全員参加を意識してほしい

小学校で、全学級の授業アドバイスと授業研究の助言を行ってきました。授業アドバイスにおじゃまさせていただくようになって3年目の学校です。

1年生の算数の授業は、力のある中堅の方でした。1年生ですが授業規律はしっかりとできています。子どもたちが指示に対して素早く行動できていました。もちろん中には行動が遅れる子どもがいます、授業者は固有名詞で注意を促します。できれば、早くできている子どもをほめて、遅い子どもが動きを速めたときに固有名詞でほめるようにするとよいでしょう。また、指示がよくわかっていなかった隣の子どもに声をかける子どももいました。相手の子どもはその声に従ったのですが、特に言葉は返しませんでした。こういう子ども同士の声かけを大切にしたいのであれば、それぞれに「○○して(声をかけて)くれてありがとう」「○○して(声をかけて)もらってよかったね」と教師がポジティブにその場面を評価したいところでした。
子どもたちに素早い行動を促そうとしているのがよくわかります。とてもよいことなのですが、子どもの側からするとちょっと余裕がありません。授業者の指示や問いかけの意味を理解するのに時間のかかる子どももいます。ポイントポイントで、そういう子どもを待つ余裕が欲しいと思います。問いかけに対して全体の反応で進んでいく場面が少し多いように感じました。結果として、授業者のしゃべりが多くなってしまいます。そのため、子どもの集中がどうしても緩んできます。子ども同士で確認させる場面などを入れて、集中力が切れないようにするとよいと思います。

もう一人の1年生の国語の授業は、若手の方です。
句点を書く位置を確認する場面で、かなり時間をかけていました。以前に教えたことであれば、ノートで確認させた後に隣同士で確認し合うといったことでよかったと思います。もし、初めてであれば知識なので、まず教えて練習をさせることに時間をかけるべきでしょう。
子どもをほめることはできるのですが、子どもが全員指示に従えていないのに次に移ってしまう場面があります。また、指示がはっきりしないために子どもたちが戸惑う場面もありました。一度に多くの指示をせずに、一つずつきちんと確認しながら行うことが大切です。
指示と言えば、早く終わった子どもに対する指示もありません。できた子どもが姿勢を正して頑張って待っているのですが、その内集中力を失くしてしまいます。
子どもの「はい」という返事が数人だけでも次に進んでしまうことがあります。全員参加を意識して、全員に反応をしてもらいたいということを伝えてほしいと思います。

2年生の算数の授業は、ベテランの方でした。筆算の導入場面です。
授業者は子どもの反応をしっかりと待てていました。教室の雰囲気も柔らかいものでした。子どもたちが集中している場面をたくさん見ることができました。
筆算を導入するのに、まず足す数の10の束を集めて足される数の束の下に置くことを指示します。先に活動をさせてもよいのですが、その理由を少し考えさせたいところです。計算をできるようにさせるには、手順をしっかりと教える必要があります。しかし、そのことを優先しすぎると、やり方を覚えればいいと思う子どもと納得できないので先に進めなくなる子どもに分かれてしまいます。子どもが理解する、納得する場面はどのようにすればよいかを考える必要があります。
34+12で、34を板書して、12をどこに書くのかを問いかけます。まだ筆算の書き方をきちんと教えていないので、ここで答えられるのは基本的に知っている子どもだけです。書き方の必然性に気づけるような材料を与えていれば可能かもしれませんが、そのような場面はありませんでした。何人かの子どもが挙手をし、一人の子どもを指名しました。その子どもは34と+の下に線を引いて、その下に12を書きました。想像したのかうろ覚えだったのかはわかりません。授業者は、間違いだと否定せずに「線は引かなくていいよ」と返しました。これは子ども自身で修正させるためにはよい言葉だったのですが、その子どもの板書を全部消して、他の子どもを指名しました。次の子どもの板書に他の子どもたちがいいですと答えます。その間先ほどの子どもが、ずっと落とし物を探しているようなそぶりでごそごそしていたのが気になりました。間違えた子どもに修正させ、正解にしてから終わりたい場面でした。
別の場面でも間違えた子どもがいました。それに対して子どもたちから「違います」という声が上がります。答を知っている子ども、自信のある子どもが正解か不正解を判断しています。「自分の考えと」は違うだけだということを意識させることが大切です。知識は知っているか知らないかですから、知識そのものを問うことは意味がありません。たとえ自分が正解であっても、根拠を持ってそのことを説明できなければ正解とは認められないということを子どもに伝えてほしいと思います。わからない、困っている子どもが認められ活躍できるような学級を目指してほしいと思います。

