介護現場の課題から学校現場での取り組みを考える

介護職員向け冊子の制作のための研修を行ってきました。5月は「食事介助」がテーマです。

食事の介助は日常的な介護の仕事です。皆さん、さすがに基礎的な事柄はよく理解され、実行されています。高齢者は特に誤嚥の危険性が高く、それがもとで命をなくすこともあります。また、中には食事中に眠ってしまう方もいらっしゃいます。しっかりと覚醒させてから食事にすることが大切になります。施設などでは、時間を置いてから食事にするといった対応をします。ところが、訪問介護の場合は、あらかじめ介護の時間が決まっています。目が覚めるのを待っている内に時間が来てしまえば、食事をとらせることなく帰らなくてはいけません。利用者とその家族にとっても、介護者にとっても困ったことになってしまいます。こういった時にどうすればいいのかといったことが話題になりました。これが正解というものはありません。ケアマネジャーを通じてご家族と連絡を取って対応することが基本となると思いますが、その場の状況に応じた対応が求められます。過去に食事中に眠ってしまうことがあった場合など、このような事態が予測できる場合は、事前にケアマネジャーを通じて家族と対応を決めておくとよいでしょう。
学校でも、似たことが考えられます。校外学習などで、配慮が必要な子どもを引率する場合は、あらかじめ保護者と想定される事柄をしっかりと共有して、対応を決めておくことが大切です。何かある前の事前のコミュニケーションが重要なのです。

さて、施設では多くの方が同時に食事をとります。職員の数は利用者より少ないため、全員に付き添うことはできません。介助の必要な方に付き添うほかは、誤嚥を起こしやすい方を中心に見守ることになります。ここで注意が必要なのは、すべての職員が気になる方ばかり見ていると、目の届かない人ができてしまうことです。今まで誤嚥を起こしたことがない方でも、いつ起こすかわかりません。また、何かあった時にみんながその方に注目してしまうと、他の方にトラブルが起こっても気づけません。互いに阿吽の呼吸で目こぼしがないように全体を見ることが大切になります。まさにチームワークです。
これは、学校現場でも大切な視点です。学級の中に気なる子どもがいると、どうしてもその子どもにばっかり目がいってしまいます。その子どもにかかわりすぎると、他の多くの子どもたちに起こっていることを見過ごしてしまいます。全体をバランスよく見ることが大切です。一人では難しいので、担任している学級にこだわらず、学年全体で互いにどの子どもにも目を向けるよう意識することが必要です。「いいとこみつけ」という取り組みがあります。学校の先生すべてが、子どもたちのよいところを見つけては、データベースに書き込み、通知表などと一緒に保護者や子どもたちに伝えるのです。学校全体で子どもたち一人ひとりを見守るというチームワークを意識した取り組みです。こういった発想が大切になります。

いつもながら、介護現場での取り組みを考えると、学校現場ととてもよく似たことが課題として浮かび上がってきます。違った視点からの気づきを得る、とてもよい機会となっています。
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