのです。相手の英語を理解し、自分の英語が伝わることを意識できるような目標が必要になります。
会話からできるだけ相手の情報を得て、それを別の人に伝え、相手が理解したら相互の得点になるといった活動も考えるとよいと思います

この日の活動は、動詞(句)さえ聞き取る、伝えることができれば成立するものばかりです。英語を聞き取ることや相手に伝えるストレスがありません。子どもたちが深く考える場面はなく、英語で話して伝わった、聞き取れたという達成感もあまりありません。英語でゲームを楽しくやっただけでした。
担任も、ALTもとても熱心で、また子どもをよく見て授業を進めていました。外国語「活動」としては、目的を達成しているのかもしれません。しかし、これから中学校に進学し、外国語を習得していく子どもたちのことを考えると、この活動を通じて何を身につけさせるのかを意識することも必要だと思います。このカリキュラムの中でどんな工夫ができるのか考えてほしいと思いました。

この続きは次回の日記で。
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