もう一つの2年生の学級は若手の図画工作の授業でした。綿などの素材を使って子どもたちが描いた絵の評価場面です。
友だちに見てほしいところを書くように指示します。すぐに書ける子どもと書けない子どもがいます。作品をつくる時に意識していたことが明確でないと、なかなか書けないと思います。おそらく、作品に取りかかる時にはそういったことも考えさせたのでしょうが、思い出す場面が必要だったように思います。具体的にどのようなことを書けばいいのか、子どもたちに示すことが必要です。途中で作業を止めて何人かに発表してもらい、どんなことを書けばいいのかを共有して、もう一度作業に戻すといったことです。この時、できた後の次の指示をしておくことも大切です。こういった指示がなかったので、書けた子どもたちが、最初は落ち着いて待っていたのが、しだいに気持ちが弛んで集中力がなくなっていきました。活動を終わるように指示した時に、集中力が落ちたままなかなか顔が上がりませんでした。

3年生の授業は、社会の地図作りで、自分たちが町を探検して見つけたものを地図に書き込む場面でした。
黒板に貼った地図に、子どもたちが見つけたものを授業者が書きこみます。子どもたちに「道路をはさんでここに何があった?」と問いかけるのですが、多くの子どもたちは、新しく書き込まれたものを自分の地図に写すのに精一杯です。子どもたちはどうしてもワークシートを正解で埋めたがります。そのことは決して悪いことではないのですが、結論だけが手元にあっても仕方がありません。足りないところを自分でもう一度埋める機会を与えることが大切です。あえて、地図には書き込まずに、黒板の横に「役所」「コンビニ」と探検で見つけたものを書きだすことに留めておき、後で作業の時間を与えるのです。その時必要な地図記号などの知識は、事前に復習して黒板にまとめておくといったことも必要でしょう。作業中に子どもたちがどこを見ているのかで、知識の定着もある程度知ることができます。
また、ペアやグループで互いに見つけたものを発表し合い、足りないものを書きこむようにさせると言った活動もよいと思います。ただし、このような時には地図をそのまま見せ合うと、ただ写すことになる子も出てきます。友だちの地図を見ずに自分の地図に書き込ませることが大切です。その後で、互いの地図で確認させるのです。
写すことに集中している子どもがいる反面、よく反応する子どももいます。授業者はそのこどもたちの発言を受けて、自分で説明をしてしまいます。ちょっとしゃべりすぎでした。結局一部の子どもと先生だけで授業が進んでしまいます。全員参加を意識して、子どもの発言を他の子どもにつなげるようにしてほしいと思います。

もう一人の3年生の授業は、講師の国語の授業でした。
他の学校でも講師経験があるのですが、まだ子どもたちをしっかりと見ることができていません。授業に参加していない子どもが目立ちますが、その子どもたちに対する働きかけがないのです。話を聞けていないのなら、一度授業を止め集中を促すことが必要です。子どもたちの状況が見えていないので難しいのですが、まず意識することから始めてほしいと思います。
基本的に一問一答で進み、答を共有するだけです。根拠を問いかけ、その根拠を元にわからない子ども、できない子どもがわかるようになる場面をつくることが大切です。全員参加をつねに目指してほしいと思います。

この続きは、明日の日記で。
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